下垂体炎 hypophysitis

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

・下垂体炎は単一の病態ではなく,下垂体に慢性炎症が生じた病態の総称.
  原因→原発性と二次性
  主座→前葉炎,漏斗後葉炎,汎下垂炎
  組織像→リンパ球性,肉芽腫,その他
・リンパ球性下垂体炎(前葉炎)は頻度が高く,特徴的な臨床像を呈する.
・IgG4関連全身疾患の一部分症としての下垂体炎が,注目されている.

疫学

・1/900万人/年と稀.
・組織学的には,lymphocytic(68%),granulomatous(20%),xanthomatous(3%),IgG4関連(4%),necrotizing(<1%).

リンパ球性下垂体炎

・MRIで,均一に造影される腫瘤性病変を呈することが多く,中枢性尿崩症を来した例では後葉のT1強調高信号が消失する.
・下垂体腫大は,3病型全体の8-9割,鞍上進展も6-7割にみられる.経時的に軽快・消退するのが特徴的.

リンパ球性下垂体前葉炎  lymphocytic adenohypophysitis;LAH

・一番多い.大多数は女性.
・特に妊娠後期・産褥期に発症し,頭痛,前葉機能障害,視力視野障害(時にDIも)で発症する.
・下垂体の腫大のため,頭痛・視野障害が半数にみられる.
・前葉障害はACTH系障害とTSH系障害が多く,単独欠損も多い.
・高プロラクチン血症は1/3に認める.
・約20~50%に自己免疫疾患(慢性甲状腺炎・自己免疫性副腎炎[Addison病]・悪性貧血・1型糖尿病など)を合併する.
・MRIでは, 前葉(時に茎部も)の対称性腫大と著明な造影効果を認める.
・腫大が軽快と消退し,empty sellaに移行する例もある.

リンパ球性漏斗後葉炎  Lymphocytic Infundibuloneurohypophysitis;LINH

・性差なく,40歳以降に多い.
・原因は明らかなではないが自己抗体の報告がある.
・中枢性尿崩症で発症し,前葉機能は通常保たれる.
・MRIでは,後葉高信号の消失と茎部の限局性肥厚または後葉の腫大を呈する.時に胚細胞性腫瘍,サルコイドーシス,ランゲルハンス細胞組織増加症などと類似する.

リンパ球性汎下垂体炎  lymphocytic panhypophysitis;LPH

・前葉と後葉ともに障害されるが,炎症の波及なのか独立した疾患概念であるのかは不明.
・組織所見,他の自己免疫疾患の合併,抗下垂体抗体の存在,妊娠との関係などから自己免疫機序が考えられている.

二次性下垂体炎

・原因は多彩.
 頭蓋咽頭腫,ラトケ嚢胞,胚細胞性腫瘍,サルコイドーシス,ランゲルハンス細胞組織球増加症,炎症性肉芽腫(真菌症・結核など),周囲組織からの炎症の波及(Tolsa-Hunt症候群・肥厚性硬膜炎など),IgG4関連疾患などが二次性下垂体炎の原因となる.
・頭痛,前葉機能障害,中枢性尿崩症,視障害などを呈し,特徴的所見を欠くことが多い.
・MRIでは,原疾患が明らかな場合を除き,特徴的所見を欠くことが多い.

IgG4関連下垂体炎

・中高年男性に多く,汎下垂体炎(前葉障害と中枢性尿崩症)を呈する.
・IgG4関連全身疾患は後腹膜線維症,Mikulicz病,唾液性疾患,自己免疫性膵炎,Riedel型甲状腺炎,間質性肺炎など.
・病理では,IgG4陽性形質細胞を多数認める.
・茎部を含む腫瘤性病変が多く,時に周囲の肥厚性硬膜炎や副鼻腔炎を合併する.
・ステロイド治療によく反応する.

病理

・リンパ球性下垂体炎では,主にリンパ球(特にCD4・CD45・CD8陽性T細胞)浸潤,前葉構造の破壊,間質の浮腫と線維化,時にリンパ濾胞の形成を認める.
・肉芽腫性下垂体炎の少なくとも一部は,ラトケ嚢胞が原因の二次性炎症.
・黄色肉芽腫の大多数も頭蓋咽頭腫やラトケ嚢胞に伴い,出現する.
・上皮成分を欠くとトルコ鞍部黄色肉芽腫と診断されるが,これは独立した疾患概念かどうかは不明.
・炎症細胞浸潤や線維化は下垂体炎に共通した所見であり,炎症の時期・ステロイド使用などにより変化するため注意が必要.

診断

詳細は自己免疫性視床下部下垂体炎の診断と治療の手引き(平成21年度改訂)を参照.

治療

・二次性下垂体炎の一部を除き,保存的治療が中心となる.
→発症早期から適切なホルモン補充が必要.
・リンパ球性下垂体炎では,薬理量のステロイド治療が試みられるが,効果は不定.
・Mass effectが著明でステロイドによる治療効果が乏しい場合は,外科治療(経蝶形骨洞的減圧術)も検討されるが,基本的self-limitedな疾患で長期的には自然寛解が期待できる.一方で再発の可能性もある.
・IgG4関連下垂体炎はステロイドが著効する.
・他の二次性下垂体炎は原疾患に応じた治療を行う.

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