なすび専用のまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
ちゃんとした正書や情報提供サイトを強く推奨します.
当ブログは一切の責任を負いません.
○膵管上皮に発生する嚢胞状に増殖する膵腫瘍であり,粘液産生および貯留による膵管拡張が特徴とされる.
○病理学的には過形成から腺癌に至る幅広い組織型が含まれる.
○男女比は2:1と男性に多く,平均年齢は男女ともに約65歳と高齢者に多く認められる.
○好発部位は膵頭部.
嚢胞の形態は,ぶどうの房状と表現され,膵管との交通を認める.
約3割が多発する.
疫学
○偶発的に発見される膵嚢胞性病変に遭遇する機会が増えている.
・膵疾患以外を対象としたMRCPでの膵嚢胞発見率は,8%程度と報告され,加齢とともに増加する.
○IPMN並存癌の頻度は,年率で0.72~1.6%と推測され,健常人と比べると10~25倍程度と報告されている.
→多くは後ろ向き研究であることを考慮すると,年率0.5%程度(健常人と比べ10倍程度).
毎週1人の膵嚢胞を診ている頻度であれば,8年に1回遭遇する頻度.
病態
○主膵管の拡張を主体とする主膵管型,膵管分枝の拡張を主体とする分枝型,混合型に大別される.
分枝型
○拡張した膵管分枝が集合したもので,全体の外郭は球形ではなく凹凸のあるもの.
・ぶどうの房と表現される.
・分枝型は膵管との交通がよく保たれている
○分枝型では上皮内癌in situ carcinomaや腺腫adenoma,過形成が高率に認められる.
主膵管型
○分枝型に比較して悪性のものが多い.
・膵実質や他臓器への浸潤が多くみられる.
粘液性膵嚢胞腫瘍 Mucinous pancreatic cyst tumor;MCN
○中年女性に好発(平均年齢約48歳)
○肉眼的に球形で,嚢胞全体を被包する固有の線維性被膜を有する.
・嚢胞の形態はオレンジ状(夏みかん)と表現され,膵管との交通は稀.
・膵管との交通がないことが多い.
○膵体尾部がほとんど.
○組織学的に卵巣様間質(ovarian-like stroma)を有することが特徴.
○5年生存率は40-60%
IPMNからの発癌
○IPMNはadenoma-carcinoma sequenceを特徴とする多段階発癌形式をとり,low-grade dysplasia,high-grade dysplasia(HGD),associated invasive carcinoma(INV)に分類される.
○2つの発癌様式がある.
IPMN由来癌
○IPMNがぶどうの房状に徐々に増大し,ゆっくり癌化していく.
→小さなIPMNは細かな経過観察は不要.増大してから定期観察
IPMN並存癌
○IPMN自体はほとんど変化ないまま,IPMNとは別の部位に新たに通常型の膵癌が発生するもの.
○IPMNのどの段階からでも生じうる.
○通常の膵癌と同じように浸潤しやすい.
→IPMNが小さいからといって経過観察から外すわけにはいかない.
臨床症候
○症状は上腹部痛,体重減少,易疲労感など.
・症状のないものも比較的高頻度に認められる.
・黄疸,糖尿病,急性膵炎がみられることがある.
血液検査
○血液生化学的検査では特異的なものはない.
○急性膵炎を随伴すればそれに関係した膵酵素が上昇する.
○血清腫瘍マーカーのCEAやCA19-9は過形成,腺腫,境界病変では正常のことが多いが,悪性では50~80%の症例で上昇する.
画像検査
○画像診断では主膵管や膵管分枝の拡張や膵管内の隆起性病変,その周囲の変化について検索する.
・主膵管型の約80-90%,分枝型の約20%が悪性.
・分枝型の拡張分枝径(嚢胞径)からみると,30mm以上になると悪性の頻度が増す.
・壁在結節のある症例あるいは結節の大きさが数mm以上の症例,総胆管内透亮像や主膵管の狭窄・閉塞がみられる症例,年齢の高い症例に悪性が多い.
腹部超音波検査
○スクリーニングとして診断の第1の手がかりとなる.
CT
○膵全体を一定の精度で客観的に診断できるのはダイナミックCT.
・単純CTでは膵癌の早期診断はできない.
・造影剤に関するアレルギーや腎障害,被爆という問題がある.
MRCP
○IPMNの形状変化を見るのみならず,主膵管を一望できる.
○膵癌の副所見である膵管狭窄や尾側膵管拡張を見つけるのに非常に優れている.
・膵鉤部や最尾部など上流に膵管がない部位の膵癌は見落とされやすい.
内視鏡超音波検査(EUS)
○小病変に対する感度がもっとも高い.
○術者の技量に依存する.
→スクリーニングには適さず,IPMNそのものが変化した際や,膵管狭窄・拡張などの副所見出現時の精査に適する.
ERCP
○膵管の拡張や膵管内の粘液塊,隆起性病変が明らかになる.また,膵液を採取しその中の細胞診.
○K-ras点突然変異などを検索することで診断が可能となる.
■膵管鏡
・膵管内乳頭状増生がイクラ状腫瘍として認められる(悪性が多い).
■膵管内超音波検査(IDUS)
治療
High-risk stigma(手術を検討すべき所見)
1)膵頭部嚢胞による閉塞性黄疸
2)造影される嚢胞内結節≧5mm
3)主膵管径≧10mm
以上の場合は手術を考慮.
該当がなければ,以下のステップへ.
Worrisome features(EUSに回すべき所見)
1)臨床所見:膵炎症状
2)検査所見
・嚢胞径≧3cm
・造影される嚢胞内結節<5mm
・造影される嚢胞壁
・主膵管径5~9mm
・尾側膵の萎縮を伴う急峻な主膵管径変化
・リンパ節腫大
・CA19-9漸増
・嚢胞の増大≧5mm/2年
以上の場合は,超音波内視鏡などによる精査.
該当がなければ,経過観察.
○膵癌はⅠ期~Ⅳ期まで1年,早期診断のためには年2回の検診が望ましい.
・2年の予後延長が望める試算.
■最大嚢胞径<1cm
CT/MRIを6ヵ月後→その後は2年毎の経過観察
■最大嚢胞径1~2cm
CT/MRIを最初の1年は6カ月毎→その後2年間は年1回→その後は2年毎の経過観察
■最大嚢胞径2~3cm
3~6ヵ月後にEUSを施行→以後,間隔を1年に延長しMRIとEUSを交互に施行
・長期の経過観察が必要な若年者には手術を考慮
■最大嚢胞径>3cm
3~6ヵ月毎にMRIとEUSを交互に施行して経過観察
・若年者には手術を強く考慮
手術
適応
○主膵管型
○分枝型で結節隆起径数mm以上,または拡張分枝径30mm以上,または主膵管径6-7mm以上
○膵内・膵外浸潤が明らかなもの
○瘻孔を形成したもの
○粘液性膵嚢胞腫瘍(MCN)