末梢神経の髄鞘を構成する糖タンパクの1つであるmyelin-associated glycoprotein(MAG)に対するモノクローナルなIgM抗体の出現に伴うニューロパチー.
自己免疫性の末梢神経障害であり,発症10年後には25~30%,15年後には50%で筋力低下や感覚障害などによる中等度以上の障害をきたすといわれる.
良性M蛋白血症を背景疾患としていることが多い.
・モノクローナルIgMに関連したニューロパチーにおいて,MAGNは約70%を占めるといわれている.
疫学
50歳以上の男性に多い.
推計有病率は10万人あたり7~10人とされている.
病態
神経組織障害機序としては,抗原抗体反応に続く補体依存性細胞障害と抗体結合によるMAGの機能障害と推定されている.
臨床経過
緩徐進行性・四肢遠位優位型の感覚運動障害を呈し,四肢遠位部のしびれや脱力・筋力低下を主訴とするところが多い.
検査
MAG抗体価とIgM値の変動は相関するが,臨床症状とは相関しないとの報告もある.
生理検査
神経伝導検査
脱髄性or軸索性を伴う混合性障害を認める.
病理
皮膚生検による皮内神経へのIgM沈着があり,ミエリン周期線周の開大(widely spaced myelin;WSM)が特徴的.
治療
リツキマシブがグレードB,IVIg or PEはグレードC1として推奨されているが,現時点では長期的に有効性の確立した治療法は存在していない.
リツキマシブ
治療反応性は,近位筋の筋力低下,亜急性の経過である例には良好である一方で,神経伝導検査で軸索障害の所見がみられるものは不良.
治療反応性が不良である予測因子として,血中のBAFF(B cell activating factor of TNF family)濃度の高値が報告されている.
・BAFFはTNFファミリーに属するⅡ型膜貫通蛋白であり,B細胞から形質細胞までの増殖,分化,生存に関与する.
・リツキマシブはCD20陽性の形質細胞に分化する前のB細胞は抑制するが,骨髄中の形質細胞には作用しない.
経静脈的免疫グロブリン療法 IVIg
血漿交換療法 PE
免疫グロブリンとともにBAFFを含む広範囲な血漿分画の除去が可能となる.
サイトカインなどを含む分画も除去することが進行抑制において重要.