大血管合併症(糖尿病)

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なすび医学ノート

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糖尿病の全身血管合併症の中で冠動脈疾患・脳血管疾患・末梢血管疾患のような太めな血管の合併症.

動脈硬化性合併症である大血管障害は,生命予後にも影響大きい重要な合併症.

発症・進展抑制には,血糖の厳格な管理のみでなく,血圧・脂質などの他の危険因子を含めた集学的な治療が必要であることが明らかになっている.
・短期間の単独の試験で有意差を得るのは困難.
・5年程度の血糖低下療法は心血管イベントリスクの低下に寄与することが示唆されている.

心血管アウトカム試験

3-point major cardiac event;3P-MACE

心血管死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中の複合エンドポイント

米国食品医薬品局(Food and Drug Administraion;FDA)の指針

過去のいくつかの糖尿病治療薬(ロシグリタゾン・ピオグリタゾンなど)が心血管イベントを増やす可能性が指摘されたのを受け,FDAは,新規に米国で発売する糖尿病治療薬に対し,対照群を設けた心血管アウトカム試験で,心血管疾患を増加させないことを証明するための安全性試験を行うことを義務付けた.

2段階の心血管疾患に関する安全性評価を義務づけることを勧告し,以下のことをを要求している.
①第3相までの販売前試験で対象治療に対する実薬治療の心血管イベントのハザード比の95 %信頼区間の上限が1.8を下回る
②承認後の臨床試験において,対象治療に対する実薬治療の心血管イベントのハザード比の95 %信頼区間の上限が1.3を下回る(①の段階で1.3 を下回っていれば必ずしも承認後の臨床試験は必要とされない)

安全性評価試験かつ,企業としてはなるべく早期に試験を終了して販売促進につなげたいため,
①対象は心血管疾患の既往者 or ハイリスク者
②対象治療はプラセボ or SU薬
③主要評価項目は心血管死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中の複合エンドポイントとなり,心不全による入院も多く2 次エンドポイントとして検討されている.
④多くの試験で,まず非劣勢(心血管イベントのハザード比の95 %信頼区間の上限が1.3 を下回る)を検証し,非劣勢が証明されれば優越性を検証する統計手法がとられている.

心血管疾患に対する優越性については,対象者の殆どが2次予防であり,観察期間も比較的短いことから,心血管疾患の予防に対して有効性が期待されるのは今のところ心血管疾患の既往者ないしはハイリスク者になる.

FAD指針前の臨床試験

UKPDS,ACCORD,ADVANCE,VADTは,単独の試験で血糖低下療法による心血管イベント抑制のエビデンスは得られていない.
→短期での急激な血糖降下が重症低血糖を招き,死亡率の増加につながった可能性があり,血糖管理不良やすでに重篤な合併症を有する症例では,血糖降下速度やその管理目標値を緩やかにし,重篤な低血糖の防止に努める必要がある.

4試験のデータを合わせたメタ解析では,血糖降下療法により,3P-MACEや非致死性,致死性心筋梗塞リスクの低下が認められている.
→マイルドな血糖降下療法であっても,5年程度継続することにより,心血管イベントリスクを有意に低下させる可能性がある.

UKPDS

HbA1cを平均0.9%低下させる治療を約10年行った結果,心筋梗塞の発症リスクは16%低下した(p=0.052,統計学的有意差にはならず)

問題点
・心筋梗塞の有意なリスク低下を証明する試験デザインではなかった.
・HbA1cの対照群との差が限定的.
・イベントの発現数により,試験を中止するという「イベントドリブン」のデザインではなかった.
・心血管イベントリスクの低い「新たに診断された比較的早期の糖尿病患者」が組み入れられていた.
・組み入れた患者の平均年齢が53歳と比較的若かった.
→統計学におけるパワー不足

ACCORD

インスリン中心の多剤併用療法により,より積極的に治療を強化し,HbA1cを大幅に低下させた.

3 point-MACEは低下傾向を示したにもかかわらず,強化療法群で総死亡が有意に増加したことによる途中での試験中止となった.
→3 point-MACEの有意な低下は認めないまま終了

血糖を下げ過ぎたこと,血糖低下を急ぎすぎたことなどの要因は,すべて強化療法群で総死亡が増加した原因としては否定されており,原因は現在でも解明されていない.
→重篤な低血糖が増加していたこと,体重が著明に増加したことが,総死亡の増加にある程度寄与した可能性は否定できないことから,重篤な低血糖・体重増加は避けることが望ましいのではないかというコンセンサスになっている.

ACCORD | 糖尿病トライアルデータベース

VADT

インスリン中心の多剤併用療法により,より積極的に治療を強化し,HbA1cを大幅に低下させた.

心血管複合エンドポイントの有意な抑制効果は試験終了時には認められなかった.

ピオグリタゾン

インスリン抵抗性の改善
・ピオグリタゾン→冠動脈プラークの改善(PERISCOPE試験:HDLコレステロールが増加,インスリン抵抗性の改善)

DPP-4阻害薬の心血管アウトカム試験

FDA指針に沿った試験であり,DPP-4阻害薬を用いた5試験全てで,心血管疾患発症率はほぼ同じで,非劣性が証明された.
→心血管疾患抑制効果がないわけではない(血糖値を下げることによるアウトカム抑制効果は結果に反映されていない).

血管内皮機能の改善
・シタグリプチン,アログリプチン→GLP-1が腸管でのTG吸収を抑制することで,食後高脂血症によって生じる炎症や酸化ストレスが軽減される?

EXAMINE試験(アログリプチン)

・心血管イベント発症リスクの高い2型糖尿病において,アログリプチン投与群とプラセボ投与群において心血管イベントによる死亡率および心不全による入院率に差がないことが示された.

SAVOR-TIMI 53試験(サキサグリプチン)

・高リスク2型糖尿病患者において,標準治療へのsaxagliptinの追加によるCVD抑制も増加も認められなかった.
・saxagliptin群で心不全による入院が増加した.

GLP-1受容体作動薬の心血管アウトカム試験

SGLT2阻害薬の心血管アウトカム試験

EMPA-REG OUTCOME試験(エンバグリフロジン)

1次複合エンドポイントの3P-MACEがプラセボ群と比較して有意に抑制,FAD指針に沿った心血管アウトカム試験で初めて優越性が確認された.
両群間の血糖,血圧,脂質などの差異は限定的で,心血管アウトカムを早期から大幅に改善させた.

P:心血管イベントリスクの極めて高い(99%が心血管疾患を有する)2型糖尿病患者7,028人.追跡期間中央値は3.1年.
→2次予防患者
アジア人も21%含まれていた(約1500人のサブ解析もあり).
E:標準治療にエンバグリフロジンを追加(10mg or 25mg)
C:標準治療+プラセボ

主要評価項目(3P-MACE)
10.5% VS 12.1%→14%抑制(有意差あり)
・アジア人の解析では,32%抑制

副次評価項目(心血管疾患による死亡率)
3.7% VS 5.9%→38%抑制(有意差あり)
・アジア人の解析では,56%抑制
・心不全死も含まれており,大血管合併症を抑制できたかははっきりしていない.利尿効果が大きいかも?

副次評価項目(全死亡率)
5.7% VS 8.3%→32%抑制(有意差あり)
・アジア人の解析では,36%抑制

副次評価項目(心不全による入院率)
2.7% VS 4.1%→35%抑制(有意差あり)

【サブ解析】
・ 腎置換療法(透析など)の開始を55%減少
・ 血中クレアチニンの倍化を44%減少
・ マクロアルブミン尿への進行を38%減少

CANVAS Program(カナグリフロジン)

心血管疾患の既往がある「2次予防患者」が約65%,少なくとも2つ以上の心血管イベントリスク因子を有する「1次予防患者」が約35%含まれていた.

主要評価項目(3P-MACE)
14%抑制(有意差あり)
・心血管死13%低下,非致死性心筋梗塞15%低下,非致死性脳卒中10%低下を示し,総合的に3つのエンドポイントをバランスよく抑制する傾向が認められた.

DECLARE-TIMI58(ダパグリフロジン)

1次予防患者が約60%組み入れられている.

観察期間中に1次予防患者で,同様な心保護効果作用は証明できなかったが,心不全抑制効果や腎保護作用は同様に認められた.

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