副腎機能低下症,副腎不全 hypoadrenalism

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なすび医学ノート

副腎皮質機能低下症,コルチゾール分泌不全,ACTH分泌低下症

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

コルチゾールの作用が低下している状態.

おすすめサイト

間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き(平成30年度改訂) p40
http://www.acromegaly-center.jp/medical/pdf/treatment_guidance.pdf

疫学

原発性の原因疾患は,欧米では自己免疫性が70~90%,結核性が7~20%.
・原発性の罹患率は欧米では100万人当たり30~150人であるが,本邦では自己免疫性は非常に少ない.

病態

日本内科学会雑誌2008;97:702-708
日本内科学会雑誌2008;97:702-708

副腎の異常(原発性:Addison病)

Addison病 Addison's disease
副腎に病変が原発する慢性副腎皮質機能低下症近年は,先天性副腎皮質過形成のように原因遺伝子が同定されてい...

下垂体でのACTH分泌低下,ACTH分泌低下症(二次性)

汎下垂体機能低下症
ACTH単独欠損症
視床下部・下垂体腫瘤性病変(下垂体腺腫・頭蓋咽頭腫など)
家族性CBG(cortisol-binding globulin)欠損症
頭部手術・放射線照射・外傷による下垂体障害
出血・梗塞(Sheehan症候群・下垂体卒中)
感染症
全身性疾患(サルコイドーシスなど)など

免疫チェックポイント阻害薬

免疫関連有害事象(immune-related adverse events;irAEs)が報告されており,内分泌のirAEsとして下垂体機能低下症が報告されている.

抗CTLA-4抗体(約10%),抗PD-1抗体(1%未満),抗PD-L1抗体(1%未満)のいずれにおいても報告されているが,特に抗CTLA-4抗体で頻度が高い.
→主にACTH単独欠損症のパターンを示す.

原発性副腎不全も報告され,頻度は0.7%.

視床下部での分泌低下(三次性)

特発性
ステロイド剤の慢性的な使用下での投与中断
Cushing症候群の治療後など

negative feedbackの反応低下

うつ病
慢性疲労症候群など

相対的副腎不全 Relative adrenal insufficiency

血中コルチゾールは保たれているにも関わらず,炎症反応を制御するには不十分な状態.

視床下部-下垂体-副腎系の疾患, 抑制がある状態では,急性疾患・ストレス時のCortisol需要上昇に追い付かず, 相対的副腎不全を呈する場合がある.

症候

続発性ではグルココルチコイド欠乏.

原発性ではグルココルチコイド欠乏だけではなく,ミネラルコルチコイド欠乏,女性ではアンドロゲン欠乏も合併.
・Addison病では,グルココルチコイドに先行して,ミネラルコルチコイド欠乏が生じるとされている.
・重症ではショックや昏睡となる.
・軽症では食欲不振,嘔気,嘔吐,腹痛,疲労感,発熱などの非特異的症状を呈する.

急性では副腎クリーゼ

慢性的な原発性で,

倦怠感,体力低下,疲労感 86.9%

食欲不振,体重減少 66.3%

消化器症状 63.0%
嘔気・嘔吐,腹痛,便秘,下痢

ACTH高値による皮膚・粘膜の色素沈着
歯肉,関節,手掌の皮溝,爪床,乳輪,手術痕など

精神症状
記銘力低下,抑うつ

眠気

発熱

低血圧 90%

検査

血液検査

電解質異常→低Na血症(64.9%),高K血症(27.8%),高Ca血症
*低Na血症:Na吸収作用のあるコルチゾールやアルドステロンの低下,コルチゾールによるADH分泌抑制作用が解除されSIADH様の病態になる.
*高K血症:アルドステロン欠乏.続発性では認めない

BUN上昇 55%

貧血 40%

白血球分画の異常 30.9%
顆粒球減少,好酸球増加

低血糖 18.5%
感染,発熱,アルコール摂取,飢餓に伴ってしばしば顕在化する.

コレステロール低下
25.9%

診断

コルチゾール分泌低下の診断

*重症の低血糖や末梢血管虚脱がある場合には,副腎不全の可能性を考慮する.

血中コルチゾール値に関しては,約10%の測定誤差を考慮して判断する.

ACTH,コルチゾールの基礎値の測定;朝食前の採血(安静臥床1時間)

健常人では朝6時が最も高く,10~20 μg/dL.
・朝のコルチゾールのカットオフ値を5 μg/dL未満とすると,特異度ほぼ100%,感度36%.
・朝のコルチゾールのカットオフ値を10 μg/dL未満とすると,特異度ほぼ77%,感度62%. 
・朝のコルチゾールが15 μg/dL以上であれば,考えにくい.
・朝の18 μg/dL以上では考えられない.

*前日にコートリル® 10 mg 朝食後1錠,夕食後0.5錠内服していても通常は採血結果に影響しない.

血中ACTHは10pg/mL以下の低値の場合が多いが,一部の症例では血中ACTHは正常ないし軽度高値を示す.
→生物活性の乏しい ACTHが分泌されている可能性がある.

コルチゾール日内変動

朝のコルチゾール:副腎最大機能
昼のコルチゾール:副腎適応能力
夕方のコルチゾール:副腎血糖調節能
夜のコルチゾール:副腎基礎能力

迅速ACTH負荷試験 

副腎のコルチゾール分泌能の評価

合成ACTH(1-24)であるテトラコサクチド(コートロシン®)を静注し,コルチゾール分泌を促進する.

・負荷後30 or 60分の血中コルチゾール値≧18μg/dL→副腎不全症は否定的.
・負荷後30 or 60分の血中コルチゾール値<18μg/dL→原発性・続発性を含めて副腎不全症が疑われる.
・血中コルチゾール頂値<15μg/dLの場合は,不全型を含め,原発性副腎不全症の可能性が高い.
・朝が良好に反応,その他はやや反応低めのときあり.

原発性か続発性(二次性or三次性)かの診断

・ACTH低値~正常→続発性(二次性or三次性)
・ACTH高値→原発性

CRH負荷試験

下垂体のACTH分泌能の評価

CRHは,下垂体のACTH産生細胞を直接刺激して,ACTH分泌を促進する.

・健常人ではACTH頂値が1.5倍以上または30 pg/mL以上,コルチゾール頂値が1.5倍以上または18μg/dL以上となる.
・コルチゾール頂値≧18 μg/dL→下垂体性は否定され,原発性あるいは視床下部性を疑う.
・コルチゾール頂値<18 μg/dL→原発性 or 下垂体性を疑う.

ACTHを評価する際には,生物活性の低いACTH(big-ACTH)の存在に注意.
→CRH負荷前後の血中コルチゾールの増加率は,原発性副腎機能低下症を除外できれば,生物活性の乏しいACTHが分泌されている可能性の鑑別に参考になる.

CRH受容体異常によって,血中ACTHの低値と分泌刺激試験での血中 ACTHの低反応が認められることがある.

視床下部性ACTH分泌低下症の場合は,CRHの1回投与でACTHは正常~過大反応を示すことがあるが,コルチゾールは低反応を示す.

インスリン低血糖試験

視床下部のCRH分泌能の評価

インスリンによる低血糖ストレスが,視床下部を介してGH,ACTHの分泌を刺激する.

原則として,血糖値45mg/dL以下となった場合を有効刺激とする.

インスリン感受性亢進のため,インスリン投与量を場合によっては,通常(0.1 U/kg静注)から半分(0.05 U/kg静注)にする.

低血糖ストレスによって嘔吐・腹痛・ショック症状を伴う急性副腎機能不全に陥ることがあるので,注意深く観察する.

血中コルチゾール反応が18 μg/dL未満で,反応不良を疑う.

原発性ではミネラルコルチコイドの評価(レニン活性,アルドステロン)

副腎の画像検査(CT・MRI)

副腎不全の原因疾患の検討(特に下垂体腺腫や感染症など)

診断の手引き(ACTH分泌低下症,2018年度改訂)

診断基準

確実例:Ⅰの1項目以上とⅡの①~④を満たすもの(Ⅱの⑤を満たす場合はより確実)

Ⅰ.主症候

①易疲労感,脱力感
②食欲不振,体重減少
③消化器症状(悪心,嘔吐,便秘,下痢,腹痛)
④血圧低下
⑤精神障害(無気力,嗜眠,不安,性格変化)
⑥発熱
⑦低血糖症状
⑧関節痛

Ⅱ.検査所見

①血中コルチゾールの正常低値~低値
②尿中遊離コルチゾール排泄量の低下
③血中ACTHは高値ではない.
④ACTH分泌刺激試験[CRH試験(100 μg静注),インスリン低血糖試験に対して,血中ACTHおよびコルチゾールは低反応or無反応を示す].
⑤迅速 ACTH試験(コートロシン®250 mg静注)に対して血中コルチゾールは低反応を示すことが多い.但し,ACTH-Z試験(コートロシンZ®500 mg、3日間筋注)に対しては増加反応がある.

Ⅲ.除外規定

ACTH分泌を低下させる薬剤投与を除く.
特にグルココルチコイド(注射薬,内服薬,外用薬,吸入薬,点眼薬,関節内注入薬など)については十分病歴を確認する.

治療

生理的コルチゾール分泌量と日内変動に近い至適補充療法が望ましい.

副腎クリーゼを疑う場合は,診断前でも検査結果に優先して高用量のヒドロコルチゾンを速やかに点滴投与する.

通常は内因性ステロイドであるヒドロコルチゾン(HC,コートリル®)を補充する.

コルチゾールの1日あたりの産生量は5~7mg/㎡との報告や,9~11mg/㎡との報告があり,10~20mg/日の生理的補充量の目安となっている.
→体重×0.25mgで大体の1日総量を概算できる.

2~3回に分割服用.生理的変動に近似させる.

2分割投与 (維持療法)  コートリル®
10mg/日の場合:朝7.5mg,夕2.5mg
15mg/日の場合:朝10mg,夕5mg
20mg/日の場合:朝15mg,夕5mg

3分割投与(維持療法)
体重(kg)×0.12mgで朝の投与量を決め,朝:昼:夕を3:2:1の比率で3分割投与すると,血中コルチゾール値がより生理的変動に近似する。

急性副腎不全,副腎クリーゼ adrenal crisis
急激にグルココルチコイドの絶対的または相対的な欠乏が生じ,放置すると致命的な状況に陥る病態原因...

原発性

グルココルチコイド低下に加えて,ミネラルコルチコイドの低下も生じている.

コートリル®はグルココルチコイド作用とミネラルコルチコイド作用を持つので,コートリル®を投与することで,両者の低下を同時に加療することができる.

通常量はコートリル®10mg朝食後1錠,夕食後0.5錠.
本邦では食塩摂取量が多いこともあり,ヒドロコルチゾン補充のみで通常十分.

コートリル®15mgを補充していても低血圧・低Na血症,高レニン血症がある場合にはミネラルコルチコイドの不足と考えられる.
→その場合には塩分摂取励行やフルドロコルチゾン(フロリネフ®) 0.02~0.2mgの追加を検討する.
(フロリネフ®はミネラルコルチコイド作用を持つ)

ACTH分泌低下症

通常,ヒドロコルチゾン or 他のグルココルチコイドを経口投与する.

投与回数は1日1~2回とし,1日投与量の2/3を朝,1/3を夕に投与することが望ましい.

投与量は体重,自覚症状,生化学検査所見などを基に決定する.
*血中ACTH濃度は治療効果の指標にはならない.

治療に際しては,少量(ヒドロコルチゾンとして 5~10mg/日)から開始し,最初は1~2週の間隔で経過を観察し,副作用がなければ段階的に増量して維持量(10~20mg/日)とする.
*15mg/dayが通常用量

・基礎値がある程度保たれているなら,減量を検討する.
・減量した後は一時的に倦怠感などの自覚症状が出現するが,もし自覚症状が1週間以上続くならば,元の量に戻すことを検討する.

modified release hydrocortisone;MRHC

・HCの3回投与でも,生理的コルチゾールの日内変動を完全に模倣することは困難とされる.
・過剰補充の長期継続は代謝面で悪影響を及ぼす.

現時点で3剤ある.
・plenadrenは服用後20分以内のHC放出と徐放型HC放出を同時に可能にする薬剤コーティングを併せ持つMRHC.

HCの3回投与に比べ,生理的補充に近い薬理動態や体重,耐糖能,血圧などの改善が報告されている.

Sick day

感染症などによる発熱時,手術などの医療処置を施すとき,外傷時などの身体的ストレスが増加するときに健常人であればACTH-コルチゾールの分泌が亢進するが,副腎不全の患者では補充量の増量が必要になる.

感冒による発熱など,日常生活の中でヒドロコルチゾンの投与量を2~3倍に増加する必要が生じる場合に備えて,臨時使用の目的で予備的な処方をし,使用法を明確に指示する.

シックデイには,3分割投与が望ましい.

指導

副腎不全カードと説明書を渡す.

感染症などによる悪寒を伴うような発熱時(38℃以上)には,通常の2~3倍の内服を行う.
 鼻風邪程度では必要ない.「熱をだしてぐったりするようなとき」

激しい下痢・嘔吐のときは,吸収されていない可能性があり,病院を受診し,注射投与が必要なことも説明する.

スポーツ,海水浴,登山や肉体労働など体力を消耗する場合には,直前に1錠追加内服する.

補充量の目安

発熱などのストレス下では,通常用量の2~3倍量のコートリル®補充が必要.

最大ストレスに対する補充量はソル・コーテフ®換算で200mg/日.

全身麻酔を要する手術時には,手術当日ヒドロコルチゾン 200mg/日(100 mg静注+100mg点滴/24時間など)を投与し,約1週間かけて通常の補充量まで漸減する.

内服ができない場合や下痢・浮腫などの吸収不良の可能性がある場合はヒドロコルチゾン(ソル・コーテフ®)の静注を行う.

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