低体温症 hypothermia

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なすび医学ノート

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深部体温<35℃
環境と生体の熱産生や放出とのバランスの破綻によって深部体温が低下した状態.

おすすめ

日内会誌2019 108(12) p2443-2453

分類

偶発性低体温症:環境温度のために偶発的に発生した低体温症

二次性低体温症:体温調節の異常をきたす病態がある場合.

低体温療法(体温管理療法):心停止後症候群の治療として体温を人為的に下げる場合.

医原性低体温症:本来は低体温ではなかった患者が,医原性に体温低下をきたすこと.

原因

体温調節機能の障害

中枢性障害(拒食症,脳血管障害,外傷,代謝障害,変性疾患,薬物・毒物)

末梢性障害(急性脊髄障害,神経疾患)

代謝性障害(ケトアシドーシス,下垂体障害,乳酸アシドーシス)

栄養障害(過度な運動,低血糖,低栄養)

熱放出の増加

皮膚疾患(熱傷,薬物治療)

医原性(冷輸液,低温環境曝露,保温不足)

その他(がん,心肺疾患,重篤な感染,多発外傷,ショック)

病態

シバリング

低温環境曝露によって深部体温が低下

視床下部の体温中枢の反応と皮膚からの低温刺激

戦慄(shivering:シバリング)と末梢血管収縮

筋活動が増え,代謝が亢進し,熱産生

シバリングは,軽度低体温(HTⅠ)において発生するが,中等度以上の低体温(HTⅡ・HTⅢ)では消失する.

不整脈

体温が32℃以下(HTⅡ~)となると,心電図にJ-waveが出現し,心室細動や心室頻拍が容易に出現するようになる.
→32℃以下の患者では,心電図モニターを行いながら,できる限り刺激を避け,愛護的に患者に接する.

CT検査のような移動を伴う検査や中心静脈路確保時のガイドワイヤー等による心筋刺激は,心室細動や心室頻拍を惹起する.
体温>32℃に復温し,心電図のJ-waveが消失してから行うことが原則

診断

感染症初期との鑑別はする.

深部体温の測定

体温測定は,通常,腋窩温とはじめとした体表温を計測するが,環境障害を考慮する場合には深部体温測定が必須.
・通常の腋窩温計では,35℃未満や41℃以上の計測ができないものもみられる.

本邦における深部体温測定は,直腸温や膀胱温計測が一般的.

体幹部を露出するため,暖かい環境において行う必要がある.

体温回復のために保温を行う際には,真の深部体温より1時間程度,温度上昇が遅れるとされるため,注意.

直腸温測定|体温計を入れたら、そのまま3分間以上測定するのはなぜ? | 看護roo![カンゴルー]

重症度分類

HT Ⅰ
意識あり
シバリングあり
深部体温:32~35℃

HT Ⅱ
意識障害あり
シバリングなし
深部体温:28~32℃

HT Ⅲ
昏睡状態
シバリングなし
脈や呼吸あり
深部体温:24~28℃

HT Ⅳ
脈や呼吸なし
深部体温:<24℃

HT Ⅴ
死亡(復温困難)
深部体温:<14℃?

治療

初期対応

シバリングは時間あたり1~3℃の有効な体温上昇を期待できるが,患者にとって不快であり,心血管系へのストレスになるため,積極的な加温や復温を施す.

深部体温>32℃のHT Ⅰでは,病院外で積極的な復温は原則として不要.
・シバリングをしていても,深部体温低下を来たしていない場合,重篤な低体温症を来たす危険は少ない.
・暖かい環境で暖かい衣服等を着用させる.

まずは,暖かい環境に愛護的に移動させる.

患者は仰臥位に保つことが原則
・坐位や立位にすると血圧低下を来たし,失神の原因になるため危険.
・歩行は血流増大と血管拡張とを来たすため,中枢温がさらに低下する可能性がある.
・患者が接するベッドや地面に熱が奪われないように熱を遮断するためのブランケット等を敷く.

濡れた衣服や冷え切った衣服は除去し.それ以上の熱の喪失を防ぐ.
・服を脱がせようとすることによって四肢を動かすことは,重症低体温症では刺激になるため,これを避けるために衣服等は裁断する.

四肢の加温は行ってはならない.
・四肢は,低体温状態で血管が収縮し,血液は冷却されているため,四肢の加温によって血管が拡張し,冷却された血液が体幹に灌流し,心血管系にさらなる刺激をもたらす可能性がある.
・例外として,膝下の下腿や肘から先の前腕を42~45℃の湯につけると(distal limb warming,「足湯」),温められた血液が中枢に戻り,有効な体温上昇になるとされる.

積極的な加温

臨床研究が不十分であり,復温方法に関する明確なエビデンスはない.

電気毛布や水流式のブランケット,ベアハガーTMのような温空気を還流させるブランケット等が使用できる.

腹腔や胸腔洗浄による復温も提案されており,有効とされるが侵襲的でもあり,重症度に応じて考慮する.

循環状態が不良な場合には,体外循環を用いて速やかな復温と循環補助とを行う.

加温輸液や吸入気の加温も行う.

胃洗浄や膀胱洗浄は行われることがあるものの,有効性は低いとされる.

重症度別の管理

HT Ⅰ
暖かい環境と暖かい衣服
温かく甘い飲み物
可能であれば運動

HT Ⅱ
心電図モニター
移動は最小限にして仰臥位安静
刺激を避ける
復温(暖かい環境,温パッド,ブランケット,加温輸液38~42℃)

HT Ⅲ
上記に加え循環状態が不安定な場合,体外循環と呼吸管理

HT Ⅳ
上記に加えCPR(アドレナリン投与は3回まで)

HT Ⅴ

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