IgG4関連腎臓病 IgG4-related kidney disease

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なすび医学ノート

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○全身の諸臓器(膵臓,肝臓,胆囊,骨髄,腎臓,後腹膜など)に,IgG4陽性形質細胞が浸潤し臓器障害をきたすIgG4関連疾患が近年注目されている.
 自己免疫性膵炎,Mikulicz病,後腹膜線維症,縦隔線維症,硬化性胆管炎,Riedel甲状腺炎,間質性腎炎,前立腺炎,下垂体炎など全身に及ぶ。

○IgG4関連疾患における腎病変(IgG4関連腎臓病)は,尿異常(蛋白尿,血尿)を呈することは少なく,腎機能低下や腎腫瘤を契機に発見されることが多い.

○CTは診断に有用で,びまん性腫大,腎実質の多発性造影不良域,単発性腎腫瘤,腎盂壁肥厚などの所見が診断に役立つ.

病態

○腎病変としては間質性腎炎が多く認められ,膜性腎症といった病変も報告されている.

○CD4ないしCD8陽性のTリンパ球とIgG4陽性の形質細胞の腎間質への浸潤と線維化が主体であると報告されている。

○後腹膜線維症も生じることが知られ,これに伴い水腎症をきたす.

ANCA関連血管炎とのオーバーラップ

○合併した症例の報告あり.

○ANCA関連血管炎ではANCAの自己抗体サブクラスとしてIgG1とIgG4の抗体価が高いとの報告もある.

Predominance of IgG1 and IgG4 subclasses of anti-neutrophil cytoplasmic autoantibodies (ANCA) in patients with Wegener's granulomatosis and clinically related disorders - PubMed
In view of the supposed hypersensitivity, the elevated levels of IgE, and the occurrence of eosinophilia reported in Wegener's granulomatosis and related condit...

○ANCAが上昇しても血管炎を伴わないケースもある.

○大動脈の外膜周囲炎の炎症が腎動脈へ連続的に波及して,腎臓内に血管炎が生じる症例も存在する.
→このような病態ではANCA陽性例が多いと考えられている.

症候

血液検査

○約半数に補体値の低下がみられる.
 発症時に低補体値を呈していた症例は,ステロイド治療で補体値は正常域に戻るが,再燃時にまた低補体値を示すことが経験され,再燃のマーカーとして血清補体値の有用性が示唆されている.

○ANCA陽性例も散見される.

画像評価

○腫瘤を形成する特徴がある.
○超音波で腎臓腫大としてとらえられることがある.

腹部造影CT

○多発性の腎実質造影不良域としてとらえられる場合が典型的.鑑別としては,腎盂腎炎や腎梗塞があげられる.

○びまん性の腎腫大や,単発の腎腫瘤形成も認められる.

ガリウムシンチグラフィー

○IgG4関連疾患の侵襲臓器を知る上で重要.

診断

診断には,以下の3つ条件を満たすことが必要である.

①単一または複数臓器に特徴的なびまん性あるいは限局性腫大,腫瘤,結節,肥厚性病変を形成する.
②高IgG4血症(135 mg/dL 以上).
③組織所見で著明なリンパ球,形質細胞の浸潤と線維化を認め,IgG4陽性形質細胞浸潤が高比率(IgG4/IgG 陽性細胞比40% 以上かつ10/hpf)である.

付記

1.IgG4関連腎臓病は,腎実質病変,腎盂病変を対象とする.

2.①の尿所見には蛋白尿,血尿のほかにNAG高値,β2ミクログロブリン高値,α1ミクログロブリン高値を含む.

3.②高IgG血症,低補体血症,高IgE血症の少なくともどれか1つを認める.

4.③の鑑別すべき既知の疾患には全身性エリテマトーデス(SLE),血管炎(Churg-Strauss症候群,Wegener肉芽腫症),クリオグロブリン血症があげられる.ただし,診断基準を満たした場合でも完全にIgG4関連疾患が否定されるわけではなく,非典型例では血清IgG4濃度を測定することが望ましい.

5.④の自己免疫性膵炎は,過去に報告された診断基準に基づいて診断される.

6.⑥の④以外のIgG4関連疾患を示唆する所見として,胆管病変(硬化性胆管炎),肺病変(間質性肺炎,炎症性偽腫瘍),後腹膜病変(後腹膜線維症),大動脈(周囲)病変(炎症性大動脈瘤),リンパ節病変(肺門・縦隔リンパ節腫大),涙腺・唾液腺病変(慢性硬化性涙腺炎,慢性硬化性唾液腺炎),肝臓病変(炎症性偽腫瘍)がある.

7.⑦腎に特徴的な画像所見がある(原則として造影CTで評価するが,造影剤使用可能かどうかは腎機能を十分に配慮して決める)
 a.腎実質の多発性造影不良域
 b.びまん性の腎腫大
 c.単発性腎腫瘤(hypovascular)
 d.内腔不整を伴わない腎盂壁の肥厚性病変

8.⑩類似の画像所見を呈し除外すべき疾患として,悪性リンパ腫,腎癌(尿路上皮癌など),腎梗塞,腎盂腎炎の除外が必要である.
 特に悪性腫瘍との鑑別には細心の注意を払う(稀にWegener肉芽腫症,サルコイドーシス,癌の転移などでも類似の画像を呈することがある)

9.⑫腎尿細管間質に特徴的な組織所見がある.
a.著明なリンパ球と形質細胞の浸潤(ただしIgG4陽性形質細胞はIgG4/IgG陽性細胞比40%以上あるいは10/hpfを超える)
b.浸潤細胞を取り囲む特徴的な線維化
c.その他の役立つ所見:
・肯定的な所見:腎被膜を越える病変,好酸球浸潤,境界明瞭な病変,高度の線維化
・否定的な所見:壊死性血管炎,肉芽腫性病変,好中球浸潤,高度の尿細管炎

腎病理

○組織は,主に尿細管間質性腎炎の形態をとることが多く,IgG4 陽性形質細胞の浸潤と線維化を認め,花筵(かえん)状線維化と表現される.

○病変分布の特徴として,病変が被膜外へ及ぶものが認められることである.一部の症例では,皮質だけでなく,髄質深部へ及ぶこともある.
 病変部と非病変部の境界が非常に明瞭である点も特徴.

○浸潤細胞は,リンパ球と形質細胞.リンパ球はCD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞の浸潤が主体であり,両者ではCD4陽性T細胞が優位.
 これに加えて,比較的多数の制御性T細胞の浸潤が認められることが特徴.
 好酸球浸潤も認められるが,好中球浸潤はほとんどない.

○線維化は非常に特徴的な所見.花筵状線維化(storiform fibrosis),硬化性線維化(sclerosing fibrosis),線維性硬化(fibrosclerosis)などと呼ばれている.
 様々な方向に線維が走行し,ところどころ渦巻き状となり,独特な模様の線維化となる.

○確定診断には,免疫染色にてIgG4陽性形質細胞がIgG4/IgG陽性細胞比40%以上,あるいは10/HPF以上存在することが必要.

治療

○ステロイドに速やかに反応して改善する。
・初期投与量を経口プレドニゾロン 0.6mg/kg/dayで開始し,2週間ごとに10%ずつ漸減,維持量としてPSL 10mg/dayを最低3ヶ月維持する治療法が提案されている.
・ステロイド治療中であっても,ステロイドの減量や休止により再燃することがよくみられる.腎臓以外の臓器の障害として再燃することもあるが,再燃時であっても,ステロイドは奏功することが多い.

○腎機能正常例では自然軽快もありうるが,腎機能低下が進行するとステロイドでも完全に回復しないことがあるので,注意深い経過観察が必要.

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