加齢男性性腺機能低下症  late onset hypogonadism(LOH症候群)

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なすび医学ノート

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男性の加齢に伴う血中男性ホルモンの低下に伴って,男性更年期症状を呈する症候群.

加齢でのテストステロン減少が,
1)抑うつ状態,性機能低下,認知機能の低下,骨粗鬆症,心血管疾患,内臓脂肪の増加,インスリン抵抗性の悪化,総コレステロール値の上昇に関連する.
2)心血管疾患,糖尿病などの危険因子になる.

LOH症候群の背景にある疾患として,メタボリック症候群,動脈硬化症,糖尿病,高血圧,高脂血症などを考慮しなければならない.

疫学

日本人健常男子の有症状率(中等度以上)は,50代で約3割,60代で約5割,70代で約7割と考えられている.

病態

加齢に伴う男性ホルモンの低下は女性と異なり急激ではなく,また個人差も大きく,集団的には低下傾向を示す.加齢に伴い,性ホルモン結合グロブリン(sex hormone-binding globulin:SHBG)が上昇することから,SHBG結合テストステロンの割合が高くなり,生物活性を有するテストステロンの割合が低下する.

テストステロンが作用する臓器は,脳,骨,筋肉,腎,心血管系,精巣,陰茎,前立腺,毛包,皮脂腺,造血細胞,免疫系など全身に及ぶ.
・骨密度の維持に重要な女性ホルモンは,男性ホルモン経由で合成されるため,男性ホルモンの影響を受ける.

血中テストステロンの低下はメタボリックシンドロームや心血管系疾患の引き金となる可能性がある.

症候

男性の性欲低下のみならず,骨塩量低下や内臓脂肪増加などの代謝異常・睡眠障害・抑うつなどの精神症状も生じうる.

診断

自覚症状

QOL疾患であり,自覚症状を訴えていることが前提となり,症状の評価にはハイネマンの質問紙,Aging Males’ Symptoms(AMS),rating scaleが国際的に広く使われている.

LOHの自覚症状の精神・神経症状,身体症状,性機能症状に関連する質問が挙げられおり,総合得点からLOHを「なし」「軽度」「中等度」「重度」の4段階で判定する.

血中テストステロン

国際的には総テストステロン値測定が推奨されているが,本邦の手引きでは血中遊離テストステロン(FT)測定が推奨されている.

自覚症状がある場合は,簡便な評価方法として血中遊離テストステロン(FT)を測定する.
・FT<8.5pg/mLを目安に診断
・測定の結果,正常値の場合は症状に応じた治療を行う.
・低値~ボーダラインの場合は下垂体ゴナドトロピンLH,FSHを測定する.
→LH,FSHが低値の場合は視床下部-下垂体近傍の疾患を考慮し,正常/上昇の場合は禁忌に該当する例を除外して男性ホルモン補充療法ARTを行う.

うつ病との鑑別が重要.
・大うつ病では男性ホルモンが低下することも報告されており,ARTのみでは十分に対応できない症例多々ある.

治療

・現在の手引きでは遊離テストステロン値8.5pg/mL以下の場合はART適応とされる.

男性ホルモン補充療法 androgen replacement therapy;ART

・LOHに対してARTを行う場合,欧米ではパッチやジェルが主流だが,日本で主に使用できるのはエナント酸テストステロン(筋注,わが国で最も広く用いられ,投与4-7日目頃に血中テストステロン値がピークになる,過量投与に要注意),男性ホルモン軟膏(陰嚢皮膚に朝夕塗布,投与が容易で血中テストステロン値も安定),hCG(筋注,男性ホルモンではないが精巣のライディッヒ細胞を刺激し内因性テストステロンの産生を促す).

・ARTの副作用は前立腺癌,前立腺肥大症,(男性)乳癌,多血症,肝機能障害,腎機能障害,うっ血性心不全,高血圧,夜間睡眠時無呼吸などARTの除外基準となる疾患が考えられる.

・ストレスのコントロールをしないでテストステロンを補充すると視床下部にネガティブフィードバックをかけ視床下部-脳下垂体-性腺系(HPGaxis)の機能障害を助長する可能性もあるので注意が必要.

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