インスリン療法 insulin treatment

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

内因性インスリンとの違い

内因性インスリンは膵臓から分泌され,門脈を介して,まず肝臓で作用するのに対し,外因性インスリン(皮下注射)は末梢の毛細血管より全身循環に入っていく.

内因性インスリンは門脈を介して,先に肝臓での糖新生を抑えるのに対し,外因性インスリンは肝臓での糖新生抑制は後回しになる.

性質

インスリン製剤内に含まれている亜鉛イオンと酸性環境により,皮下組織においてインスリンは六量体をしばらくは維持する.

毛細血管に吸収されるためにはインスリンは単量体になる必要がある.

構造による分類

現在使用可能なインスリンは,ヒト型とその一部のアミノ酸配列を変えたインスリンアナログ.

ヒトインスリン製剤
生体内のインスリンとまったく同一.

インスリンアナログ製剤
ヒトインスリン分子を修飾している.

インスリン1単位とは?

体重2kgの絶食中のウサギにインスリンを注射し,3時間以内に低血糖性けいれん(血糖45mg/dL)を来す量.

製剤中のインスリン濃度は,1mL中100単位(U100)に統一されている.
*ランタスXRだけは,1mL中に300単位(U300)のインスリンを含んでいる.

適応

絶対的適応

1.1型糖尿病
2.糖尿病性昏睡(糖尿病ケトアシドーシス昏睡,高浸透圧高血糖症候群)
3.重症感染症の併発,中等度以上の外科手術(全身麻酔施行など)の際
4.糖尿病合併妊娠(妊娠糖尿病で,食事療法だけでは良好な血糖コントロールが得られない場合も含む)

相対的適応

1.著明な高血糖(空腹時血糖250mg/dL以上,随時血糖350mg/dL以上)を認める場合や,ケトーシス傾向(尿ケトン体陽性など)を認める場合.
2.経口血糖降下薬療法では良好な血糖コントロールが得られない場合.
3.重症の肝障害,腎障害を有する例で,食事療法でのコントロールが不十分な場合.

算定

血糖自己測定器加算

月20回以上測定する場合  400点
月40回以上測定する場合  580点←2型糖尿病はここまで
月60回以上測定する場合  860点
月80回以上測定する場合  1,140点

在宅自己注射指導管理料と注射手技料(平成26年4月以降)

月3回以下(100点)
月4回以上(190点)
月8回以上(290点)
月28回以上(810点)→インスリン

導入初期加算

500点

*算定要件
①在宅自己注射の導入前には入院又は週2回以上の外来,往診若しくは訪問診療により、医師による十分な教育期間をとり,十分な指導を行うこと.また指導内容を詳細に記載した文書を作成し患者に交付すること.

②導入初期加算は新たに在宅自己注射を導入した患者に対し,3月の間月1回に限り算定する.ただし,投与薬剤の種類を変更した場合は当該変更を行った月においても算定することができる.なお過去1年以内に使用した薬剤に変更した場合は算定できない.

バイオ後続品導入初期加算

150点

バイオ後続品に係る説明を行い,バイオ後続品を処方した場合には、バイオ後続品導入初期加算として,当該バイオ後続品の初回の処方日の属する月から起算して3月を限度として,150点を所定点数に加算する.

種類と特徴

超速攻型インスリン rapid-acting insulin analog(Q)

リスプロ lispro:ヒューマログ®(バイオシミラーあり) ルムジェブ® 
アスパルト aspart:ノボラピッド®(バイオシミラーあり) フィアスプ®
グルリジン glulisine:アピドラ®

ヒトインスリン分子の自己会合に関係するアミノ酸を修飾し,自己会合能を低減させることで,皮下投与後,六量体から速やかに二量体,単量体へと解離する.

皮下注射後の作用発現が速く,最大作用時間が短い(約3~5時間)のが特徴.

食直前の投与で,食事による血糖値の上昇を抑える.
*ルムジェブ®とフィアスプ®は食事開始時投与(食事開始前2分以内),必要な場合は食事開始後投与(食事開始から20分以内)も可能

速効型インスリン regular insulin(R)

ノボリンR
ヒューマリンR

ヒトインスリンを中性溶解液としてえる.

皮下注射の他にも筋肉内注射や静脈内注射が可能.

皮下注射の場合,溶液中で6量体として存在し,皮下組織で2量体から単量体へ解離して血液中に移行するため,作用が発現するまでに投与後約30分を要する.
・食前(30分前)の投与で,食事による血糖値の上昇を抑える.
・最大効果は約2時間後,作用持続時間は約5~8時間.

静脈注射の場合はただちに作用を発現し,10分程度で消失する.

中間型インスリン Neutral Protamine Hagedorn(N)

ヒューマリンN
ヒューマログN
ノボリンN

ヒトインスリンに持続化剤として硫酸プロタミン(魚精巣由来)を添加したもの.
放置すると容易に分離するため,投与前に十分な攪拌混和を要する.

作用発現時間は約1~3時間,作用持続時間は18~24時間.

血中濃度のピークが存在するため,長時間にわたって一様に作用せず,患者によって1日2回投与が必要.
夜間の基礎インスリンの補充として,夕食後や就寝時に投与すると,深夜や早朝に低血糖を誘発しやすい.
結晶の大きさが不均一で血中への移行が一定とならないため,効果にばらつきが生じる.

最近では,ほぼ使われない.

持続型溶解インスリン long-acting insulin analog

グラルギン glargine:ランタス®(バイオシミラーあり),ランタスXR
デテミル detemir:レベミル®
デグルデグ degludec:トレシーバ®

生理的なインスリン分泌に類似した薬物動態を示すようにアミノ酸配列を一部修飾した基礎インスリン製剤.
→不足している基礎インスリン分泌を補充し,空腹時血糖値の上昇を抑える.

皮下注射後に6量体のインスリンから単量体のインスリンが持続的に放出されるよう設計されている.

皮下注射後に吸収され,作用発現が遅く(約1~2時間),ほぼ一日にわたり持続的な作用を示すのが特徴.

食後の血糖上昇を抑制する効果は強くないため,食後高血糖が顕著な場合には,経口血糖降下薬やGLP-1受容体作動薬,超速効型インスリン製剤を併用する.

ランタスXR®は,ランタス®を3倍に濃縮することにより,作用持続時間を延長し,ランタス®より夜間低血糖が少ないという利点がある.

混合型インスリン製剤 Pre-Mixed Insulin

超速効型or速効型インスリンと中間型インスリンを,さまざまな比率であらかじめ混合したもの.

中間型インスリンが入っているものは混ぜる必要がある.

配合溶解インスリン

ライゾデグ®

超速効型インスリンと持効型溶解インスリンを混合した製剤(3:7).

無色透明であり,懸濁操作が不要.

剤形による分類

プレフィルド製剤

インスリン製剤と注射器が一体となった使い捨てタイプ

簡単な操作で使用でき,患者への注射指導に優れるため主流となりつつあるが,コストが高くため,長期的な患者負担はカートリッジ製剤のほうが優れる.

バイアル製剤

CSIIや医療機関で点滴にインスリンを混注する際に用いるが,使用する際にはインスリン専用のシリンジを用いる.

カートリッジ製剤

専用のペン型注入器と組み合わせて使用する.

専用の注入器を使用しなければならないため,製剤と注入器の対応に注意が必要.

入院でのインスリン導入

なすび院長
なすび院長

インスリン導入は,可能であれば,入院での導入が望ましい(特に高齢者)

入院のメリット

糖尿病教育,手技指導,個別にある問題点の抽出
・連日の入院で系統だった全般的な糖尿病教育から,より細やかな個別指導へ一連の流れで実施できる.
・手技指導に関しては,具体的な問題点をリアルタイムに抽出し,より実践的な指導が実施できる.

適切な栄養管理と病態背景を考えたインスリンの単位調整
・適切な食事を患者ごとに設定し,それに基づいた適切なインスリン用量の調整を行うことが可能.

正常血糖により近い血糖値を短期間で実現することが可能
・日々の食事量と活動量が一定であり,頻回の血糖測定も可能となり強化インスリン療法が可能であるため,厳格な血糖コントロールができる.

インスリン頻回注射

入院中は,超速効型インスリン製剤1日3回と持効型インスリン製剤1日1回を併用するのが基本.

なすび院長
なすび院長

2型糖尿病で,状態が安定していれば,メトホルミンやSGLT2阻害薬といったインスリン抵抗性改善薬を開始or継続しておくと,入院後半の薬物調整が楽になる.
インスリン分泌促進薬は,高血糖毒性解除するまで中止.

初回インスリン導入
1回につき0.1~0.2単位/kg実測体重と低血糖を起こさない程度の少量から導入する.

入院前からインスリンを使用している場合
入院後の食事形態に合わせて,調整する.
(入院前に過食している場合は,20%程度減量するなど)

入院後は責任インスリン法に基づき調整
責任インスリンとはその時間帯に最も影響しているインスリン注射のことで,各食前血糖値を比較し,調整する.
インスリン調整は2単位刻みが基本だが,体格や血糖値をみながら1~4単位刻みまで幅がある.
目標血糖値:各食前血糖値110~130mg/dL,食後血糖値≦160mg/dL
(例外:不安定な網膜症や重度の自律神経障害を合併している,膵β細胞機能が高度低下したBrittle型糖尿病)

入院後半は高血糖毒性解除による急激な血糖低下に注意
糖毒性が解除されると,内因性インスリン分泌が回復し,インスリン抵抗性が改善するため,血糖が急激に下がってくる.
→傾向がみられれば,どんどんインスリン減量していく.

退院後の生活環境を配慮し,患者個別の治療へカスタマイズし,指導を行う
・インスリン分泌促進薬の併用をしながら,注射回数を減らす(ステップダウン)など,カンファレンスを開くことも重要.
・退院後に低血糖毒性が解除されて,低血糖を頻回に起こすケースがあるため,退院時にインスリン減量中だった場合は,さらに10~20%減量しておき,低血糖への対処法を十分に指導しておく.

ステップダウン(2型糖尿病)

DPP-4阻害薬,グリニド,SU薬といった内服薬やGLP-1受容体作動薬を追加し,注射回数を減らす.

インスリン分泌能が残っていることが条件
・総インスリン量≦20単位
・C-peptide index≧1.0

外来でのインスリン導入(2型糖尿病が対象)

検討する対象

1)HbA1cが目標を超えた状態が持続している(HbA1c 7.5~8.5%以上).
2)食事・運動療法の再指導や内服薬の調整でHbA1cが改善しない.
3)患者自身 or 家族や介護者によるインスリン注射が可能である.
4)内因性インスリン分泌がある程度保持されている.
5)インスリン導入の必要性を理解している.

なすび院長
なすび院長

メトホルミンやSGLT2阻害薬などの体重減少効果・臓器保護効果を持つ薬は基本的に残す.
DPP-4阻害薬も食後血糖是正のため,残しておく.
SU薬は,使用量を半量~最小用量となるように調整するか,中止.

basal-supported oral therapy;BOT(持効型製剤1回注射+経口糖尿病薬)

「簡便」「安全」に導入できる最もポピュラーな方法.

導入時の内服薬を大体継続したまま,1日1回持効型インスリンを患者の都合のよい時間帯に注射する.

注射にまず「慣れる」には非常によい.
インスリン治療に抵抗がある場合にも有用.

血糖変動を理解すると,頻回注射へのステップアップもしやすい.

適した患者像
罹病期間が比較的短く,内服治療だけでは空腹時血糖高値が持続し,多忙で1日1回程度なら注射可であり,主にインスリン注射に対する抵抗感が大きい患者に導入する.

投与量の設定
4~8単位(絶対に低血糖を起こさないと思われる量)で導入し,徐々に増量する.

受診間隔
導入後1~2週以内,少なくとも4週以内には再診していただき,血糖変動のチェックや注射手技の確認などを行うようにする.
・SMBGは無理に最初から指導しなくてもOK(その場合はリブレProなどを活用)
・不安や問題があれば,速やかに受診するよう指導.

血糖が落ち着き,SMBGができるようになれば1ヵ月毎.
(SMBGは1日1回朝食前が基本,多くても1日2回程度)

インスリン調整
慣れないうちは医師主導でインスリン調整する

患者が慣れてきたら,患者主導のインスリン調整(self-titration)を検討.
例)空腹時血糖≧130(3日以上持続した場合)→1単位ずつ増量
  空腹時血糖<130→変更しない
  空腹時血糖<70 or 低血糖症状出現→1単位減量

なすび院長
なすび院長

食後高血糖は,DPP-4阻害薬,グリニド or 少量SU,α-GIでカバーする.

1日2回注射

CGMの結果や食後高血糖があり,空腹時血糖がさほど高くない場合.

超速効型インスリン2回 or 混合型インスリン製剤2回(グリニドは中止する)

日中は仕事や外出などでインスリン注射を実施できない場合は,1日2回打ちのまま.
昼の注射も可能なら,1日3回打ちに切り替えていく.

Basal-supported post Prandial GLP-1-RA Therapy;BPT

持効型インスリン+GLP-1RA

GLP-1RAには食後血糖を低下させる効果,体重減少作用があるため,持効型インスリンと併用することで相補的な効果が得られる.

なすび院長
なすび院長

やせている症例,インスリン分泌能が低下している症例では,GLP-1RAではなく,超速効型インスリンを追加する.

配合注もあるため,うまく活用する(注射回数が減らせる).
インスリンデグルデク/リラグルチド(IDeg/Lira) ゾルトファイ®
インスリングラルギン/リキシセナチド(iGlarLixi) ソリクア®

basal-plus

BOTからの次の一手として,食後高血糖の最も著明な朝食直前 or big mealであることが多い夕食直前に1回注射を追加する.

注射のタイミングが1日に一度で済ませられるほうが負担が少なく,アドヒアランスも向上するため,そのタイミングに持効型インスリンも合わせる.

なすび院長
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配合注もあるため,1日1回注射のままいくのであれば,まずはこちらへ変更する.
インスリンデグルデク/インスリンアスパルト(7:3)

basal-2-bolus;B2B

basal plusを導入してもコントロールが不十分な場合は,さらにもう1回の超速効型インスリンを追加する(朝と夕の2回が多い).

持効型インスリン1回+超速効型インスリン2回(1回は2本同時打ち)
or
ライゾデグ®+ノボラピッド®

なすび院長
なすび院長

超速効型インスリンを打っていない食事帯は,DPP-4阻害薬,グリニド,α-GIでのカバーを検討する

basal-bolus療法;BBT

basal plusでも良好なコントロールが得られない場合は,毎食直前の超速効型インスリンと1日1回の持効型インスリンによる1日4回注射へ移行する.

なすび院長
なすび院長

厳格な血糖コントロールが期待できるため,SU薬,グリニド,α-GI,DPP-4阻害薬は中止でOK.

患者への説明

メディカルスタッフとの連携が重要.

現状把握

「HbA1cに30を足してみてください.そうすると体温と同じ感覚で血糖コントロールを考えることができますよ」

早期インスリン導入の重要性

膵β細胞は血糖コントロールが悪いと疲弊し,インスリン分泌を守るために膵β細胞に無理させないことが重要.

疲弊した膵β細胞は,インスリン治療による高血糖毒性解除で機能回復することがある.
→内因性インスリンが十分に残存している間にインスリン導入をすることが望ましい.

患者の抵抗感に対する対策

1)経済的な負担
3割負担で,4000~5000円/月の治療費が増える.

2)注射が怖い・痛い
3)注射打つことが面倒
実際のデモンストレーション用の注入器や注射針の実物を見せたり,パンフレットなどを使用したり,試しに少量のインスリン注射をその場で実施するなど.

4)低血糖が怖い
5)生活が制限される
使用するインスリン製剤の特性(作用時間)や低血糖の起こりやすい時間,食事との関係を説明し相談することで,患者に合った注射時間と低血糖対策などのアドバイスを行う.

なすび院長
なすび院長

抵抗感が強い場合,急がずに対応することも重要

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