インスリンアレルギー insulin allergy

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

疫学

○ヒトインスリン製剤使用前はしばしば認められていたが,ヒトインスリン製剤の登場以降,激減した.
○インスリンアナログ製剤の登場後,ヒトインスリンアレルギーをきたす例でもインスリンアナログへの切り替えが奏功した例が報告されるようになり,さらに減少している.

病態

要因

○インスリンアレルギーには様々な要因があり,治療のためには原因が明らかになることが望ましい.
○インスリンがほとんどの場合の原因であるが,添加物(亜鉛・防腐剤・プロタミン等)によることも多い.
・外来性インスリンに対して産生されるインスリン抗体は高親和性低結合能であり,血糖の不安定性に関与しないと考えられていたが,実際には低親和性高結合の抗体が出現し,血糖コントロールに難渋する症例も報告されている.

皮下投与

・非生理的な投与方法により生じるとされる.皮下投与でアレルギーを有しても静脈投与ではアレルギー症状をきたさない症例が報告されている.

インスリン結晶構造

・インスリンアレルギーは,ブタ・ウシなどの動物インスリン製剤からヒトインスリン製剤の導入により減少することが期待され,事実減少したが,インスリン製剤は本来ヒトが自己分泌するインスリンとは異なったインスリンエピトープ(抗原決定基)を有することから,依然としてインスリンアレルギーが出現する.
・インスリンアナログ製剤では,構造の違いから抗原暴露時間が短い,抗原性が低い,皮下停滞時間が短いなどの理由からアレルギー反応を起こしにくいことが考えられる.

製剤に含まれる配合・添加物

・インスリン製剤には,インスリンそのもの以外にも添加物として持続化剤(硫酸プロタミン,塩化亜鉛),防腐剤(m-クレゾール,フェノール),等張化剤(グリセリン,D-マンニトール),緩衝液(水素化ナトリウム,リン酸水素ナトリウム,塩酸)が含まれる.
・その他にインスリン合成に用いる大腸菌や酵母菌などの菌体に起因する残存物などがアレルゲンとなっている可能性がある.

生体側の原因

・HLA(human leukocyte antigen)-DR2,DR3,DR4,Bw15,Cw13などがインスリンに対する免疫応答に関与することが報告されている.

分類

○アレルギーはCoombs-Gellの分類では5つのタイプに分類されるが,インスリンアレルギーでは主に以下の3つのタイプが確認されている.

Ⅰ型アレルギー

○インスリンアレルギーの中でも高頻度.
○関与する免疫グロブリンは主にIgE.IgEを介した肥満細胞からのヒスタミンの放出により注射後の発赤,腫脹,搔痒が典型的な局所症状として認められる.
○自然軽快することもあるが,少数例で皮疹からアナフィラキシーへ重症化した症例も報告されている.
○インスリン治療開始後の数週~半年以内に起こることが多い.

Ⅲ型アレルギー

○外因性インスリンに対してβリンパ球から産生されたIgGによる免疫複合体が関与し,局所の炎症反応を惹起する.
○Ⅰ型とⅢ型アレルギーの合併したインスリンアレルギーも報告されている.

Ⅳ型アレルギー

○稀な病態.
○T細胞性免疫による免疫機序で注射後約8~12時間で出現し,4~7日間継続する遅延型アレルギー反応が起きる.
○皮下結節の多くはインスリン注射の24時間以後に出現する.
○病理組織学的には単核球浸潤が確認される.

症候

○少なくとも1週間程度インスリン治療を受けた経験がある.
○治療開始後6ヶ月以内に発症することが多い.
○インスリン治療の中止・再開を繰り返す患者に多い.
○他薬にもアレルギーを示すことが多い.
○その後インスリン抵抗性になったり,局所のインスリンポジストロフィーになることがよくある.

局所性

○皮膚症状として発赤,搔痒,硬結を伴うことが多い.

全身性

○非常に稀で糖尿病の全入院患者の0.1%未満と言われている.
○臨床症状としては全身性蕁麻疹,搔痒,発疹,顔面紅潮,呼吸困難,アナフィラキシーなど重篤なケースもある.

血液検査

総IgE,インスリン特異的IgE/IgG,抗インスリン抗体,インスリン自己抗体,C-peptideとグルコース,CH50,C3,C4,C1-INH(C1 esterase inhibitor)活性[血管性浮腫の除外]

アレルギー検査

○皮内検査
○皮膚プリック検査(検出感度は皮内検査より劣る)
○DLST

診断

除外診断項目

疑った症例のうち,約4割が下記のもの
○針に対する過敏症
○インスリン注射手技の誤り
○アルコール消毒綿に対するアレルギー
○ラテックスアレルギー
○他剤(ACE阻害薬,非ステロイド性抗炎症薬など)
○食事,化粧品,洗剤などの変更
○皮膚疾患(蕁麻疹,血管性浮腫)
○免疫疾患合併(SLE,Basedow病など)
○皮疹を伴うウイルス,細菌感染

治療

○可能であれば,インスリン切り替えや経口血糖降下薬へ変更する.
・インスリン治療が必要な1型糖尿病や肝腎機能障害などがある場合を除く.
・皮内検査で陰性のインスリン製剤を優先的に選択して,インスリン製剤の変更をする.
・インスリン投与部位の変更
・インスリン針の変更
・アナログ製剤
・CSII
・インスリン静脈投与(短期間)

○アレルギー部位へのステロイド局所投与
○抗ヒスタミン薬投与
○減感作療法
・全身性に対して,効果がみられる場合があるが,局所型の場合は免疫グロブリンブロッキング抗体の産生を促進し,免疫学的インスリン抵抗性の原因になりうる.
○ロイコトリエン受容体拮抗薬
○全身ステロイド投与
○オマリズマブ投与(抗ヒトIgEモノクローナル抗体)
○Rituximab
・上2剤は保険外
○免疫抑制療法

○気管支攣縮を伴う場合はβ刺激薬の経気道投与
○血漿交換療法

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