不眠症 insomnia

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なすび医学ノート

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日内会誌2014;103:1885~1895(pdf)

睡眠に関する訴えが,適切な睡眠の環境下において通常1ヵ月以上持続し,日中の疲労,集中力や気力の低下,眠気や気力の低下を伴う.

不眠とは,睡眠に関する自覚的な訴えであり,睡眠の機会が十分であるにも関わらず,入眠障害,頻回の覚醒ならびに早期覚醒のどれかがあり,1週間に3回,少なくとも3ヵ月以上続く場合とされている.

不眠とは,客観的な睡眠障害が明らかでなく,睡眠不足に相応する日中障害がなく,これらに加え,他の睡眠覚醒障害(原発性睡眠障害)では説明されないものと定義されている.

疫学

睡眠障害は発現頻度がきわめて高く,睡眠障害を一度も経験せずに一生を終える人は稀.
・本邦における調査では,5人に1人が何らかの不眠を有すると報告されている.

病態

乳幼児

睡眠覚醒リズムが十分でなく,夜泣きをすることがある.子どもの慢性睡眠障害は心身への影響があると考えられている.

小児

扁桃腺肥大に伴う睡眠時無呼吸症候群,睡眠時遊行症,夜驚症の頻度が高い.

思春期・青年期

過眠症や概日リズム睡眠障害の頻度が高い.

高齢者

・体内時計の同調機能が減弱し,運動量も少なくなり,そのため必要とする睡眠量が減少するため,高齢者の約30%に睡眠障害を認める(成人では約20%).
・高齢者では一般に睡眠が浅くなり,途中覚醒が多くみられ,朝早く目が覚めるようになる.
・高齢者では身体疾患による睡眠障害が見られる(高血圧,糖尿病,パーキンソン病,心疾患,慢性閉塞性肺疾患などのほか,腰痛や神経痛などによるものなどが増加する).
・高齢者ではうつ病になりやすく,睡眠障害を来たし易い.
・睡眠中に筋弛緩のため気道が狭窄され,呼吸停止が起こり,夜間不眠の原因となる(睡眠時無呼吸症候群).65歳以上の25%に見られる.
・精神生理性不眠,睡眠時無呼吸症候群,周期性四肢運動障害,レム睡眠行動障害の頻度が高い.

不眠がもたらす障害

身体活動への影響

抑うつや不安,生活の質の低下を引き起こし,その状態が続くと,身体・精神活動へ悪影響を及ぼす.

1)総睡眠時間の減少,睡眠効率の低下や中途覚醒の増加,浅く分断された睡眠は,高齢者では歩行スピードの低下,椅子からの立ち上がりや狭い幅の歩行などのパフォーマンスへ悪影響を与える.
2)注意力,反応時間の遅延,記憶障害といった認知機能の低下と関係がみられる.
3)睡眠時間の減少は転倒のリスクと関連する(睡眠導入薬の影響を差し引いても)

生活習慣病

1)日常の睡眠時間と死亡率との間にはU字型の関係があり,6~7時間の睡眠をとる者の死亡率が最も低く,それ以上でもそれ以下でも死亡率は上昇する.
2)高血圧,糖尿病,脂質代謝異常,肥満度の間にも同様の関係がある.

高血圧

覚醒状態から睡眠に移行すると,
1)交感神経の活動は低下,副交感神経優位となり,血圧は心拍低下に伴い低下する.
2)呼吸数も減少して,身体の負担を減らす.
3)ノンレム睡眠で,睡眠段階が深くなるにつれて,血圧はさらに低下する.
→障害されると,睡眠中の血圧が上昇し,日中の血圧も上昇する.

短時間睡眠のriserパターン群では,正常睡眠の非riserパターン群と比較し,脳心血管疾患発症リスクは4.43倍と増大していた.

糖尿病・肥満・脂質代謝異常

1)満腹の信号であるレプチンの血中濃度は睡眠時間が長いほど高く,空腹の信号であるグレリンの血中濃度は睡眠時間が短いほど高い.
2)睡眠不足から日中の居眠り・過眠が生じ,運動不足になる.
→睡眠が食欲や肥満を介して,糖尿病の発症に影響を及ぼす.

認知症?

1)睡眠による記憶の固定や高次脳機能のメンテナンスが持続的に障害

2)睡眠薬使用
・BZD服用は,用量依存的に優位にATDを増加させる.

3)生活習慣病

4)glymphatic systemの不調→アミロイドβとダウ蛋白の沈着
・脳小動脈周囲のVirchow-Robin腔の脳脊髄液は,その周りのastroglia細胞の水チャンネルを通じて,動脈の拍動の脈動によって脳内に入り,脳間質液の対流を起こし,Aβを眠っている間に除去することが動物実験レベルではあるがわかってきた.
→質の良い睡眠が認知症をプロテクトしている可能性が示唆されている.

短期的に不眠が認知機能へ影響を及ぼすことは,複数の研究で報告されている.
・ワーキングメモリとエピソード記憶は,不眠の影響を受けやすいことが確認されている.

数年間の横断調査で,認知症でない65歳以上の高齢者において,睡眠不足および日中の眠気がある場合,認知症発症リスクが20%前後上昇した報告がある.

分類

適応障害性不眠症(急性不眠症) Adjustment Insomnia (Acute Insomnia)

精神生理性不眠症 Psychophysiological Insomnia

逆説性不眠症 Paradoxical Insomnia

特発性不眠症 Idiopathic Insomnia

精神疾患による不眠症 Insomnia Due to Mental Disorder

不適切な睡眠衛生 Inadequate Sleep Hygiene

小児の睡眠(行動)習慣による不眠症 Behavioral Insomnia of Childhood
  しつけ不足睡眠障害 limit-setting sleep disorder
  睡眠開始随伴障害 sleep-onset association disorder

薬物・物質による不眠症 Insomnia Due to Drug or Substance

内科的疾患による不眠症 Insomnia Due to Medical Condition

物質や既知の生理的状態によらない特定不能の不眠症 Insomnia Not Due to Substance or Known Physiological Condition, Unspecified

特定不能の生理的(器質的)不眠症 Physiological (Organic) Insomnia, Unspecified

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