感染関連糸球体腎炎 infection-related glomerulonephritis;IRGN

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

感染症を病因として発症する糸球体腎炎

広義では,発症時に感染が終息している感染後糸球体腎炎(postinfectious glomerulonephritis;PIGN)も含む.
→溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)が代表

狭義では,感染症が治癒せず継続中の糸球体腎炎.

1)過去30年間で感染症に伴う腎炎の疫学に大きな変化がみられ、最近では小児期の単純で予後良好なAPSGN 例が減少し、合併症を伴う高齢者の感染後腎炎が増加してきた.
2)予後は必ずしも良好ではなく、腎炎発症時に感染症が終息することなく進行中であることが多い.

原因

糖尿病,肝硬変などの基礎疾患を有する悪性腫瘍の術後に,その術後合併症としての各種MRSA感染症(腹腔内膿瘍,術後肺炎など)を呈している症例が多い.

細菌
連鎖球菌,ブドウ球菌,肺炎球菌,肺炎桿菌など

ウイルス
パルボウイルス,サイトメガロウイルス,EB(Epstein-Barr)ウイルス,風疹ウイルス,麻疹ウイルスなど

その他
マイコプラズマ

病態

感染症の持続は腎炎惹起性物質の持続的な供給から,腎炎の遷延,予後悪化につながるものと考えられ,感染症が終息しているか否かの区別は重要

IgA 優位沈着性感染関連糸球体腎炎 IgA dominantinfection related glomerulonephritis;IgAIRGN

糖尿病などの背景疾患を有する高齢者においてブドウ球菌感染症に伴ってみられる IgA の沈着を伴う急性糸球体腎炎

1)原因菌は,MRSA,MSSAを含む黄色ブドウ球菌が多い.
 MRSAによるものの場合,MRSA腎炎と呼ばれる.
2)発症時しばしば急性腎不全を来たしており,重症.

スーパー抗原関連腎炎 superantigen-related nephritis;SARN

MRSAの産生する外毒素(staphylococcal enterotoxins:SEs)がスーパー抗原としてT細胞を活性化し,サイトカインの過剰な産生・放出により,T細胞のみならずB細胞をも活性化し,IgG,IgAのポリクローナルな過剰産生をもたらす結果,免疫複合体の形成を生じ,本腎炎が惹起されるものと推察されている.

症候

急速進行性腎炎症候群かつネフローゼ症候群を呈する場合が過半数を占め,他ネフローゼ症候群,急性腎炎症候群,急速進行性腎炎症候群も呈する.

・MRSA感染後,多くの症例で10週以内(平均5.4 週)に発症する.
・腎障害は発症時すでに高度の腎機能障害に進行している症例も少なくなく,乏尿・無尿,浮腫,高血圧などを認める.
・末期腎不全に至っている場合には,尿毒症症状を呈する.

アナフィラクトイド紫斑が約3割で認められる.
基礎疾患および感染症に起因する各種症状がみられる.

尿検査

1)ほぼ全症例で顕微鏡的血尿を認め,時に肉眼的血尿を呈する場合がある.
2)ネフローゼレベルを含めて種々の程度の蛋白尿がみられ,低蛋白血症による浮腫を呈する場合も少なくない.
3)尿沈渣にて赤血球円柱のみならず,白血球円柱,顆粒円柱やろう様円柱などの各種円柱が認められることが多い.

血液検査

1)炎症反応として,白血球数増加,血小板数増加,赤沈の亢進,血清CRP高値がみられる.
2)低蛋白・アルブミン血症を伴う進行性腎機能低下(血清尿素窒素高値,血清クレアチニン高値)を認めることが多い.
3)免疫学的検査では,血清IgG・IgA値高値(ポリクローナル),IgG型・IgA型免疫複合体高値がみられるものの,血清補体価正常ないし軽度上昇,リウマトイド因子,抗核抗体,抗DNA抗体,抗好中球細胞質抗体,クリオグロブリンは陰性である.
4)末梢血リンパ球サブセットでは,活性型CD4 陽性リンパ球の増加が認められ,TCR-Vβ regionのうち,TCR-Vβ5.1,6.7,8 family陽性細胞の割合が高率である.
5)血清サイトカインでは,IFN-γ,TNF-α,IL-1β,IL-2,IL-6,IL-8,IL-10 などが高値である.

細菌学的検査

MRSAの菌種はコアグラーゼII型である.
産生される毒素は主としてSE-C,SEA,toxic shock syndrome toxin-1(TSST-1)である.

診断

5項目中3項目以上を満たす症例
1)腎炎発症前あるいは発症時における感染症の存在(臨床・検査成績)
2)血清補体価の低下
3)光顕上の管内増殖性・滲出性糸球体腎炎像
4)蛍光抗体上のC3 dominantもしくはcodominant所見
5)電顕上の hump 様の上皮下 deposit の存在

実際にはどのような病態までをIRGNに含めるか不明確で,問題点が多い.
・C3腎症やMPGN,管内増殖を伴うループス腎炎などが感染の有無に関係なく基準を満たしてしまう.

腎生検が実施できない場合には,感染症関連クリオグロブリン血症に伴う糸球体疾患や感染症関連尿細管間質性腎炎などとの臨床上の鑑別診断が容易ではない.

感染症の改善に呼応する腎障害の改善の確認が確定診断となる.

患者の全身状態が悪いことが多く,腎生検の実施が不可能なことがしばしばであり,末梢血リンパ球のTCRの拘束性の確認など,より簡便かつ安全な診断法の開発が望まれる.

腎病理

光顕・電顕所見はPSAGNに類似し,好中球浸潤を伴う管内増殖像を呈し,上皮下にhumpもみられる.

蛍光抗体法は,C3の他にIgAの強い沈着を伴う.

治療

感染症の鎮静化

感受性抗菌薬を十分に使用すると共に,膿瘍・疣贅ならびにカテーテル等感染巣が明らかな場合,ドレナージ・切除・カテーテル抜去など外科的な処置も併用して,感染症を根治する.

腎代替療法

約20%の症例が末期腎不全に至り,その場合は透析療法を施行する.

タイトルとURLをコピーしました