伝染性単核球症,伝染性単核症 infectious mononucleosis;IM

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なすび医学ノート

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Epstein-Barr(EB)ウイルスの初感染によって起こる急性熱性疾患.発熱,咽頭扁桃炎,リンパ節腫脹を三徴とする.

EBウイルスに対する免疫反応の強い個体,特に青年期以降に初感染を受けた場合に末梢血中の異型リンパ球の出現を伴って発熱,リンパ節腫脹,肝脾腫などの症状が発症する.

サイトメガロウイルス,ヒトヘルペスウイルス-6による初感染でも同様の症状が出現することがあり,伝染性単核症様症候群と呼ばれる.

予後良好な疾患と考えられていたが,ウイルス関連血球貪食症候群(virus-associated hemophagocytic syndrome;VAHS)を合併したり,遷延性肝炎や慢性活動性EBV感染症や,稀ではあるが致死性伝染性単核症やXLP(X-linked lymphoproliferative syndrome)を発症するなど,予後が悪い複雑な病態を示すことがわかってきた.

疫学

EBウイルスは,25歳以上ではほぼ100%のヒトが感染している普遍的なウイルスである.

成人発症は比較的まれであり,成人の咽頭炎の原因の2%未満に過ぎず,大半は以前にEBVに暴露しているためこの感染症にかかりにくい.

EBVは,健常者の咽頭粘液からも 10~20%の頻度で検出される.

本邦では,3歳までに90%以上が初感染を受けるが,そのほとんどが不顕性感染に終わる.

初感染が学童期以降の場合に,伝染性単核球症を発症する確率が高くなるため,学童期から青年期での発症が多い.

原因

感染経路

EBVはIM罹患後中咽頭より最大18カ月間持続的に放出されるほか,数十年の間にわたり断続的に中咽頭から放出される可能性がある.

EBウイルス保有者の唾液などの飛沫感染によって伝播する.

子宮頸部の上皮細胞や男性の精液などからもEBVが検出されることから,性行為によっても感染することが知られ,母子・兄弟.異性間で伝染することに留意する必要がある.

病態

飛沫感染で体内に侵入したウイルスは,咽頭粘膜上皮細胞やリンパ組織で増殖し,Bリンパ球を介して全身に波及する.

感染した Bリンパ球は増殖能力を獲得し,免疫グロブリンを産生したり,Tリンパ球を活性化して末梢血中の反応性異型リンパ球を増加させるなど免疫反応の異常を伴う.

臨床経過

成人であっても,発熱・咽頭扁桃炎・リンパ節腫脹があり,肝障害とともに発疹を伴う場合,伝染性単核球症を否定しておく

潜伏期は 4~14日.
発熱,頭痛,全身倦怠感,食欲不振など,感冒様症状で発症する.

抗生物質に反応しない発熱(高熱が多い)が1~2週間持続し,全身の系統的リンパ節の腫脹,咽頭の発赤,扁桃の腫脹,白苔(偽膜),結膜の充血などがみられる.

本症の一部では重篤な症状を呈し,死に至る致死性伝染性単核症,血球貪食症候群を合併するもの,繰り返しあるいは持続的に発熱,発疹などが出現しリンパ腫へと進行する可能性の高い慢性活動性EBウイルス感染症などの特殊な経過をたどる症例が少数ながら存在する.

咽頭・扁桃所見は7~10日間で軽快し,GOT・GPT上昇も数ヶ月以内に自然軽快する.

リンパ節腫脹

頸部リンパ節腫脹は最も重要な所見.

腫脹は全身のリンパ節に及ぶこともあり,軽度の圧痛を伴うことが多い.

扁桃炎

咽頭痛,嚥下困難がみられる.

発赤・腫脹のほか,しばしば白苔や偽膜を認める.

発疹

約10~40%の症例では,経過中に種々の発疹を認める.

一般的皮疹は紅斑丘疹,蕁麻疹,点状紫斑.
・一般的な薬疹や麻疹様の皮疹と区別はできない.

一般に皮疹はアンピシリンまたはアモキシシリンの投与後に発生することが多い.
・実際にはアジスロマイシン,レボフロキサシン,ピペラシリン・タゾバクタム,セファレキシン内服,または抗菌剤の投与なしに生じることも知られる.

発疹が薬剤で誘発されるメカニズムはまだ不明ながら,一過性にウイルス媒介して免疫が調整され,抗菌剤に対する可逆的な遅延型アレルギー反応を引き起こす可能性があると考えられる.
→多くの患者はその後,副作用なしにアモキシシリンまたはアンピシリンを内服することが可能であるとされる.

肝脾腫

肝脾腫が10~50%に認められる.

肝機能の障害が著しい場合には黄疸がみられることもある.

検査所見

末梢血液検査

末梢血の白血球は増加する.
白血球分画中のリンパ球・単球比は 60%以上となり,そのうちの 10~20%以上は異型リンパ球となる.

異型リンパ球(T細胞)の増加が特徴的.
・種々の程度みられ,多いときには50%にも達することがある.
・異型リンパ球の比率は感染の回復とともに減少する.

ときに血小板数減少を伴う.

血液生化学

肝機能異常がほとんどの症例にみられ,AST,ALT,ALP,γ-GTP が上昇する.
ときにビリルビン値の上昇も認められる.

血清学的検査

診断的価値が高い.

EBV関連抗原のうち,virus capsid antigen(VCA),early antigen(EA),Epstein-Barr nuclear antigen(EBNA)に対する抗体価を測定する.

病初期ではすべての抗体が上昇するが,VCA-IgM と EA-IgG は一過性で,1~2カ月で消失する.
・VCA-IgGが持続する場合は慢性活動性EBウイルス感染症も考慮する.
・VCA-IgM抗体陰性例も多いため,定量的PCR法による単核球中や血漿・血清中のEBV-DNA量の測定(多量のウイルスゲノムの証明)も有用.

終生持続するのはEBNA(Epstein-Barr nuclear antigen)抗体
・EBNA抗体が陽性になれば,EBウイルスが潜伏感染の状態になったことが示唆される.

EA-DR抗体はVCA-IgMよりも若干遅れて陽性となり,比較的短期間で陰性化する.

診断

診断の確定にはEBウイルスの抗体価の変動を確認する.

・B細胞以外の細胞(T細胞またはNK細胞)にも感染していないか?
・初感染か,持続感染か,再活性化によるものか?
・免疫不全など基礎疾患が合併しているか?
・潜伏感染におけるウイルスゲノムの発現様式?
・血液中(血球中または血漿・血清中)や髄液中などにどのくらいのウイルスDNA量が認められるか?

EBVのコントロールにはウイルス特異的CTL(cytotoxic T-lymphocyte)が必須であり,このCTL活性のモニタリングが病態の解明に有用.

治療

確立された特異療法はなく,解熱薬や肝庇護薬の投与,輸液などの対症療法が中心となる.

全身症状や肝障害が重い症例に対しては,過剰な免疫反応を抑える目的でステロイドの全身投与を行う場合がある.

伝染性単核症様の症状を繰り返すあるいは持続する場合は,慢性活動性EBウイルス感染症への移行を考え,将来的なリンパ腫などの発生に十分な注意が必要.

無作為対照試験により,acyclovirは無効であることが示されている.

アンピシリン(ABPC)をはじめとするペニシリン系やセフェム系薬物の投与は,高率に発疹などのアレルギー反応を惹起するため禁忌.

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