特発性肺線維症 idiopathic pulmonary fibrosis;IPF

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なすび医学ノート

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図表は下記の文献より引用
日内会誌2018;107:1028~1034(pdf)

 特発性肺線維症は,慢性かつ進行性の経過をたどり,高度な線維化が進行して不可逆性の蜂巣肺形成を来たす原因不明の肺疾患である.
 特発性間質性肺炎の中で最も頻度が高く,かつ予後不良.
 多くは50歳以降に発症し,肺に不可逆的に進行する線維化を来たし,呼吸機能が低下して致死的になる.
 画像所見及び病理所見では,IPFに特徴的な通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia:UIP)パターンが 認められる.

疫学

 我が国のデータでは,IPFの発症率は10 万人対2.23 人, 有病率は10 万人対10.0 人であった.
 我が国におけるIPF患者数は,少なくとも約1万数千人であることが予想されている.

予後

 我が国のデータでは,IPFの生存期間中央値は35カ月であり,悪性腫瘍に準じて予後は極めて不良.
 急性増悪と呼ばれる急激な病態の悪化により,呼吸不全が急速に進行し,予後不良となる場合がある.
 死亡原因の40%は急性増悪,24%は呼吸不全,11%が肺癌と報告されている.

病態

 IPFにおける肺の線維化は,各種の刺激により上皮細胞傷害が引き起こされ,さまざまな要因が重なり合って過剰な組織修復が進行し,肺の線維化まで進展するという考え方が主流.

症候

症状

・慢性(3カ月以上)の発症経過を来たす.
→高齢者の慢性経過の特発性間質性肺炎を診た場合,まずIPFを鑑別!
・特徴的な臨床症状として,乾性咳嗽,労作時呼吸困難がある.
 Modified Medical Research Council(mMRC)により,労作時呼吸困難の程度を把握することが可能.

身体所見

・捻髪音 fine crackles
 IPF患者の90%前後に背側肺底部が聴取される.
→初診時には必ず背側肺底部も聴診するように心がける!
・ばち指

血液検査

 KL-6(Krebs von den Lungen-6),SP(surfactant protein)-A,SP-D が間質性肺炎の血清マーカーとして臨床応用されている.
 これらの血清マーカーはIPFに限らず,特発性間質性肺炎において高い陽性率を示すため,IPFを疑うきっかけに有用.

呼吸機能検査,運動耐容能検査

・一般的に肺活量や全肺気量の減少等の拘束性肺障害が認められる.
・肺拡散能(DLco)は低下することが多く,通常,DLcoの低下は肺活量や全肺気量の減少よりも先に認められる.
・ IPFの早期症例においても,労作時の低酸素血症を認めることがある.
・6分間歩行試験はパルスオキシメーターを装着して施行できる簡便な心肺運動機能検査であり,重症度判定に用いられる.

画像検査

■多列検出器型CT(multidetector computed tomography:MDCT)
・0.5 mm~1 mm厚の連続スライスが全肺で得られる.
①胸膜直下,肺底部優位な分布
②網状影
→胸膜直下に多層性に配列する,明瞭で比較的壁の厚い囊胞の集合であり,連続的または斑状に分布する.
③蜂巣肺(牽引性気管支拡張の有無を問わず)
④inconsistent with UIP patternの7 つの項目がない
→4つの項目を全て満たすものをUIP pattern,そのうち蜂巣肺がないものをpossible UIP patternと分類する.

診断

1)間質性肺炎であることを確認し,原因の特定できる間質性肺疾患を除外する.
2)IPFとIPF以外の特発性間質性肺炎を鑑別→HRCTによる画像診断
・UIPパターンが認められた場合には,病理組織学的検索を行わずに“臨床的IPF”と診断できる.
・HRCT所見がpossible UIPパターンあるいはinconsistent with UIPパターンの場合には,患者のリスクを勘案のうえ,胸腔鏡下肺生検を可能な限り施行する.
3)その後,診断に精通した呼吸器専門医,画像診断医,病理診断医による多面的集学的検討(multidisciplinary discussion:MDD)を行い,どの病型に最も合致するか診断する.

治療

 本邦での診断後の平均余命が5~6年程度と報告され,悪性腫瘍に匹敵する予後の悪さにもかかわらず,推奨すべき薬物治療はほとんど存在しなかった.
 ステロイドや免疫抑制薬が「暫定的な推奨」に位置づけられていたが,近年はそれらが逆に予後を悪化させるというエビデンスが蓄積され,推奨されない治療となった.
 一方,ピルフェニドン,ニンテダニブなどの抗線維化薬が科学的検証試験を経て市場に導入され,新規治療薬として用いられ始め,治療のパラダイムは急速に変化している.
 抗線維化薬は高額な薬剤であるために,難病医療費助成申請を検討する.

ステロイド+免疫抑制薬 (現在は否定的)

 かつては,IPFは間質に発生した慢性炎症に起因し,その結果として,線維化が惹起されると考えられていた.
 線維化予防を目的としてステロイド+免疫抑制薬が臨床の現場で用いられてきたが,近年では,逆にこれらの治療が予後を悪化させるというエビデンスが蓄積され,現在では国内外のガイドラインにおいて,否定的な見解になっている.

ピルフェニドン

 正確な作用機序は不明であるが,抗線維活性のみならず,抗炎症作用等の多様な活性を持つ経口薬.
 本邦における第Ⅱ相及びⅢ相臨床試験で肺活量の低下を抑制することが明らかにされたために,世界初のIPFに対する抗線維化薬として,世界に先駆けて2008 年に認可された.
 ピルフェニドンは1回200 mg/1日3 回から開始し,1 回600 mg/1 日3 回まで増量し,継続内服する.
 主な有害事象として,胃不快感,食欲不振,光線過敏症があり,有効性と有害事象とのバランスを見極めながら治療する必要がある.

ニンテタニブ

 血小板由来増殖因子受容体(platelet-derived growth factor receptor:PDGFR),線維芽細胞増殖因子受容体(fibroblast growth factor receptor:FGFR),血管内皮増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor receptor:VEGFR)の各受容体において,アデノシン5’-三リン酸(adenosine 5’ triphosphate:ATP)結合ポケットを占拠する低分子トリプルチロシンキナーゼ阻害薬.
 線維芽細胞の増殖,遊走及び形質転換に関わるシグナル伝達を阻害することで,肺線維化の進行を抑制することが期待されている.
 第II相臨床試験(TOMORROW試験),2 つの第III相臨床試験(INPLSUSIS-1,INPLSUSIS-2)が行われ,いずれも呼吸機能の抑制効果を認め,統合解析では,ニンテダニブ群で急性増悪の抑制,QOL(quality of life)の改善を認めた.
 主な有害事象としては,下痢,悪心・嘔吐,肝障害が挙げられる.
 ニンテダニブは150 mg/1日2 回から開始し,下痢等の毒性が出現した際には200 mg/日に減量あるいは休薬し,対症療法を行う.

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