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高齢者高血圧の特徴
循環器
動脈硬化と血管の弾性低下
左室壁肥大と拡張能低下
・孤立性収縮高血圧の増加
・起立性低血圧,起立性高血圧,食後血圧低下の増加
・血圧動揺性の増大
神経
圧受容器反射の障害
β受容体機能の低下
水・電解質代謝
腎機能低下による体液量調節の障害
電解質ホメオスタシスの易破綻性(特に低Na血症や低K血症の易発現性)
食塩感受性の増大
糖代謝
インスリン抵抗性の増大
耐糖能障害の増加
内分泌
レニン-アンジオテンシン系,カリクレイン-キニン系,プロスタグランジン系,腎ドパミン系など,昇圧系,降圧系,両系の障害
上記の複合的影響で,
・白衣高血圧の増加
・血圧日内変動における夜間非降圧型の増加
・標的臓器の血流自動調節能の障害の増加
・主要臓器血流や予備能の低下
・心不全の易発症性
血圧と認知症
高血圧は,血管性認知症の危険因子であるが,アルツハイマー型認知症も脳血管障害や脳微小血管病の合併を多く認められ,高血圧との関連性が報告されている.
1)年齢の影響が大きく,若年期の高血圧は中年期の認知機能低下と,中年期の高血圧は高齢期の認知機能低下の危険因子となることが多くの観察研究で知られている.
2)高齢期における認知症と血圧との関係は,一定ではなく,高血圧のみならず低血圧も認知症と関連すると報告されている.
治療
基本的には高齢者においても血圧が低いほど脳心血管病リスクは低い.
原則として,140/90mmHg以上の血圧レベルを降圧薬開始基準とする.
75歳以上でSBP 140~149mmHgや,外来通院不能な高齢者(フレイル,認知症,要介護,エンドオブライフを含む)では,個別に判断する.
自力で外来通院可能な健康状態にある高齢者の降圧目標は,忍容性があれば原則として65~74歳は130/80mmHg未満,75歳以上は140/90mmHg未満とする.
併存疾患などによって一般に降圧目標が130/80mmHg未満とされる場合,75歳以上でも忍容性があれば個別に判断して,130/80mmHg未満を目指す.
血圧測定
血圧の動揺性が大きく,測定条件によって変動しやすい.
1)複数機会に測定された診察室血圧の他,家庭血圧,24時間自由行動下血圧,デイサービスなどで測定された血圧も参考にする.
2)起立性低血圧や食後血圧低下の頻度が高いため,初診時や治療内容の変更時には起立時の血圧も測定する.
生活習慣の修正
高齢者においても減塩,運動,減量,禁煙などは有用
1)塩分制限6g/dayを目標にするが,極度の減塩は大量発汗時などに脱水の誘因になるので,注意が必要.
2)運動としては,有酸素運動が推奨されるが,一般に転倒リスクが高いこと,関節障害のリスク増大,心負荷などを考慮して,通常の速さでの歩行を推奨する.
降圧薬
降圧薬の選択は,併用療法を含め,非高齢者と同様.
α遮断薬は原則として用いない.
1)誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者には,ACE阻害薬の投与を第一選択薬として考慮する.
2)骨折リスクが高い高齢者では,サイアザイド利尿薬を第一選択薬として考慮する.
・ループ利尿薬は骨折リスクを増加させる可能性があるため,注意.
75歳以上では常用量の1/2量から開始し,段階的(4週間から3ヵ月の間隔)に最終の降圧目標を目指す.
1)忍容性の確認においては,副作用の発現や臓器障害,QOLにも留意する.
・降圧薬治療開始時には,転倒・骨折のリスクが増加する.
・めまい,立ち眩みなどの脳虚血性徴候や狭心症状,心電図の心筋虚血所見に注意.
2)血管狭窄(両側頸動脈75%以上狭窄,有意な冠動脈狭窄),血圧調節異常(起立性低血圧・起立性高血圧・食後血圧低下),自力での外来通院不能(フレイル・認知症・要介護・エンドオブライフを含む)などの症例では降圧目標や降圧スピードを個別に判断する.
・エンドオブライフでは,予後改善を目的とした降圧薬の適応はなく,中止も積極的に検討する.
3)脱水,摂食量低下,生活環境変化などに伴い減薬や薬剤中止(一時中止を含む)が必要な場合がある.
→臓器予備能が低い高齢者では,家庭血圧低下時の対応など,事前の服薬指導を行う.
薬剤の一包化は,高齢者の服薬継続を保つだけでなく,降圧効果を高める.
高齢者での多剤併用(ポリファーマシー)は,注意が必要.
力価の高い1剤か配合剤への変更,一包化,服用法の単純化を工夫する.