ループス腎炎 lupus nephritis

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なすび医学ノート

全身性エリテマトーデスの自己免疫反応の結果生じる免疫複合体が腎臓に沈着,あるいは局所で産生されることにより惹起される腎炎.

腎糸球体では免疫グロブリンとC1qを含む補体系成分の沈着を認める.

腎組織病型は以下の6型に分類され,それぞれの組織病型間で移行も認められる.
 Ⅰ型:正常糸球体
 Ⅱ型:メサンギウム型
 Ⅲ型:巣状分節状型
 Ⅳ型:びまん性増殖性型
 Ⅴ型:膜性型
 Ⅵ型:硬化糸球体型

糸球体病変とともに尿細管基底膜,小動脈や毛細血管壁内にも免疫沈着物を認めることがある.

疫学

予後

2000年以降予後は改善してきている.
発症して2年以内は感染症が主体だが,それ以降は心血管イベントなどのステロイド関連死亡が多い.

病態

妊娠

SLEの病態が妊娠に与える影響のなかで,特に抗リン脂質抗体の存在が重要である.

抗リン脂質抗体を有するSLE患者では妊娠高血圧症候群,流産(20 ~ 40%),死産(~10%),胎児発育不全(~37%),新生児死亡(~6%)を合併することがある.

抗リン脂質抗体による各種異常妊娠の発症機序として,抗リン脂質抗体による血栓形成と,抗リン脂質抗体による絨毛組織に対する直接障害が考えられている.

SLE患者の妊娠における危険因子としてpoor obstetric historyの既往,腎障害,心障害,肺高血圧,間質性肺障害,高疾患活動性,高用量ステロイド投与,抗リン脂質抗体症候群,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体陽性,多胎妊娠の項目があげられている.

抗SS-A抗体陽性の妊婦から心ブロックを有する児が出生するリスクは約1~2%である.
・52 SS-A抗原ならびに48 SS-B抗原を認識するそれぞれの抗体が存在する場合に心ブロックの発症率が高いことが明らかとなっている。

腎病理

Ⅰ型:微小メサンギウム変化ループス腎炎
・光学顕微鏡では正常
・蛍光抗体法・電子顕微鏡でメサンギウムに免疫複合体沈着

Ⅱ型:メサンギウム増殖性ループス腎炎
・光学顕微鏡でメサンギウム細胞または基質の拡大,メサンギウムに免疫複合体沈着.
・蛍光抗体法・電子顕微鏡で内皮下・上皮化沈着を認めることがある

Ⅲ型:巣状ループス腎炎
・全糸球体の50%未満に管内・管外病変が存在
A:活動性病変 A/C:活動性および慢性化病変 C:慢性化病変

Ⅳ型:びまん性ループス腎炎(Ⅳ-S:分節性,Ⅳ-G:全節性)
・全糸球体の50%以上に管内・管外病変が存在
A:活動性病変 A/C:活動性および慢性化病変 C:慢性化病変

Ⅴ型:膜性ループス腎炎
・全節性または分節性の連続した上皮化免疫沈着物
*膜型の病変を合併する場合は+Ⅴを付記する.

Ⅵ型:進行性硬化性ループス腎炎
・90%以上の糸球体が硬化

活動性病変

①白血球を伴うあるいは伴わない,毛細血管腔の狭小化を伴う管内細胞増殖
②核崩壊
③フィブリノイド壊死
④糸球体基底膜の断裂
⑤半月体,細胞性もしくは線維細胞性
⑥光顕で同定されうる内皮下沈着物(ワイヤーループ)
⑦管腔内免疫沈着物(ヒアリン血栓)

慢性病変

①糸球体硬化(分節状,全節状)
②線維性癒着
③線維性半月体

メサンギウム細胞増殖
メサンギウム基質に完全に囲まれた4個以上の核

管内増殖
endocapillary hypercellularity(管内細胞増多)

半月体
Bowman嚢周囲>10%

細胞性半月体
75%以上を細胞やフィブリンが占める

線維性半月体
75%以上を線維性組織が占める

線維細胞性半月体
細胞性半月体と線維性半月体の定義の間

フィブリノイド壊死
糸球体基底膜の破綻・メサンギウム融解と関連したフィブリンの析出

癒着
細胞外マトリックスにより形成される,係蹄とボウマン嚢間の連続した孤立領域

治療

1)ループス腎炎の寛解導入療法の治療効果をみる臨床試験は,24週後あるいは12ヶ月後の腎炎に対する治療奏功率(response rate)の優劣で評価されることが多い.
2)治療奏功率は臨床試験毎に事前に設定される.
3)尿蛋白量,尿沈渣,血清Cr値により治療奏功が定義されることが多い.例えば,「治療開始24週後の評価で,①尿蛋白 0.5 g/日未満,②尿沈渣 正常,③血清Cr値 正常またはベースラインの120%未満をすべて満たす場合に治療奏功とする」のように定義される.

ループス腎炎の予後を規定する因子として寛解率と再燃率が重要.
→3ヶ月後に蛋白尿が半減するかどうかは,3年後の寛解率に相関する.

疾患制御できる最小限のステロイド量にする.
→PSL<7.5mg/dayとする.可能であれば中止する.

治療目標

早期に寛解したほうが,再発率が少なく,長期的ダメージが少ない.
 UPCR<0.5g/gCr,normal eGFR
 血尿の有無は10年のGood outcomeに影響しない.
 UPCR<0.15(Deep remission) こっちのほうが再発率は低い.
 UPCR 0.15-0.5(non-Deep remission)

Ⅲ・Ⅳ型の活動性の高い病変

1)初期治療として寛解に導くに足る十分な治療法を選択しなければならない.
2)欧米での現在の標準的治療としては,シクロホスファミドを併用したステロイド療法が行われており,良好な成績が報告されている.
3)近年ではミコフェノール酸モフェチルによる寛解導入療法が,標準的なシクロホスファミド併用療法と比較して同等の寛解率と副作用発現率の低さから新たな治療選択肢として期待されている.
4)最近ではマルチターゲット療法としてステロイド,ミコフェノール酸モフェチル,タクロリムスの3剤を併用する治療の有効性も報告されているが,登録されている症例の約半数はⅤ型病変を合併している.

ALMS study JASN 2009; 20: 1103
→MMFとシクロホスファミドの治療反応性に有意差はなし.人種差がある.
MMFの日本人に対する有効性あり
Euro-lupus nephritis trial→低用量IVCYの効果は,高用量と有意差はない.日本人では不明.
初回効果→TACが早く寛解し,MMFがゆっくり寛解する傾向.
再発→TACが早く再発しやすい?
副作用→感染症・血球減少はIVCYが多め Plos ONE 2017; 12(4)

ミコフェノール酸モフェチル セルセプト®

主としてプリン代謝阻害作用に由来する.
・プリン代謝にはde novo系とsalvage系があり,ヒトのTリンパ球,Bリンパ球の核酸合成にはほとんどがde novo系プリン代謝に依存している.
・de novo系プリン代謝を選択的に阻害することにより,Tリンパ球およびBリンパ球合成を選択的に阻害する.

5例のPSLの報告あり.
播種性帯状疱疹で死亡例がある.
骨髄機能障害:MPA AUCと相関する.
CMV,BKウイルス,下痢・嘔吐:MPA AUCと相関しない.

ヒドロキシクロロチン hydroxychloroquine;HCQ

プラケニル®

1)抗マラリア薬であり、マラリアの治療や予防のために用いられている.
2)2015年に保険診療での投与が可能になった.
3)SLE患者全般で再燃,死亡ならびに感染症リスクの低下などが示されている.
→「全てのSLE患者に投与されるべき薬剤」として位置づけられている.
4)ループス腎炎に対する効果についても,MMF併用時の完全寛解率上昇,再発率低下,末期腎不全への移行を含む腎障害の軽減などが示されている.
5)注意すべき副作用として,投与初期に出やすい重症薬疹と,重症例では失明に至る網膜症がある.
・網膜症は累積投与量が増加すると起こりやすく,使用に際し,投与前や投与後も定期的な眼底検査が必要.

タクロリムス;TAC

Trust study

■Multi-target療法
Mixed type(+Ⅴ)で効果がある.
IVCY+TACの報告あり

完全ヒト型抗BLyS B lymphocyte stimulator

ベリムマブ belimumab;BLM

BLISS trial→腎炎再燃・蛋白尿減少の腎アウトカムでBLM投与群に改善傾向

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