感染に対する生体防御機構

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

好中球 neutrophil

細菌や真菌などの細胞外増殖菌に対する生体防御の中心的役割を担う.

サイトカインの産生やneutrophil extracellular traps(NETs)の放出,アポトーシスなどを介して,種々の炎症反応の進展や終息にも深く関与している.

好中球は末梢血液中の大部分を占める免疫担当細胞で,正常時には1 日当たり約10億個/kg が骨髄で産生される.

循環血液中の好中球は,感染のない生理的な状況下では血管内皮細胞とは接触することなく,6~8時間で網内系に戻り,処理される.
→炎症時には,好中球はさまざまな接着分子を介して血管内皮上をローリングし,強固な接着を経て,組織に遊走する。組織に移行した好中球の寿命は2~3 倍に延長される.
→感染症の制御に有利である一方,局所の炎症遷延につながるリスクともなる.

好中球の細胞表面にはそれぞれを感知するToll様受容体が存在する.
→病原体関連分子パターンを検出することで,侵入する微生物を識別する.
・Toll様受容体2(TLR-2)はグラム陽性菌を認識.
・TLR-4はリポ多糖(LPS)のlipid A成分と結合することでグラム陰性菌を特定する.
→これらの受容体に結合するリガンドは,好中球のサイトカイン産生,NADPHオキシダーゼの刺激を介して活性酸素の生成および食作用を増加させる.

食細胞

細菌感染症が起こると感染部位に最初に好中球が遊走・集積し,活発に病原菌を貪食し,活性酸素や殺菌物質を産生する.

接着能

感染病巣などの炎症部位への好中球の動員には,まず好中球と血管内皮細胞表面のそれぞれに発現する接着分子を介した接着が必要.
・好中球の循環血液中から血管外への遊出の過程には,好中球のインテグリン(CD11b/CD18)の発現と,インテグリンを介した血管内皮細胞の接着分子(ICAM-1など)との結合が必須.

遊走能

細菌由来のペプチド(N-Formyl-Met-Leu-Phe;FMLP)や補体成分(C5a),interleukin-8(IL-8)などの遊走因子に向かって移動する.

貪食能

好中球やマクロファージなどの食細胞が,細菌や真菌などの異物を取り込む.
・好中球の細胞表面に存在するFc受容体(FcγR)や補体受容体(CR1,CR3)が,オプソニン因子(IgGや補体成分など)と結合した細菌を認識し,貪食反応が開始される.

殺菌能(細胞内)

1)IgGオプソニン化された菌がFcγ受容体に結合すると,Fcγ受容体のクラスタリングやチロシンのリン酸化が起こり,結合したキナーゼ類が活性化されて貪食作用が進行し,菌を内部に取り込んだ食胞(ファゴソーム)が形成される.
2)食胞内では,酸性化とNADPHオキシダーゼにより活性酸素が衛生される.
3)食胞内に放出された活性酸素は,不均化反応により過酸化水素(H2O2)となり,ミエロペルオキシダーゼ(MPO)などを含むリソソームとの融合(ファゴリソソーム形成)の結果生成される次亜塩素酸(HOCl)が菌に対して,強い殺菌作用を示す.

neutrophil extracellular traps;NETs 細胞外殺菌

能動的に細胞内の抗菌蛋白やDNA線維を細胞外に放出することで効率良く侵入微生物を殺菌する自然免疫機構

細胞内顆粒タンパク質(顆粒球エラスターゼやMPOなど)と結合したクロマチンを含んだ糸状の物質を細胞外に放出する.

NETs は活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)やヒストンなどのダメージ関連分子パターン(damage-associated molecular patterns;DAMPs)を放出して,周囲の細胞を傷害し,傷害された細胞由来のDAMPs が好中球に作用して更なるNETs を誘導する悪循環病態が形成される.

生体内ではNETs の形成と処理は厳格に制御されているが,NETs の過剰産生や処理能力の低下が生じると,組織障害の増悪,遷延化につながる.
→細胞外のNETs成分が自己抗原,免疫賦活因子として自己免疫疾患発症のトリガーとなる.

NETs は刺激などの違いにより異なる形態をとり,細胞溶解型のsuicidal NETs と,細胞形態を保持したまま抗菌蛋白を搭載したDNA成分を放出するvital NETs に大別される.

Suicidal NETs

好中球活性化から数時間程度で細胞死を遂げながら形成されるため,NETosisとも呼ばれ,クロマチンの脱凝縮,核膜の崩壊,細胞膜の破綻を特徴とし,形態学的にはnecrosis を呈する.

刺激因子として,細菌や真菌などの微生物,プロテインキナーゼC 活性化作用を持つphorbol 12-myristate 13-acetate(PMA),免疫複合体(immune complex:IC),尿酸やシュウ酸カルシウム結晶,ヒストンやhigh-mobility group box 1(HMGB1)といったDAMPs などがあり,それぞれが特異的な受容体や内部シグナルを介してNETs 形成に至る.

内部シグナルの多くはROS の活性化を介して細胞質のpeptidylarginine deiminase( PAD) 4 を活性化させ,DNA を巻き付けているヒストン蛋白H3 尾部のアルギニンをシトルリン化させることでクロマチンの脱凝縮を引き起こす.

活性化したneutrophil elastase(NE)やmyeloperoxidase(MPO)により核膜・細胞膜が破綻し,脱凝縮したクロマチン成分や抗菌蛋白が細胞外に放出される.

vital NETs

刺激後数分で形成され,lipopolysaccharide(LPS)による血小板上のToll-like receptor (TLR)4を介した刺激や,グラム陽性球菌によるTLR2 や補体受容体を介した直接的な刺激により,好中球核内のDNA 成分を含む小胞が形成され,小胞が細胞膜側へ移行して細胞膜と癒合することで小胞内のDNA 成分が放出される.

補体の活性化

初期の自然免疫応答のおいて不可欠

オプソニン化

病原菌のオプソニン化を促進し,マクロファージおよび好中球による微生物の貪食作用を促進する.
・オプソニン化=微生物などの抗原に抗体や補体が結合することにより抗原が食細胞に取り込まれやすくなる現象.

溶菌やメディエーター形成

膜侵襲複合体(C5b-C9)を形成して病原体を溶菌したり,好中球の遊走や走化性を導くメディエーター(C3a,C5a)もそのカスケード反応過程で形成される.

タイトルとURLをコピーしました