高プロラクチン血症 hyperprolactinemia

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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何らかの原因で,下垂体前葉ラクトトロフからのPRL分泌亢進すると高プロラクチン血症をきたす.

おすすめ

間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き(平成30年度改訂)
http://www.acromegaly-center.jp/medical/pdf/treatment_guidance.pdf

原因

4大原因は視床下部障害,PRL産生腫瘍(32.9%),原発性甲状腺機能亢進症(4.5%),薬剤性(向精神薬2.5% 胃腸薬5.3%).

視床下部・下垂体茎病変

視床下部の内因性ドーパミン産生+下垂体門脈から下垂体へのドーパミン輸送が阻害

1)機能性
2)器質性
①腫瘍(頭蓋咽頭腫・ラトケ嚢胞・胚細胞腫・非機能性腫瘍・ランゲルハンス細胞組織球症など)
②炎症・肉芽腫腫(下垂体炎・サルコイドーシスなど)
③血管障害(出血・梗塞)
④外傷

下垂体病変

1)PRL 産生腺腫
2)先端巨大症(PRL 同時産生)

薬剤服用

腫瘍以外で最も多い原因.

ドパミン受容体拮抗薬
クロルプロマジン
ハロペリドール
メトクロプラミド metoclopramide(プリンペラン®)

抗精神病薬 ドーパミンD2受容体に拮抗し,ドーパミンの作用を阻害する
リスペリドン
クロルプロマジン chlorpromazine(コントミン®)
ハロペリドール haloperidol(セレネース®)
パリペリドン
オランザピン
クロザピン
アセナピンなど

抗うつ薬
三環系抗うつ薬(クロミプラミン,アミトリプチリンなど)
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(フルボキサミンなど)

ドパミン合成阻害薬 ドーパミン産生を阻害
α-メチルドパ α-methyldopa[アルドメット®] 

降圧薬
ラベタロール
レセルピン reserpine(アポプロン®)
ベラパミル

H2受容体拮抗薬
シメチジン
ラニチジン

抗てんかん薬
フェニトイン

エストロゲン製剤 ドーパミン活性を抑制+下垂体に直接作用してPRL産生分泌を刺激
経口避妊薬

麻薬
モルヒネ
メサドン
アポモルヒネなど

原発性甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンの低下→PRL放出因子の1つであるTRH分泌が亢進し,PRL分泌を刺激

マクロプロラクチン血症

PRLに対するIgG型自己抗体がPRLと結合した複合体が流血中に存在→クリアランスが低下

高PRL血症の15~25%に存在し,高PRL血症による症候を認めない.

診断には,ゲルろ過クロマトグラフィー法,ポリエチレングリコール(PEG)法,抗IgG抗体法を用いて高分子化した PRL を証明する.

その他

1)慢性腎不全:PRLは主に腎臓で代謝される
2)胸壁疾患(外傷,火傷,湿疹など):Th1~Th6神経の慢性的局所刺激がPRL分泌を刺激
3)異所性PRL産生腫瘍

症候

症状

性成熟期の女性
乳汁分泌,無月経や希発月経等の月経異常,不妊症(無月経・乳汁漏出症候群)

男性
無症状のことが多い.性欲低下,勃起障害,乳汁分泌,乳腺腫大

プロラクチノーマの場合
・男性では症状が明らかでないため,1cm以上のmacroadenomaで発見されることも多い.
・腫瘍が大きくなると局所症状として頭痛・視力低下・視野狭窄などに加えて,下垂体機能低下症の症状を呈することがある.

プロラクチン濃度

血中PRLは睡眠,ストレス,性交や運動などに影響されるため,複数回測定して,いずれも施設基準値以上であることを確認する.

マクロプロラクチノーマにおけるPRLの免疫測定においてフック効果(過剰量のPRLが,添加した抗体の結合能を妨げ,見かけ上PRL値が低くなること)に注意する.

基準値
成人女性:平均値5ng/mL,正常範囲1.5~15ng/mL
成人男性:平均値4ng/mL,正常範囲1.5~10ng/mL
褥婦授乳前:平均値110ng/mL,正常範囲44~235ng/mL
褥婦授乳後:平均値200ng/mL,正常範囲78~433ng/mL

頭部MRI

T1強調画像にて,正常下垂体前葉組織に比較して,造影されにくい低信号域として描出

PRL値とプロラクチノーマのサイズには相関があり,血中PRL値が200ng/mL以上で,画像検査で下垂体部に直径1cm以上の腫瘍が確認できれば,プロラクチノーマの可能性が高い.
(視床下部・下垂体茎の器質性病変の場合,血中PRL値は通常200ng/mLを超えることはない)

微小腺腫の診断にはgadolinium(Gd)を用いた造影MRI検査が有用.

診断

診断の手引き(2018年度改訂)

確実例:ⅠとⅡを満たすもの.原因となる病態によって,病型分類をする.

Ⅰ.主症候

1.女性:月経不順・無月経,不妊,乳汁分泌
2.男性:性欲低下,インポテンス,女性化乳房,乳汁分泌
3.男女共通:頭痛,視力視野障害(器質的視床下部・下垂体病変による症状)

Ⅱ.検査所見

血中PRLの上昇

血中PRL基礎値の上昇:複数回測定し,いずれも20ng/mL(測定法により30ng/mL)以上を確認

Ⅲ.PRL 分泌過剰症の鑑別診断

1)薬剤服用による PRL分泌過剰
原因薬剤服用の有無を確認する.
該当薬があれば主治医の判断により(抗精神病薬の場合は処方医と相談の上,可能ならば2週間)休薬し,血中PRL基礎値を再検する.

2)原発性甲状腺機能低下症
血中甲状腺ホルモンの低下,TSH値の上昇を認める.

3)視床下部・下垂体病変
1)と2)を除外した上で,トルコ鞍部の画像精査(単純撮影・CT・MRIなど)を行う.
①異常あり:
 視床下部・下垂体病変→画像診断から鑑別
 下垂体病変→PRL産生腺腫(腫瘍の実質容積と血中PRL値がおおむね相関する),先端巨大症(PRL同時産生)
②異常なし:他の原因を検討する.該当なければ,視床下部の機能性異常と診断する.

治療

原因となる病態によって,治療方針は異なる.

視床下部・下垂体茎病変

1)機能性:カベルゴリン,ブロモクリプチンまたはテルグリドを投与する.
2)器質性:各々の疾患の治療を行う.

下垂体病変

PRL産生腺腫(プロラクチノーマ)

ドーパミン作動薬による薬物治療法(カベルゴリン,ブロモクリプチン or テルグリド)が第一選択.
手術は薬物療法に抵抗する場合,あるいは副作用などで服薬できない場合に適応となる.

カベルゴリン(カバサール®)0.25mg錠
週1回就寝前,0.25 mg/回より開始し,PRL値により漸増する.
上限は1mg/回とされている.

ブロモクリプチン
週1回就寝前, 2.5 mg/回,夕食後より開始し,PRL値により 5~7.5 mg/日,分2~3に漸増する.

マクロプロラクチノーマ

カベルゴリン・ブロモクリプチン・テルグリドに反応性が良好ならば,薬物療法を継続する.

効果が不十分な場合には,短期間で薬物を中止し,手術によって腫瘍容積を可及的に減じた上で,再度薬物療法を行う.

髄液鼻漏(髄膜炎)を来す可能性があること,妊娠成立後は服薬を中止すること,妊娠中(薬物療法中断中)に腫瘍の急性増悪を来す可能性があることに注意する.

高用量のカベルゴリンを長期間投薬されたパーキンソン病患者の一部に心臓弁膜症が報告されており,マクロプロラクチノーマに対してカベルゴリンを高用量で長期間投与する際は注意を要する.

ミクロプロラクチノーマ

熟達した脳神経外科医が手術すれば治癒する可能性が十分あることを治療の選択肢として説明する(トルコ鞍内に限局し非浸潤性のものが適応となる).

ドパミン作動薬を 2 年以上服薬し,血中PRLの正常化や下垂体腫瘍の消失が得られた場合,ドパミン作動薬の減量や中止を検討する.

他のホルモン産生腺腫

各々の腺腫の治療を行う.

薬剤によるもの

当該薬を中止する.
中止できない場合は十分なinformed consentを得る.

原発性甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモン製剤を投与する.

他の原因

各々の疾患の治療を行う.

マクロプロラクチン血症は治療を要しない.

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