マラリア malaria

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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病原体であるマラリア原虫を持つハマダラカに媒介されて人に感染する寄生虫症.

4種類のマラリア原虫がハマダラカによって媒介される.
1)熱帯熱(Plasmodium falciparum) 潜伏期間7日~1ヵ月
2)三日熱(Plasmodium vivax) 潜伏期間8日~1ヵ月
3)四日熱(Plasmodium malariae) 潜伏期間28日~37日
4)卵形(Plasmodium ovale) 潜伏期間11日~16日
5)サルマラリア原虫の一種であるPlasmodium knowlesi

なかでも,熱帯熱マラリアは悪性マラリアと呼ばれ,脳症,急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS),急性腎不全等の合併症を伴い死亡することもあるため,早期診断・治療が重要.

疫学

マラリアの流行地は,サハラ以南アフリカ,アジア,特に東南アジアや南アジア,パプアニューギニアやソロモン等の南太平洋諸島,中南米.

日本の輸入マラリア報告数は,日本人出国者数の増減と相関して動くことが観察される.

熱帯熱マラリア,三日熱マラリアの報告が多く,四日熱マラリアの報告は少ない.

病態

マラリア原虫は,蚊の媒介によりまずスポロゾイトが血中に侵入する.

その後,スポロゾイトが肝臓に入り,肝細胞内ではシゾントに成熟し,増殖する(肝臓期).
*肝臓期は一般に無症状.
*四日熱マラリアの潜伏期間は28~37日と他のマラリアと比較して長いのは,肝臓期が長いため.

増殖したシゾントは破裂してメロゾイトを放出し,これが血中に出て,赤血球に感染・増殖することによって,発熱などの臨床症状を来たす(赤血球期).

薬剤耐性マラリア

一度は対策が成功しつつあったマラリアの流行が,また着実に世界に再興(re-emerge)してきた最も大きな要因は,薬剤耐性マラリアの出現と拡散である.

サルマラリア

近年,サル類を自然宿主とするマラリア原虫の一種Plasmodium knowlesi による東南アジアでのヒト感染例が増加している.

顕微鏡による形態学的診断では,四日熱マラリア原虫と鑑別がつかず,良性のマラリアだと考えて安心していると,予後が悪いことがあるので注意を要する.

臨床症候

マラリア非流行地の住民がマラリアに罹患した場合,発熱(>92%),悪寒(79%),頭痛(70%), 発汗(64%) が主要症状.

この他,めまい,倦怠感,腹痛,吐気・嘔吐,軽度の下痢なども見られる.

マラリアに特徴的な症状はなく,渡航歴からマラリアを疑わなければ,診断・治療が遅れる.
→年齢性別を問わず,発熱患者に渡航歴を聴取することが重要!

身体所見では肝腫大,脾腫,黄疸がみられる.

血液検査では,血小板減少が最も多く見られ(60%),高ビリルビン血症(40%),貧血(30%),トランスアミナーゼ高値(25%)と続く.

診断

流行地への渡航歴,潜伏期,症状,血液検査の結果と合わせて,Giemsa染色した血液薄層塗抹標本の顕微鏡検査により,赤血球に寄生したマラリア原虫を見出し,その種を形態学的に鑑別する.
→マラリア原虫の寄生赤血球率を計算し,重症度の指標や治療効果の判定に用いる.

マラリア迅速診断キット(BinaxNOW® Malariaなど)や血液塗抹検査は,熱帯熱マラリアの診断においては比較的感度が高いが,四日熱マラリアにおいては感度は50%程度と低く,偽陰性となることが多い.

治療

日本で承認されている抗マラリア薬は,赤血球内原虫に作用する塩酸キニーネ,メフロキン,アトバコン・プログアニル合剤,アルテメテル・ルメファントリン合剤と,休眠期原虫(ヒプノゾイト)に作用するプリマキン.
→日本の薬機法下で処方できる抗マラリア薬は,メファキン「ヒサミツ」錠Ⓡとマラロン配合錠Ⓡにほぼ限られる.

感染している原虫種を問わず,まずは赤血球内原虫に作用する薬剤を投与し,その後,休眠期原虫が存在する三日熱マラリア,卵形マラリアではプリマキンを投与する.

日本の輸入マラリア数は減少傾向にあり,これは2013年2月より日本で使用が認可された抗マラリア薬「マラロン配合錠Ⓡ」による予防が広く使われるようになってきたためと考えられる.

三日熱マラリアのアジア太平洋地域からの輸入例が日本でも散見されるが,肝内型の休眠原虫(ヒプノゾイト)を殺滅するプリマキン(プリマキン錠15mg「サノフィⓇ」)の国内製造販売承認が得られ,市販されるようになった(2016年6月).
→日本国内での三日熱マラリア,卵形マラリアの根治治療が可能となった.

予防

マラリア流行地に渡航する際は,抗マラリア薬の予防内服が推奨される.

マラリアの種類により予防効果は異なる.
不十分な予防内服では予防に失敗することも報告されている.

予防に用いられることが多いドキシサイクリン,メフロキンといった抗マラリア薬は,肝臓期では効果がないため,肝臓期の長いマラリア(四日熱マラリア)や肝内休眠状態のマラリアでは予防内服が無効となることが多い.

マラリアの予防内服は,重症化する熱帯化マラリアの最長潜伏期間を考慮して推奨されており,メフロキンやドキシサイクリンは赤血球期のマラリアに対する効果を期待して処方される.

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