低P血症 Hypophosphatemia

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

血清P濃度が2.5mg以下(1.0~2.5mg/dLは軽度~中等度,1.0mg/dL以下は重度)

入院患者の5~10%にみられるとされる(Pの測定をしないため見逃されていることが多い)

血清Pi濃度は日内変動と食事による影響があるため,早朝空腹時の採血検体で判定する.
・日内変動は,早朝に低く,夕方から夜にかけて高くなる傾向
・食事によりインスリンが分泌されると,血中のPiは細胞内に取り込まれるため,食後には一過性に血清Pi濃度の低下がみられる.

診断の第一歩は低P血症を疑い,Pを測定すること!

原因

細胞外液から細胞内へのリン酸の再分布

リンは細胞外液中に比べて,細胞内に多く含まれているため,細胞内への急速な移行により,血清Pi濃度が著しく低下することがある.

インスリン作用の増大(特に再栄養時)
→再栄養は急激な解糖系の亢進を起こす

急性呼吸性アルカローシス
→解糖系が亢進し,極度の場合は正常者でも1.0mg/dL以下まで低下する

hungry bone syndrome(骨飢餓)

敗血症(特にグラム陰性桿菌)

カテコラミン過剰

カルシトニン投与

小腸での吸収低下

摂取不良、低栄養、菜食主義
・高度のP摂取低下(100mg/day以下)が長期化すると腸からPが分泌される(150~200mg/day)

金属イオンとの結合(特にCa・Mg・Alを含む制酸薬の服用)
→腸内でPと結合して,吸収を抑制する

脂肪便,慢性の下痢

VitD欠乏,VitD作用不全(VitD依存性くる病)

アルコール多飲者

尿中P排泄の増加

副甲状腺機能亢進症(内分泌疾患で最も頻度が高い)

原発性副甲状腺機能亢進症 primary hyperparathyroidism;PHPT
副甲状腺の腫瘍化または過形成により,副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)が自律的...

低P血症性くる病・骨軟化症

骨軟化症 osteomalacia,くる病 rickets
骨基質の石灰化障害により骨石灰化などの低下を来す全身性の代謝性骨疾患成長軟骨帯閉鎖以前に発症するものは...

Vit.D欠乏または作用不足→PTH分泌↑

Fanconi症候群→Na-P共輸送体の障害

浸透圧利尿

P喪失性腎症→Na-P共輸送体の障害

Cushing症候群→糖質コルチコイドの過剰は腎尿細管でのP再吸収を抑制

薬剤(ステロイド,シスプラチン,サイクロスポリン,制酸剤)

フェジン:近位尿細管のP再吸収を阻害

症状

1)症状の発現は低P血症の程度と発症速度に関連する.
2)通常は1mg/dL以下と高度になると症状が発現する.
・特にP欠乏を伴う場合,細胞内への移行のみでは症状はない.
3)症状は細胞内P欠乏に伴うリン酸化の障害などによる各種の細胞機能障害が中心となる.
・特に細胞内ATPレベル低下による細胞機能低下と赤血球2,3-DPGレベル低下(Hb酸素結合能増加)による組織での酸素放出低下
→末梢組織の低酸素状態

脳→虚血による脳症,代謝性脳症,イライラ・知覚異常,意識混濁・錯乱・昏睡

心臓→収縮力低下,心不全

肺→横隔膜筋力低下,呼吸不全

骨格筋・平滑筋→近位筋の脱力,嚥下障害・イレウス,横紋筋融解症

血液→赤血球変形能低下・溶血,白血球貪食能/走化性低下,血小板凝集低下・血小板減少症

長期化した場合

血清Pi濃度が2mg/dL前後の状態が慢性的に続く場合は,下肢の疼痛や筋力低下が自覚症状として現れ,骨軟化症が潜在性に進行する.

骨→骨吸収の増加,くる病・骨軟化症(重症化すると胸郭の変形や腰椎or大腿骨近位部の脆弱性骨折を生じる)
腎臓→糸球体濾過量低下,HCO3-再吸収減少,滴定酸排泄低下,尿酸排泄増加,Mg排泄増加

検査所見

・低Mg血症,尿中Mg排泄亢進
・凝固異常,血小板減少,溶血性貧血,白血球貪食能低下

診断

1)中等度の低P血症では症状が少ないため,低P血症を思いつき,血清P濃度を測定することから始める.
2)血清P濃度が低値であった場合は症状の有無と原因を検索する.

一過性の体内のPの移動

過食やブドウ糖の投与等によるインスリン分泌亢進による細胞内へのPの移行および骨飢餓(hungry bone症候群)による骨へのPの移行

リンの腎排泄の評価

最も重要な調節因子は,線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23;FGF23),次に副甲状腺ホルモン(PTH)があげられる.
→いずれも主に近位尿細管に作用し,Pの再吸収を抑制する.

成長ホルモンは近位尿細管に作用し,P再吸収を促進する.

Tmp/GFR:maximal tubular reabsorption of phosphate per glomerular filtration rate,腎尿細管P排泄閾値

モノグラムを使って,血清Pi濃度とTRP(tubular reabsorption of phosphate)値を直線で結んで,Tmp/GFRを求める.
 TRP=1-随時尿中P濃度[mg/dL]×血中SCr[mg/dL]/(血中P濃度[mg/dL]×随時尿中Cr[mg/dL])

Tmp/GFRのモノグラム

成人基準値 2.3~4.3 mg/dL
Tmp/GFRが低下→腎性のP排泄が亢進
Tmp/GFRが低下していない→腸管からのP吸収が低下している可能性がある.

FEPO4:fractional excretion of Pi

FEPO4=Cpi/Ccr
=U-P(mg/dL)×S-Cr(mg/dL)/S-P(mg/dL)×U-Cr(mg/dL)
 5~20%(0.5~0.20)が正常

1)1日尿中P排泄量が100mg/day以下and FEPO4が5%以下の場合は腎臓は正常に応答している.
→細胞内への取り込み増加or腸管からの吸収低下を考える.

2)1日尿中排泄量が100mg/day以上or FEPO4が5%以上の場合は腎からのP喪失が示唆される.
→副甲状腺機能亢進症or尿細管障害

治療

原因・原疾患への対策

ほとんどの低P血症では原疾患の治療のみで改善することが多い.
→P吸着性制酸薬の中止(Mg,Al,Ca含有制薬),活性型Vit.D3の投与,副甲状腺腫摘出術

Pの補給

1)中等度以上で原因療法しても改善を認めない場合はP補給が必要になる
2)症状を有する高度の場合は必ずP欠乏を伴っているのでP補給が必要
3)腎尿細管障害による慢性的なP喪失がある場合にもP補給が必要

・過剰投与による副作用を避けるために経口投与が優先される.
・補給する場合,血清P濃度・尿中P排泄量を必ずcheck!高P尿症を避ける.

経口的

高P食(高蛋白食:乳製品牛乳やチーズ),P製剤,活性型Vit.D投与(PTHを抑制し,腸管からのP吸収促進)
・最も安全なのは脱脂乳or低脂肪乳
・ダメな場合はP製剤(中性リン酸塩).脱脂乳はP 0.9mg/mLを含有.
・アイソカル®・ジェリーPCF 1つにつき、276mg.
・Pとして2000mg/day以下より開始

経静脈的

1)P欠乏症状を呈するP 1.0mg/dL以下の高度である場合は静脈内投与が必要
2)K2HPO4(コンクライトPなど):1Aに20mLでPは20mEq,Kも20mEq入っている.
3)投与量は100~150mgまでとし、6時間以上時間をかけて投与する.
4)急速な投与は禁忌!
→CaとPが沈着して低Ca血症・腎不全・致死性不整脈を起こすため(投与するときは心電図モニターを)
5)通常は2.5mg/kg/6hr以下の速度投与を開始し,血清P濃度が2mg/dL以上となったら経口へ切り替え

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