炎症性腸疾患 inflammatory bowel disease;IBD

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

治療

治療標的は,症状改善から粘膜炎症制御(粘膜治癒)に変わってきている.

・粘膜治癒が患者予後を反映するというエビデンスが蓄積されている.
・病理学的寛解,機能的寛解を目指した「deep remission」という概念も出ている.

5-aminosalicylic acid(5-ASA)製剤

NF-κβ(nuclear factor-kappa B),Wnt/β-カテニン,PPAR(peroxisome proliferator-activated receptor)γ,MAPK(mitogen-activated protein receptor kinase)ならびにPⅠ3K(phosphoinostide 3-kinase)/Aktを含むさまざまなシグナル伝達経路を制御することで,抗炎症作用を有する.

aryl hydrocarbon receptor経路を介して,大腸粘膜内のTreg(regulatory T cell)の誘導にも関与している.

軽度から中等度の潰瘍性大腸炎の治療のfirst line
・寛解維持療法としての有用性,長期の安全性に関するエビデンスが確立している.

Crohn病における有用性は限られている.
・初発例や軽症例で用いられているが,寛解導入ではステロイドに劣るとされる.
・寛解維持に関するエビデンスは得られていない.

サラゾスルファピリジン サラゾピリン®
・腸内細菌でスルファピリジンと5-ASAに分解され,大腸内で作用する.

メサラジン ペンタサ® ペンタサ®顆粒94%
・5-ASAが腸溶性のエチルセルロースの多孔性被膜でコーディングされており,小腸から大腸までの広い範囲で放出されるように調節されている.
・ペンタサ®顆粒は,1回用量をワンスティック(メサラジンとして最高2000mgまで)で服用することが可能となった.

アサコール®錠
・5-ASAにpH依存型の放出制御特性を有するコーティングが施され,pH7以上で崩壊する高分子ポリマーからなり,より下部の消化管(回腸末端~大腸)に到達してから5-ASAが放出される.

リアルダ®錠
・pH応答性コーティングを有する.
・内包されているメサラジンは,親水性基剤と親油性基剤により取り込まれている.
→親水性基剤がゲル化することにより,膨潤し,メサラジンの放出は緩徐となり,さらに親油性基剤により腸液の侵入を抑制することから,直腸までさらにメサラジンを持続的に放出できるmulti matrix構造.

コルチコステロイド corticosteroid;CS

IL転写の抑制,NF-κB複合体を安定化するIκB(I kappa B)の誘導,アラキドン酸代謝の抑制ならびに固有層内のリンパ球アポトーシスの刺激等のいくつかの炎症経路の阻害を介して作用する.
・NF-κBは,腸管上皮再生に重要な役割を演じているため,CSの長期使用は腸管上皮再生に影響を及ぼす

中等度~重症度のIBD患者に対する寛解導入療法の中心的薬剤.

ブデソニド ゼンタコート® レクタブル®(注腸フォーム剤)
・生体内に吸収された後,投与量の90%が肝臓のSチトクロームP450で速やかに代謝され,systemic bioavailabilityは約10%とされている.
・ゼンタコート®は,pH 5.5以下では不溶の腸溶性コーティングが施されたブデソニドの製剤で,主に回腸から上行結腸で徐放される.
・レクタブル®はフォーム製剤であり,他の注腸製剤と異なり,漏れにくい.

チオプリン製剤 thiopurine;TP

難治性および慢性活動性IBD患者,特にステロイド依存例に対する第一選択.
・アジアのIBDでは,投与量は少ない(25~100mg/日).

NUDT15遺伝子産物のcodon 139のアルギニンがシステインに置換されるR139C多型により,酵素活性が著しく低下するシステインホモ(Cys/Cys)では,grade 3以上の白血球減少が100%で認められている.
・nucleoside diphosphate-linked moiety X-type motif 15(NUDT15)は,酸化により傷害を受けたグアニンをDNAから取り除く.
・日本人では約100人に1人の割合で存在するため,事前に遺伝子多型をチェックする必要がある(保険収載済み).

血球成分除去療法

末梢血から白血球(顆粒球・単球ならびに活性化リンパ球)を特別なカラムで取り除くことにより,炎症を制御する.

薬剤を使用しないという点では,安全性が高い.

UC治療に関する顆粒球除去療法(guranulocytapheresis;GCAP)の有効性および安全性について,9つの無作為化試験を含むメタアナリシスが報告されている.

カルシニューリン阻害薬

・細胞内に存在するcyclophilin A(シクロスポリン),FK506-binding protein 12(FKBP12)(タクロリムス)と結合すると構造変化を起こし,Ca2+・カルモジュリンによって活性化されたカルシニューリンに結合し,カルシニューリンの脱リン酸化反応を阻害する.
→転写因子であるnuclear factor of activated T cells(NFAT)の核内移行を阻害し,種々のサイトカイン(TNF-α,IFN-γ,IL-2など)の産生を抑制する.

タクロリムスは,マクロファージにも作用効果を示すことが報告されており,濃度依存性にLPS(lipopolysaccharide)刺激後のマクロファージからのIL-12,TNF-αの産生を抑制する.

タクロリムス(プログラフ®)に,難治性(ステロイド抵抗性,ステロイド依存性)の活動性UC(中等症~重症に限る)の適応.

生物学的製剤

抗TNF-α抗体

1)可溶型TNF-αへの結合・中和

2)膜結合型TNF-αへの結合
 アポトーシスの誘導
 抗体依存性細胞傷害(antibody-dependment cellular cytotoxicity;ADCC)
 補体依存性細胞傷害(complement-dependent cytotoxicity;CDC)

3)TNF-α受容体に結合したTNF-αの解離促進

TNFは,炎症および免疫反応において重要な役割を果たす強力な炎症性サイトカインであり,感染および組織修復に応答して免疫担当細胞から主として産生される.
→過剰な発現は,自己免疫疾患および組織損傷につながる慢性炎症を起こす.

活動性CDおよびUCに有効であることが報告されているが,CD患者の約1/3で一次無効が認められ,多くの場合,重度の腸管狭窄・腸管瘻・腹部膿瘍の合併症が関与している.

反応したCD患者の40~50%に二次無効が出現すると報告されている.
・抗体出現,それに伴う薬物の低トラフ濃度によるところが大きい.

完全ヒトモノクローナルIgG1抗体であるゴリムマブは,薬剤に対する抗体出現が低く,免疫調節薬の併用を必要しないとされる.
・UC患者に投与可能(重症UCで静脈内投与が選択されることが多い)

抗IL-12/23 p40抗体

・抗IL-12/23は,抗原提示細胞(antigen presenting cell;APC)によって産生されるサイトカイン.
・Crohn病腸管内に存在する樹状細胞,マクロファージからのIL-12(p35およびp40サブユニットからなる)およびIL-23(IL-12 p40サブユニットおよびp19サブユニットからなる)の産生は,疾患活動性に関わらず増強している.

ウステキヌマブ
完全ヒトIgG1kモノクローナル抗体であり,T細胞・ナチュラルキラー細胞上のこれらの2つのサイトカイン共通のp40サブユニットを介して受容体を阻害することで,IL-12およびIL-23によるシグナルをブロックする.

抗接着分子抗体製剤

ベドリズマブ
・腸管選択的作用メカニズムをもたらすT細胞上のα4β7 integrinを標的とする抗体製剤.
・脳リンパ球輸送に関与するα4β1 integrinに結合するナタリズマブより進行性多巣性白質脳症のリスクが低いと考えられている.
・抗TNF-α抗体製剤に治療抵抗性の患者に対する治療効果が期待されている.
・作用効果発現には少し時間が必要であるため,疾患活動性の高い患者に対しては,ステロイド,カルシニューリン阻害薬との併用が寛解導入時に必要かもしれない.
・腸管特異的に作用するため,合併症は少ないと考えられている.
・0.1%以下であるが,クロストリジウムとサイトメガロウイルス感染が発生している.
・活動性CD患者に対してベドリズマブの使用が可能となった.

JAK阻害薬

JAKはサイトカイン受容体を介して,種々のサイトカインシグナル伝達経路において重要な役割を果たす.
・JAK1/2/3およびチロキンキナーゼ(tyrosine kinase;TYK)2の異なる組み合わせが,炎症性サイトカインのシグナル伝達に関与している.
・JAK kinaseはIL-2,IL-7,IL-15,IL-21,IL-6,IL-13,IFN-γ,IL-22,IL-12,IL-23ならびにIL-5などのサイトカインのシグナル伝達に関与している.

既存治療と異なる作用機序を有し,小分子化合物のため免疫原性もなく,今後の重要な選択肢の1つとなる.
症例の選択や長期投与の安全性などに関しては,今後の検討が必要.

トファシチニブ
・JAK1およびJAK3を主として阻害する.
・中等度~重度のUC患者における2つの第3相試験が行われ,寛解導入・寛解維持における有効性を示された.→保険適用
・CD患者に対しては第Ⅱ相試験で有効性は確認されていない.

フィルゴチニブ
ウパダチニブ
JAK1に対する選択性をより高めている.

タイトルとURLをコピーしました