脳心血管病の発症予防効果は,降圧薬の種類によらず,降圧度の大きさに比例することが大規模臨床試験のメタ解析が示されている.
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降圧薬の選択
Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,利尿薬,β遮断薬の5種類の主要降圧薬は,いずれも脳心血管病抑制効果が示されている.
利尿効果を期待するなら,サイアザイド系利尿薬やミネラルコルチコイド遮断薬が有用.
最近では,心不全治療薬であるSGLT2阻害薬やARNIにも期待できる.
積極的適応

副作用と禁忌

副作用が増強する組み合わせ
β遮断薬と非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬→心臓抑制増強作用
ARB/ACE阻害薬とMR阻害薬→高K血症増強作用
中枢性交感神経抑制薬とβ遮断薬→離脱症候群の易発現性
使い方
まずは単剤を少量から開始
・投与した降圧薬の副作用が出現したり,ほとんど降圧効果が得られない場合には他剤に変更する.
・Ⅱ度以上(160/100mmHg以上)の高血圧の場合は,通常用量の単剤もしくは少量の2剤併用から開始してよい.
・配合剤は保険適用上,第一選択薬となっていない.
積極的適応がない場合の高血圧に対しては,Ca拮抗薬・ARB・ACE阻害薬・利尿薬の中から選択する

まずは,早朝家庭血圧(収縮期)135mmHg未満を目指す.
不十分であれば,増量するか,他の種類の降圧薬を少量併用する
・降圧薬の量を倍増するよりも,種類の異なった他の降圧薬を少量ずつ併用するほうが良好な降圧効果が得られ,脳心血管病リスクを減らせる.
【推奨される2剤の組み合わせ】
ARB/ACE阻害薬+Ca拮抗薬
ARB/ACE阻害薬+利尿薬
Ca拮抗薬+利尿薬
ARB/ACE阻害薬+β遮断薬 or 利尿薬(心不全合併)
2剤を併用しても降圧目標に達しない場合は3剤を併用する
【推奨される3剤の組み合わせ】
ARB/ACE阻害薬+Ca拮抗薬+利尿薬
ARB/ACE阻害薬+β遮断薬+利尿薬±MR拮抗薬(心不全合併)
HR>80bpmであれば,β遮断薬を積極的に考慮する.
さらに必要により4剤を併用する
MR拮抗薬,β遮断薬,α遮断薬,直接的レニン阻害薬,非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬,中枢性交感神経抑制薬,ヒドララジン
肥満・SAS・腎障害などは,治療抵抗性高血圧を合併しやすい病態であり,MR拮抗薬が有用と思われる.
注意点
1日1回服用の薬剤を選択
1)長期にわたる服用を容易にする.
2)家庭血圧や24時間血圧測定で得られたトラフの血圧が高値の場合,朝晩の2回に分服したり,晩や就寝前に追加投与することを試みる.

早朝血圧と就寝前血圧の差が20mmHg以上の際には,朝投与を朝夕投与の2分割,さらに就寝前投与に切り替えるなどの投与時間帯を変えることも有用.
降圧速度
1)降圧目標に数カ月で到達するくらいの緩徐なほうが副作用もなく望ましい.
・特に,血圧調節機能が減弱している高齢者では,急激な降圧は避けるべき
・脳心血管病発症リスクが高い場合は,数週以内に降圧目標に到達することが望ましい
夜間高血圧
夜間血圧まで徹底した管理が望ましいハイリスク群は,
1)臓器障害の合併例(心電図・心エコーで左室肥大,血中NT-proBNP高値,血管スティフネス亢進,eGFR<60,アルブミン尿陽性など)
2)仮面夜間高血圧の頻度が高い例(糖尿病,慢性腎臓病,夜間時睡眠無呼吸症候群,夜間頻尿,睡眠障害など)
循環血漿量↑が原因
→減塩,利尿薬,MR遮断薬,ARNI,SGLT2阻害薬
血管疾患が原因
→Ca拮抗薬
閉塞性睡眠時無呼吸,交感神経活性化が原因
→CPAP,交感神経抑制薬,腎デナベーション
不眠症が原因
→メラトニン,メラトニン受容体アゴニスト,オレキシン受容体拮抗薬
季節の変動性
1)夏季には血圧が低下する患者では,一時的に降圧薬を減量あるいは中止を考慮する.
2)冬季には血圧が上昇して,増量や再投与が必要になることも少なくない.