インスリン自己免疫症候群 inslin autoimmune syndrome;IAS

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なすび医学ノート

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インスリン非使用患者に抗インスリン抗体を生じ,患者血中の大量のヒトインスリンが結合・遊離することによって低血糖 or 食後高血糖をきたす病態.

通常,見かけ上血中インスリン値が100μU/mL 以上の高値を認め,Basedow病をはじめとする自己免疫性疾患の合併が多い.
・チアマゾールに代表されるスルフヒドリル基(-SH)含有の薬剤の服用との関連性が報告されている.

疫学

世界でこれまでに200例以上の報告がなされているが,その90%がわが国で認められている.

原因

HLA classⅡ遺伝子が関与し,本邦の多く(96%)がHLA-DR4と強い相関を持つ
・うちHLA-DRB1*04:06が84%,HLA-DRB1*04:03 が10 %.
・74位のアミノ酸がグルタミン酸という共通性がある.
・HLA-DRB1*04:06は本邦に多く,コーカシアンには稀.

過去にはチアマゾール,グルタチオン,チオブロニン,カプトプリルなどのSH基を持つ薬剤によるIAS発症の報告が多かったが,近年はロキソプロフェン,アムロジピン,ブシラミンなどのSH基を含まない薬剤や,αリポ酸・コエンザイムQを含有する健康食品の摂取によるIAS 発症が報告されている.
・αリポ酸が最も多い.

DRB1*04:06を発現した抗原提示細胞はインスリン分子のS-S結合が還元され,曝露した自己ペプチドを抗原として免疫応答すると考えられている.
・SH基を有する薬剤はインスリン分子のS-S結合を還元することが示唆されている.
・αリポ酸は元来SH基は持たないが,体内で還元されるとSH基を有する物質に変化し,IASを引き起こすと考えられている.

病態

薬剤誘発性のIAS については原因薬剤の開始から2~6週後と早期に発症し,原因薬剤中止後は数カ月以内に自然緩解する症例が多いと報告されている.

低血糖(主に空腹時),食前に自発性低血糖を起こす.
なんらかの条件でインスリンとIAAが乖離すると,大量のインスリンが遊離し低血糖が引き起こすことになる.
・低血糖は3ヵ月以内に82%,1年以内では93%が自然寛解する.

食後高血糖を呈することが報告されており,75g経口ブドウ糖負荷試験にて約50%の患者で境界型または糖尿病型を呈すると報告されている.
・インスリンにIAAが結合すると,インスリン受容体に結合できず効果を発揮しないため,高血糖になる.

検査

IAS 患者における血糖変動はHbA1cよりグリコアルブミンと相関するという報告がある.

血中IRI値は,100~10,000μU/mLと著明な高値を呈し,空腹時・食後・糖負荷で大きく変動する.

IAA抗体価も著明に高値を呈し,インスリン結合率は80~90%を示す.

IAAは,Scatchard解析により,高結合性,低親和性であることが明らかにされている.
→多くのインスリン分子と結合するが,乖離しやすい.

診断

①インスリン注射歴のない重症の低血糖発作

②患者血中インスリン抗体(IRI)著明高値

③IRIの大部分が,特異的HLA型(DRB1*0406が疾患感受性アレル)を持つ.

の3項目で定義づけられる.

治療

原因の除去

IAS の治療については原因薬剤の中止が原則であり,80%以上が3 カ月以内に自然緩解するとされている.

発症6カ月前からの内服歴,サプリメント歴を詳細に聴取し被疑薬同定に努める.

分割食,αグルコシダーゼ阻害薬

分割食やα グルコシダーゼ阻害薬によって食後の急峻な血糖上昇が抑制されることによってインスリン抗体と結合するインスリンが減少するため,低血糖の発生が抑制されると推察される.

本邦では2017年から2018年に診断されたインスリン自己免疫症候群22症例のうち,半数の11 症例でα グルコシダーゼ阻害薬が使用されるなどIAS に対する加療として標準的に用いられている.

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