低K血症,低カリウム血症 hypokalemia

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

病態

 食事性のカリウム摂取は通常50~100mEq/日.
 摂取したカリウムは尿中から90%以上が排泄され,尿中カリウム排泄率の最小値は全身のカリウム欠乏量と相関し,カリウム欠乏が350mEqを超えると腎臓は尿中への排泄を1~5mEqに減少させることができる.

原因疾患

 低K血症に伴う症状として,便秘,脱力感などの症状の有無を聞く.
 薬剤の服用の既往,甲状腺機能亢進症を伴う場合を念頭に置き,特有の症状の有無を調べる.
 摂食障害に伴う場合,患者自身から摂食障害を申告する場合は少ない.

薬剤性

1)K喪失性利尿薬(チアジド系利尿薬,ループ利尿薬)
2)グリチルリチン製剤(甘草製剤を含む)
3)ステロイド大量投与

偽性アルドステロン症,偽アルドステロン症 pseudoaldosteronism
 狭義には,甘草(licorice)やその主成分であるグリチルリチンを含む医薬品の服用により, 原発性アルドス...

副腎皮質ホルモン産生異常

1)原発性アルドステロン症,特発性アルドステロン症
2)Cushing症候群,Cushing病

尿細管疾患

1)尿細管性アシドーシス(近位型,遠位型)
2)Bartter症候群
3)Gitelman症候群
4)Liddle症候群
5)見かけ上の鉱質コルチコイド過剰症
→遠位尿細管に到達するHCO3-が増加すると,CCD管腔における陰性の荷電が強くなり,カリウム分泌が亢進する.

消化管疾患

1)慢性下痢,吸収障害
→腸管からのK喪失+脱水に伴う二次性アルドステロン症
2)嘔吐(摂食障害の場合もある)
→アルカリ血症によるK細胞内への取り込み&尿中の重炭酸イオン増加によるCCDでのK排泄増加+脱水に伴う二次性アルドステロン症

細胞内への移動

1)TPNまたは経管栄養中
2)インスリンの使用時
3)β交感神経刺激
 β2アドレナリン作動薬
 甲状腺機能中毒症→低K性周期性四肢麻痺
4)家族性周期性四肢麻痺

低Mg血症

Mgは,腎臓の皮質集合管細胞において,尿細管腔側に発現するROMKの細胞側に結合し,Kの排泄を防いでいる.
→低Mg血症によるとK排泄が亢進する.

慢性アルコール摂取

アルコール摂取による内分泌異常と,それに伴う低K血症

アルコールの過剰摂取は,電解質の摂取不足と尿細管障害に伴う電解質排泄の亢進を来すことで,低K血症と低Mg血症をきたす.

アルコール過剰摂取による代謝性アシドーシスの補正を契機に,アドレナリン作用の亢進と呼吸性アルカローシスによる細胞内シフトが起こることで,ますます低K血症が増悪する.

その他

1)悪性高血圧
2)腎血管性高血圧

症候

症状

 高血圧,疲労,筋力低下,神経機能の低下,不安,イライラ,抑うつ,睡眠障害,虚弱,便秘,ドライスキンなどがある.

 低K血症では,細胞膜が過分極して,興奮性膜を有する細胞の機能が低下する.
→横紋筋なら筋力低下,心筋では重大な不整脈,消化管平滑筋ならイレウス

 実際に症状を呈するのは3.0mEq/L以下の場合が多く,重篤な症状は2.5mEq/L以下でしばしばみられる.

1)軽度の低カリウム血症
 若干血圧の上昇や不整脈を引き起こすことがあるが,特に症状がみられないことがしばしばある.

2)中程度の低カリウム血症
 筋力の低下,筋肉痛,痙攣,便秘などの症状を引き起こす.

3)重症な低カリウム血症
 麻痺,自律神経失調,強度の筋肉痙攣などが起こる.
・深刻な低カリウム血症を伴う横紋筋融解症の報告がある. 骨格筋機能の重度の障害からくる呼吸不全は稀なことではない.

身体所見

 腸管運動低下による腸雑音の減少,腱反射の低下などがみられる.

血液検査

■血液化学
 Na,K,Cl,浸透圧,総コレステロール,尿素窒素,Cr,LDH,AST,CPK)

低カリウム腎症,低K腎症 hypokalemic nephropathy
長期的なカリウム欠乏によって惹起される腎障害. ヒトにおいて低カリウム血症が慢性的に持続した場合,近位...

■動脈血ガス分析(pH,PO2,PCO2,HCO3-)
 細胞内にH+が移行し,特に近位尿細管で細胞内がアシドーシスとなることによってアンモニアの産生が亢進し,そのため,アンモニウムが排泄されると同時にHCO3-が吸収され,アルカリに傾きやすい傾向がある.
*低カリウム血症でもアシドーシスになる例外として,尿細管性アシドーシス,腎不全がない糖尿病性ケトアシドーシス,下痢,トルエン中毒がある.

■ホルモン濃度
 血漿レニン活性または濃度,血漿アルドステロン濃度
 ACTH,コルチゾール
 甲状腺機能亢進症が疑われればTSH,Free T3,T4

尿検査

■尿pH,尿糖,比重
■尿生化学(Cr,Na,K,Cl,浸透圧)

TTKG

U-K×S-浸透圧/S-K×U-浸透圧
*「尿浸透圧が血漿浸透圧より高い」かつ「尿中Na≧25mEq/L」が条件

・皮質集合尿細管(CCD)におけるK分泌能力の指標
・CCD細胞を隔てた管腔側と血管側のK濃度の比

低K血症では,2未満であれば腎外排泄,4以上でアルドステロンの作用が増強していることを示す.

心電図

■K値が3mEq/L前後
 T波の平底とU波の増高がある.

■K値が2mEq/L前後
 T波の逆転,STの低下,U波の増高(QT延長にみえる)がある.
 ときに心房性不整脈,洞房ブロック,房室ブロック,心室細動などをみる.
*低K血症を放置すると二次性QT延長症候群からTorsades de Pointes(TdP)を生じることがあるので注意.

診断

尿中K排泄<20mEq/L

K摂取不足
腸管排泄
下痢
甲状腺機能亢進症
家族性周期性四肢麻痺

尿中K排泄≧20mEq/L

血圧上昇

■レニン↓ アルドステロン↑
 原発性アルドステロン症

■レニン↑ アルドステロン↑
 腎血管性高血圧
 レニン産生腫瘍

■レニン↓ アルドステロン↓
 先天性副腎過形成
 Cushing症候群
 Liddle症候群
 AME症候群
 DOC産生腫瘍

血圧正常

■アシドーシス
 遠位尿細管性アシドーシスⅠ型・Ⅱ型
 糖尿病ケトアシドーシス
 アルコール過剰

■アルカローシス
 嘔吐
 利尿薬使用
 Barter症候群
 Gitelman症候群

治療

・致死的な合併症の予防:不整脈,呼吸不全,肝性脳症
・欠乏しているカリウムの補充
・カリウムの喪失を最小限にする
・基礎疾患の治療

病態に応じた治療

■K摂取不足
KCl+K2PO4 (最終的にK 1mEq/Lの上昇に300mEqのKが必要)

■細胞内シフト
原因の是正+K補充(KCl)

■TTKG<2,正常~低血圧,代謝性アルカローシス
・嘔吐,利尿薬,浸透圧利尿,消化液ドレナージ→KCl,Mg補充
・Barter/Gitelman症候群→spironolactone,ACEI/ARB,KCl

■TTKG<2,正常~低血圧,代謝性アシドーシス
・尿細管性アシドーシス:K citrate(クエン酸:ウラリット),KCl
・下痢・トルエン中毒:KCl

■TTKG>4,高血圧
・原因検索→治療,spironolactone,triamterene,ACEI/ARB,KCl

カリウムの補正

・主に経口or静注によるカリウムの補正.
・1日のK投与量の維持量は40mEq程度.
・1日投与量の上限は240mEq,高度のK欠乏が疑われていても1日120mEqまでが無難.

るい痩の程度によるカリウム容量の推定(mEq/kg)

おおまかには男性は 40 mEq/kg,女性は 30 mEq/kg

経口投与

・経口の方が静注よりもゆっくり補正できて安全.
・急性には40~60mEq投与でK 1~1.5mEq/Lの上昇,120~160mEq/Lの上昇でK 2.4~3.5mEq/Lの上昇が期待できる.

■塩化カリウム(経口)
ケーサプライ®600mg(8mEa)
塩化カリウム®(13.4mEq) スローケー®は発売中止
→徐放製剤で4時間以上にわたって徐々にカリウムを放出する.Cl負荷があるのでアシドーシスに傾く.腎不全の時にはアシドーシスがあるので使いにくい.

■グルコン酸カリウム
グルコン酸カリウム細粒®(4mEq/1g)
グルコン酸カリウム錠剤(2.5mEq,5mEq)
 血中濃度は1.5~2.5hrで最大となる.

■L-アスパラギン酸カリウム
アスパラカリウム錠300mg®(1.8mEq)
アスパラカリウム散50%®(2.9mEq/1g)
症状により1回3gまで増量可.
1日0.9g~2.7g(散1.8~5.4g,錠3~9T)

静注投与

・末梢静脈からの投与濃度は最大で40mEq/L以内(血管痛をきたすため)
・中心静脈からの投与濃度は100mEq/L以内とする.
・麻痺や重篤な不整脈が出現しているとき以外は投与速度は20mEq/hrまでとする.
補正例) KCL 20mEq/20cc(1A)+生食500ml.500ml/hrで末梢静脈からの最大投与量.

・KClは細胞外液に分布しやすい.
→Cl感受性代謝性アルカローシス合併症例に有効.
・K2HPO4やK citrate,K gluconateなどの有機酸塩は細胞内液に取り込まれやすい.
→細胞内K欠乏や代謝性アシドーシス例に有効.

Mgの補正

Kを補正する際は,Mgを評価し,必要に応じてMgの補正をすることが重要.

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