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診断
不眠症状を呈し,そのために社会機能が低下してしまうような疾患は,うつ病,睡眠時無呼吸症,レストレスレッグス症候群,レム睡眠行動障害など多いため,それらがすべて否定されることが重要.

なかでもうつ病の見逃しが一番多い
除外し,「眠りたいのに眠れない」「日中の眠気や生活への支障」が3ヵ月以上持続する場合に初めて不眠症との診断が確定する.

睡眠障害国際分類第3版(2014)
A)~D)をすべて満たす.
A)不眠症状が存在する(自覚症状でよい)
入眠困難,睡眠維持困難,早朝覚醒,就床抵抗(小児),ひとりで寝るのを怖がる(小児)
B)日中の機能障害が存在する
1)不十分な覚醒→眠気,疲労,注意集中力/記憶力の低下,意欲/活力の低下
2)認知社会機能障害→パフォーマンスの低下,ミス/事故の起こりやすさ
3)精神症状→抑うつ/いらいら,行動の問題(過活動/衝動性/攻撃性),睡眠問題へのとらわれ
C)睡眠不足や騒音など睡眠習慣や環境要因では説明できない.
・夜勤を含む交代勤務や夜眠る生活から逸脱したライフスタイルの人を除く.
D)不眠症状とQOL障害が少なくとも週3回以上みられる.
E)不眠症状とQOL障害が少なくとも3ヵ月以上持続している.
F)その他の睡眠-覚醒障害では説明できない.
睡眠障害のタイプを見極める
入眠障害
中途覚醒
早朝覚醒
熟眠障害
不眠の原因となる薬物や身体疾患の有無
不眠を引き起こす身体・精神疾患がないか,薬物など,睡眠障害を来たすものの投与がないかどうかの鑑別が重要.
薬物
抗Parkinson病薬(ドパミン製剤・抗コリン薬)
降圧薬(β遮断薬・Ca拮抗薬)
抗ヒスタミン薬(H1・H2)
ステロイド
テオフィリン
抗てんかん薬(カルバマゼピン・バルプロ酸)
インターフェロン
カフェイン
アルコール
タバコ
身体疾患
喘息,心不全,睡眠時無呼吸症候群,むずむず足症候群,疼痛,掻痒感など
就床にかかわる行動
就床時間,夕食時から就床までの過ごし方
本人の主訴と家族の報告と乖離がないか
ある場合は熟眠障害
終夜睡眠ポリグラフィ
・睡眠,覚醒に関する生体現象を複数の生理学的指標を用いて同時に記録することで睡眠の状態を評価したり,睡眠障害をきたす疾患の診断や治療効果の判定に用いられる.
脳波,眼球運動,顎の筋電図は睡眠段階の判定のためには必須である.
・睡眠潜時(入眠までに要する時間),REM睡眠潜時(入眠から最初のREM睡眠が出現するまでの時間),睡眠効率〔全睡眠時間/全就床時間×100(%)〕などで睡眠の質を評価する.
健常者では睡眠潜時は30分以内,REM睡眠潜時は約90分,睡眠効率は90%以上であることが多い.
睡眠障害の種類によってこれらの指標にさまざまな異常が現れる.
睡眠時無呼吸症候群では無呼吸指数(1時間あたりの無呼吸の回数)が5以上が異常とされる.
酸素飽和度は覚醒時の値から4%以上低いと異常とされる.
むずむず脚症候群や周期性四肢運動障害では夜間の周期的な下肢の不随意運動(PLM)が観察されるが,1時間あたりのPLMの数が5以上であると異常とされる.
非薬物療法
不眠症の定義→睡眠の訴え+日中の機能障害→昼間のQOLがどれくらい改善するかをみないといけない
睡眠衛生指導 ベッドに入る時間を短くする
欧米では認知行動療法がfirst(日本では保険適応なし)
睡眠衛生指導
睡眠時間は人それぞれ,日中の眠気で困らなければ十分
・8時間にこだわらない,歳をとると必要な睡眠時間は短くなる.
眠たくなってから床に就く,就床時刻にこだわりすぎない
・眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くする.
同じ時刻に毎日就床
・起床時刻の乱れは体内時計のリズムの乱れのもと.睡眠覚醒のリズムを崩さないように,休日もほぼ決まった時刻に起床することが理想的.体内時計を乱さないように,休日の寝坊も2時間までにする.

上の2つが特に重要.
睡眠不足が翌日の機能低下につながることを過剰に恐れ(不眠恐怖),慢性化してしまうタイプに有効.
眠りが浅いときは,むしろ積極的に遅寝・早起きに
・通常の入眠時間である22時の前2~3時間は最も覚醒基準が高くなり,入眠には適さない入眠禁止ゾーン.
朝の光の利用でよい睡眠
・目が覚めたら日光を取り入れ,体内時計をスイッチオン.眠りをうながすホルモンであるメラトニンが光を浴びてから寝る頃(約16時間後)に出るようになる.
規則正しい3度の食事
・朝食を摂ると,胃腸の働きが活発になる.
・しっかり噛むことも重要で,脳へ刺激が加わり,心とカラダが目覚める.
・体内時計は光によってだけではなく,食事の影響も受けている.
定期的な運動習慣
・夕方の軽い運動で体温を上げておくと,数時間後に体温が下がって,眠りに入りやすい状態になり,寝つきがよくなる.
・日中の活動により,適度に疲れることで,よい睡眠につながる.
快適な寝室環境
・音対策のためにじゅうたんを敷く,ドアをきっちり閉める,遮光カーテンを用いるなどの対策.
・寝室を快適な温度に保つ.
昼寝をするなら、午後3時前の20~30分
・昼食後の20分程度の短い昼寝(仮眠)は眠気を抑え,作業能率を高めるのに効果的.
・ただし,30分以上寝ると深い眠りに入るため,眠りからなかなか覚めることが出来ず,眠気も残り,能率を下げる.午後3時以降の昼寝は,夜の眠りをさまたげる.
刺激物を避け,眠る前には自分なりのリラックス法
・就床前のコーヒー・タバコは避ける,音楽,ぬるめの入浴など.
・お茶やコーヒーなどに含まれるカフェインには覚醒作用があり,4~5時間も持続するため,寝る前に目が覚めてしまう.
・タバコに含まれるニコチンも寝つきを悪くなり,カフェインの多い飲み物やタバコは寝る前に控える.
・お腹いっぱいの状態で就寝すると,消化のために眠っている間も胃腸が活発に働き,夜中に目が覚めたり,睡眠の質が低下したりする.消化してから寝付くように,夕食は就寝の2時間前までに済ませて,寝る直前に食べないように.
ぬるめのお風呂がよい
・寝る前にお風呂に入ると1日の疲れも癒され,心身ともにリラックスできる.
・熱いお風呂は神経を高ぶらせて,逆効果.
・就寝1~2時間前にぬるめのお風呂に入って,体温を上げると,床につくまでに深部体温が下がり,寝つきがよくなり,眠りも深くなる.
睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
・アルコールは寝つきをよくするが(習慣行動の要素が強い),実は眠りを浅くする.さらにトイレが近くなるため,睡眠の途中で目が覚めてしまったり,早朝に目が覚めてしまう.
就寝前の水分
・就寝前に水分を摂りすぎないようにする.夜中のトイレ回数が減る.
寝る前のパソコンやテレビは避ける.
・モニター画面の明るい光を見ていると,体が夜と感じられずに,眠りをうながすホルモンであるメラトニンが分泌されにくくなる.
・携帯電話を見ると同様で眠りにくくなってしまう.テレビゲームも同様.
寝床での考え事をしない
・昼間の悩みを寝床にもっていかない.
・自分の問題に取り組んだり,翌日の行動について計画したりするのは,翌日にする.
・心配した状態では,寝付くのが難しくなり,寝ても浅い眠りになる.
十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に
睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
・背景に睡眠の病気、専門治療が必要
睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
・一定時刻に服薬し就床
・アルコールとの併用をしない
刺激調整療法
1)眠くなってから,寝床に入る.
2)寝床は寝るためだけに使う.
3)寝床に入って10分たっても眠れないときは,眠くなるまで寝床を離れる(反復可).
4)毎朝,同じ時刻に起床する.
5)昼寝はしない.
睡眠制限療法
薬物療法
睡眠は,恒常性維持機構(疲れたから寝る)と体内時計機構(夜になったから寝る)の相互関係により生じる.
ヒトは昼に活動する動物であることから,以下の状況で自然な眠りが生じるという動物的本能がある.
・日中の過度な活動維持による疲れ
・夜に暗くなったところ
・静かで覚醒刺激の少ない環境に身を置く
1)ベンゾジアゼピン受容体刺激薬(BZ)→市販の睡眠薬は脳全体の「疲れを増す」
2)メラトニン受容体刺激薬(MT)→服用時刻を「夜と認識させる」
3)オキシレン受容体拮抗薬(OR)→「過剰な覚醒刺激を減らす」


うまく使うためのポイント
・普段の入床時間に合わせた服用
・食後1.5時間は服用しない
・冷え症対策への対処
・アルコールとの併用は厳禁
診療報酬による多剤併用制限:向精神薬処方の適正化(2018年~)
3種類以上の抗不安薬,3種類以上の睡眠薬,3種類以上の抗うつ薬,3種類以上の精神病薬または4種類以上の抗不安薬および精神薬の投薬を行った場合
→処方料 18点,処方箋料 28点へ改訂
ベンゾジアゼピン受容体作動薬である抗不安薬・睡眠薬を1年以上同一の用法・用量で継続処方している場合
→処方料 29点,処方箋量 40点
向精神薬の多剤処方等の状態にある患者について,減薬した上で薬剤師または看護職員と協働して症状の変化等の確認を行っている場合
→処方料 向精神薬調整連携加算 12点,処方箋料 向精神薬調整連携加算 12点
ベンゾジアゼピン受容体刺作動薬
不眠症の治療で多く用いられる.
ベンゾジアゼピン(benzodiazepine;BZ)系睡眠薬,BZの化学構造を持たない非BZ系睡眠薬があるが,共通してGABA(γ-aminobutyric acid)A受容体に作用する.
→抑制系神経の機能を増強し抗不安作用や催眠作用を発揮する.
即効性があり,抗不安作用や筋弛緩作用を併せ持つ薬剤が多く,投与初期から効果を発揮しやすいため,睡眠に対する過剰な不安や過緊張を持つ患者で有効性が高い.
受容体の結合部位
GABA-A受容体複合体と呼ばれるBZ結合部位には,2つのサブタイプがある(ω1,2受容体).
ω1(BZ1):催眠作用,鎮静作用.小脳,大脳皮質第4層などに多い.
ω2(BZ2):抗けいれん作用,抗不安作用,筋弛緩作用.脊髄や海馬に多い.
BZ系は選択性がないため,ω1,2の各受容体両方に結合し,睡眠薬としては望まない筋弛緩作用などの働きも出てくる.
非BZ系は,ω1受容体と親和性が高い.
副作用
筋弛緩作用による脱力や転倒が最も多い副作用の一つ.
・BZ系睡眠薬と比べ,非BZ系睡眠薬でより弱いとされる.
作用時間が長いBZ系受容体作動薬が用いられた場合に,翌朝以降まで,眠気や精神作業能力低下が出現する持ち越し効果が起こる.
多量の睡眠薬を服用し就床せずに起きていた場合に記憶障害や奇異反応が起こりやすく,特にアルコールと併用した場合は高頻度に起こる.
→アルコールとの併用は禁忌!であることを十分に説明する.
将来の認知症発症の促進因子となる可能性が否定できない.
中和薬(フルマゼニル,アネキセート®)は存在するが,一般的には短時間作用であり,呼吸抑制時には使用されるが,過量服薬や中毒の際には,そのリバウンド作用,痙攣などに注意する.
ベンゾジアゼピン系
第一選択薬としては推奨されない
BZ系睡眠薬は浅い眠りを増加させ,レム睡眠,徐波睡眠を減少させるので,深く眠った感じが得られにくい,睡眠の質を悪化させる睡眠薬といわれる事がある.
レム睡眠を減少させるので悪夢で悩んでいる人などに処方される事もあるよう.
ふらつきや転倒などの副作用が生じやすく,耐性が生じると減薬が困難であり,また深い睡眠やREM睡眠の減少,睡眠中の呼吸機能の低下をきたすなどの非生理的な睡眠構築となるため,睡眠時無呼吸症候群やせん妄を悪化させやすい短所がある.
非ベンゾジアゼピン系
BZ系の副作用軽減と自然な眠りの獲得を目標に開発.
副作用である反跳性不眠,離脱症や依存性耐性を起こしにくいと言われてる.
筋弛緩作用が緩和されており,転倒・骨折の可能性がやや緩和されているといわれている.
メラトニン受容体刺激薬(MT)
ラメルテオン ロゼレム®
視床下部に分布しているメラトニン受容体を刺激することで,概日リズムに沿った睡眠作用をもたらす.
・大脳に対する直接的鎮静作用を持たない.
体内時計改善効果がある唯一の薬剤であり,睡眠構築への影響や副作用がほとんどなく生理的な睡眠が維持されることから,睡眠無呼吸の症例,転倒や夜間せん妄に注意が必要な高齢者,入院患者や夜型生活者など外部同調因子が減っている症例で特に有効.
即効性に乏しく,効果安定に約1~2週間程度要するため,効果を実感しにくく,抗不安作用もないため,神経質な患者では効果発現まで待てずに中断しやすい.
体内時計に直接作用し,また食事を同時摂取すると吸収率が低下するため,服用するタイミングによって効果が大きく変わるのも特徴.
処方時の工夫としては,効果発現まで焦らずに待つ必要性があるものの生理的な睡眠に近づくといったメリットを事前に十分説明し,服用時刻も明示するのが必要.

即効性はないので,ベースになる睡眠リズムを整えるイメージ
高齢者の不眠症(特に入院中)で頻用される.
オレキシン受容体拮抗薬(OR)
オレキシンは視床下部外側部のニューロンから産生される神経ペプチドであり,覚醒系に作用し維持すう働きを持つ.
→不眠症では,情動的興奮の高まりから,睡眠時間帯になっても覚醒系の活動が適切に低下しない.
オレキシンの受容体への結合をブロックし,過剰に働いている覚醒システムを「特異的に」抑制することで,脳を生理的に覚醒状態から睡眠状態へ移行させる.
投与初期から効果を発揮しやすい一方で,BZで問題となる離脱症状や依存性,ふらつき,急激な意識低下,睡眠構築の悪化などがないため,早期の不眠解消とその後の中断が容易であることが挙げられる.
最高血中濃度到達に1~3時間ほどかかるため,睡眠直前の服用では効果が得られにくいものの,半減期が平均10時間であり中途覚醒の覚醒が期待できる(患者に飲むタイミングをしっかり説明する).
過度なふらつきや意識レベルの低下を生じにくいことを考慮し,睡眠直前投与で効き目が弱い場合や朝まで残る場合には,投与時刻を1~2時間ほど前倒しにすることを可能.
初めて睡眠薬を服用される患者への説明
・覚醒を抑えて,自然な眠りを誘導する
GABA受容体作動薬を過去に使ったことのある患者への説明
・すぐに効果は出ないことを説明する.
・強制的に眠らせる薬ではありません.
・中途覚醒に効果があり,再入眠もスムーズ.
長期運用しているGABA受容体作動薬から切り替える患者への説明
・前薬からの突然の切り替えで,一時的に睡眠が悪化することがあります.
・長期運用している場合は時間がかかる.
・従来薬に新規薬剤を追加してから減薬をします.
*本人主導の減薬は時間がかかるものの失敗は少ないうえ,意識付けになる.
スボレキサント
ベルソムラ®
スボレキサントは,65歳以下では20mg/日,65歳以上では15mg/日が推奨用量.
中途覚醒・早朝覚醒の患者に使える.
イトラコナゾール(イトリゾール他),クラリスロマイシン(クラリシッド、クラリス他)など薬物代謝酵素CYP3Aを強く阻害する薬剤との併用が禁忌.
レンボレキサント
デエビゴ® 2.5mg錠/5mg錠/10mg錠 エーザイ
1日5mgを就寝前(最大10mg)
*空腹時に飲む(食後すぐ飲むと効果が減弱する)
*CYP3A阻害薬を併用する場合は,効果が増強されるため1日2.5mgとする
寝付きの改善に良い効果を示す傾向があるため,入眠困難や持ち越し効果を心配する患者によく使う.
イトラコナゾール,クラリスロマイシンなど薬物代謝酵素CYP3Aを強く阻害する薬剤との併用は慎重投与.
漢方薬
抑肝散(よくかんさん)
ツムラ54番
体力中等度の人で,神経過敏で興奮しやすく,怒りやすい,イライラする,眠れないなどの精神神経症状を訴える場合に用いる.
1)落ち着きがない,ひきつけ,夜泣きなどのある小児
2)眼瞼痙攣や手足のふるえなどを伴う場合
3)腹直筋の緊張している場合
寝る前2.5gから開始.
夕・寝る前2.5gずつまで増量できる.
・やせ形でやや虚弱,腹直筋に緊張が見られる患者の痙攣,情緒不安,不眠,自律神経失調症,夜泣きなどに用いる.
・進行した「アルツハイマー型認知症」で起こる妄想や,徘徊,暴力などの抑制にも効能があることが知られている.
酸棗仁湯(さんそうにんとう)
体力の低下した人で,心身ともに疲労して,不眠を訴える場合に用いる.
1)慢性疾患患者や,老人などで夜間眼がさえて眠れない場合
2)精神不安,神経過敏などを伴う場合
加味帰脾湯(かみきひとう)
体質虚弱な人が,顔色が悪く貧血気味で,精神不安,心悸亢進,不眠などの精神神経症状を訴え,微熱のある場合に用いる.
1)下血,吐血,鼻出血などを伴う場合
2)盗汗,全身倦怠感,食欲不振などを伴う場合
減量方法
漸減法
標準法では1~2週毎に,服用法の25%ずつ,4~8週間かけて減薬・中止する.
多剤併用例では半減期の短い睡眠薬から先に減薬することが望ましい.
・超短時間作用型の睡眠薬を単剤で服用している場合にはそのまま漸減してもよいが,離脱性の不眠症状が気になる場合には等力価のより半減期の長い睡眠薬に置換してから漸減してもよい.
・反跳性不眠が出たら1段階戻る
隔日法
高齢者の不眠症
薬物代謝能力の個人差が大きく,少量の睡眠薬でも転倒しやすい.
入院中
スボレキサント15mg,ラメルテオン8mgを追加
もとからの薬は急に中止しない.
認知症
スボレキサント±抑肝散orメマンチン,エスゾピクロン,ブロチゾラム
入眠障害であれば,超短時間型が推奨されるが,実際には入眠障害のみは少ない.
特に高齢者に対しては超短時間によるせん妄などの事象が多いため,短~中時間型を選択する.
・基本的には筋弛緩作用が少ないベンゾジアゼピン類似薬(アモバン®,マイスリー®)が勧められる.
ただし抗不安作用に乏しく,不安を主とする病態に効果が薄い.
高齢者ではノンレム睡眠が短縮し,眠りが浅く,熟眠障害が生じる.
⇒トラゾドン(5-HT2A受容体拮抗薬/再取り込み阻害薬:SARI,デジレル®)を用いる.
例:デジレル 25-50mg 1回1錠 1日1回 就床4時間前(or就床時)
ベンゾジアゼピン系(BZP)使用の基本
1)常に転倒のリスクあり
・鎮静,記憶喪失.
・入院中は体内時計が乱れてくるので頓服で使うとリスクが高い.
2)少量で単剤投与
・高齢者は代謝の低下や薬剤相互作用などのために副作用を生じやすい.
・通常の1/2or1/3から開始し,慎重に漸増する.
・併用療法として四肢の筋の緊張と弛緩を繰り返すリラクゼーション療法による不安の軽減,午後睡眠の30分以内制限と規則正しい起床時間で構成する行動療法による睡眠障害の改善.
3)服薬期間を決める
・漫然としたBZP投与は,不必要な依存を形成させる.
・BZPの高い利便性は即効性にあり,手術や侵襲的検査前の一時的な不安が最もよい適応.
・臨時的な薬剤使用とし,大まかな服薬期間を決める.
4)服薬終了は慎重に行う
・BZPの急激な中止により,反跳性の不安や不眠を生じることがあり,本来の症状の悪化と誤診しやすい.
・患者には自己中断しないよう指導.漸減終了が鉄則.
・短時間作用型の薬剤の中止は難しいため,長時間作用型の薬剤に置換し,漸減
・治療目標を明確にする
・認知症の有無にも注意.
5)飲んでいない薬は効かない
・自宅での薬剤の管理方法を家族に確認する.