高血圧緊急症 hypertensive emergency

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
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高血圧緊急症 hypertensive emergency
血圧上昇が著しく(多くは180/120mmHg以上),1時間以内に降圧しなければ不可逆的な臓器障害(脳・心臓・腎臓・大血管・網膜など)が生じ,致命的になりうる状態.

高血圧切迫症 hypertensive urgency
高血圧緊急症ほど緊急の降圧は必要ではないが,数時間~24時間以内に降圧しなければ臓器障害の著しい増悪が予測される状態.

病態

高血圧緊急症をきたす疾患

加速型-悪性高血圧(網膜出血や乳頭浮腫を伴う高血圧)
・拡張期血圧120~130mmHg以上であり,腎機能障害が急速に進行し,放置すると全身状態が急激に悪化し,心不全・高血圧性脳症,脳出血などを発症する予後不良の病態.
・高血圧の病歴が長い患者に発症することが多く,特に注意

高血圧性脳症
・急激または著しい血圧上昇により血圧値が脳血流自動調節上限を超え,必要以上に脳血流量が増加,血液脳関門が破綻し,血管原性脳浮腫を生じる.

急性の臓器障害を伴う重症高血圧
・脳出血
・くも膜下出血
・アテローム血栓性脳梗塞
・頭部外傷
・急性大動脈解離
・急性心不全
・急性心筋梗塞および急性冠症候群
・急性または急性進行性の腎不全(腎移植後を含む)

脳梗塞血栓溶解療法後の重症高血圧

カテコールアミンの過剰
・褐色細胞腫クリーゼ
・モノアミン酸化酵素阻害薬と食品/薬剤との相互作用
・交感神経作動薬の使用
・降圧薬中断による反跳性高血圧
・脊髄損傷後の自動性反射亢進

収縮期血圧≧180mmHgあるいは拡張期血圧≧120mmHgの妊婦

子癇

手術に関連したもの
・緊急手術が必要な患者の重症高血圧
・術後の高血圧
・血管縫合部からの出血

冠動脈バイパス術後

重症火傷

重症鼻出血

診断

病歴・症状

高血圧の診断・治療歴
交感神経作動薬ほかの服薬
頭痛
視力障害(眼底出血・乳頭浮腫など)
神経系症状(脳血管障害)
悪心・嘔吐
胸・背部痛(虚血性心疾患,大動脈解離など)
心・呼吸器症状(急性心不全)
乏尿,体重の変化など

身体所見

血圧
測定を繰り返す(拡張期血圧は120mmHg以上のことが多い),左右差

脈拍,呼吸,体温

体液量の評価
頻脈,脱水,浮腫,立位血圧測定など

中枢神経系
意識障害,痙攣,片麻痺など

眼底
綿状~火炎状出血,軟性白斑,網膜剥離,乳頭浮腫など(高血圧性網膜症の有無)

頚部
頚静脈怒張,血管雑音など

胸部
心拡大,心雑音,Ⅲ音,Ⅳ音,肺野湿性ラ音など

腹部
肝腫大,血管雑音,(拍動性)腫瘤など

四肢
浮腫,動脈拍動など

緊急検査

尿

末梢血
スメアを含む

血液生化学
尿素窒素,クレアチニン,電解質,糖,LDH,CKなど

動脈血ガス
必要に応じ

血漿レニン活性,アルドステロン,カテコールアミン,BNP
必要に応じ

心電図,胸部X線(2方向)

心・腹部エコー,頭部CTまたはMRI,胸部・腹部CT
必要に応じ

治療

高血圧緊急症

高血圧緊急症は,入院治療が原則!

1)高血圧緊急症では,診断後,注射薬により直ちに降圧を行う.
2)急速で過度な降圧は,臓器灌流圧の低下を招き,脳梗塞・心筋梗塞・腎機能障害などの虚血性臓器障害を引き起こすこともあり,要注意.
→降圧の程度や速度が予測可能で,かつ即時にこれらの調節が可能な薬物を使用し,頚静脈的に投与する.
3)初期降圧目標に達したら,内服薬を開始し,注射薬は用量を漸減しながら,中止する.

降圧目標

始めの1時間以内では平均血圧で25%未満の降圧にとどめる.
(加速型-悪性高血圧の場合は,拡張期血圧100~110mmHgまでにとどめる)

次の2~6時間で160/100mmHg程度まで降圧

その後24~48時間かけて140/90mmHg未満まで細心の注意を払い,降圧する.

大動脈解離,急性冠症候群,血圧が急激に上昇した高血圧性脳症(急性糸球体腎炎や子癇など)などでは,治療開始の血圧レベルおよび降圧目標値は低くなる.

高血圧切迫症

緊急降圧による予後改善のエビデンスはなく,緊急降圧の対象ではないが,内服薬により速やかに治療を開始する.
→24~48時間かけて比較的緩徐に160/00mmHg程度まで降圧を図る.

1)高血圧の病歴が長く,慢性の臓器障害もみられる場合が多く,臓器血流の自動調節能の血圧下限が高いことが想定される.

注射薬

ニトログリセリン Nitroglycerin

ミリスロール® ミオコール® 降圧マイルド

急性冠症候群(急性心筋梗塞・不安定狭心症)に重症高血圧を合併する場合
・下壁梗塞で右室梗塞合併が疑われる場合は避ける(前負荷で低下するため)

ミリスロール 50mg/100mL(=0.5mg/mL)
維持量:0.5~2.0γ
SBP 141mmHg以上のとき,2 or 4mL/hrで開始して,2mLずつ増減可能.最大20mL.

1)全身静脈を拡張する.
2)中心静脈圧が低下し,心臓の前負荷を低下させ,心筋のエネルギー需要を低下.
3)冠動脈を拡張させて,心筋に対する血液に供給を増加する.
4)全身動脈を拡張させて,動脈血圧を下げ(心筋の後負荷を下げて),心筋のエネルギー需要を低下させる.

ニカルジピン Nicardipine

ペルジピン®  Ca拮抗薬 降圧強い

1A(10mg/10mL=1mg/mL)
*ペルジピン1A 2mg/2mL+生食100mLを1時間で落とせば,0.67γ
*ペルジピン10mg/10mLを1mL/hrより開始.維持量:2~10γ,最大20mL/hr.
(生食10mLに混ぜて,ハーフにして1mL/hrで開始するのも可)
*ワンショット静注はしない!!

1)内向きCa電流を選択的にブロックし,血管平滑筋や結節組織(洞結節と房室結節)で作用する.
2)作用発現までやや時間を要し,作用持続時間が比較的長いため,用量調節に注意が必要.
3)dihydropyridine系薬剤で反射性の交感神経刺激作用による頻脈を生じる.
*頻拍性不整脈を生じやすいため,心疾患を有する患者には要注意.

ジルチアゼム diltiazem

ヘルベッサー®

ヘルベッサー1A 50mg
例:生食50mL+ヘルベッサー3A(150mg)     1mL=3mg
BW 50kgであれば、1γ=3mg/hrなので,1mL/hrで1γになる。

1)血管拡張作用・洞結節抑制作用・房室伝導抑制作用をそれぞれ中等度にもつ.
2)洞結節においてより活性が強く,陰性変力作用(心収縮力),陰性変時作用(徐脈)ももち,副作用に注意する.
3)禁忌:重篤なうっ血性心不全,第2度以上の房室ブロック,洞不全症候群

内服薬

多くは圧利尿により体液減少状態にあり,レニン-アンジオテンシン系の亢進が病態形成に密接に関与している.
→RAS阻害薬が著効することが期待されるが,過度な降圧が生じる可能性もある.

カプトプリル

1)作用発現が比較的速く,持続時間も短いので投与量を調節しやすい.
2)少量6.25~12.5mgから投与を始める.
3)レニン-アンジオテンシン系が亢進している悪性高血圧や脱水状態では過度の降圧をきたす可能性がある.
4)腎機能障害例では,1~2日後に高K血症をきたしやすい.
5)両側性や単腎性の腎血管性高血圧例では腎不全が生じるので,疑わしい症例では使用しないか,CrとKのデータチェックをする.

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