個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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病態
細胞外液へのPのフロー(流入)が,腎臓からの排泄能を超える病態として,①腎からの排泄が減る病態,②細胞外液へのPのフローが増える病態が考えられるが,腎での調節が正常に働いている限り,フローの増加のみで高P血症になることは稀.
よく経験するのは,腎の予備力が低下してフローの増加をバッファーできなくる病態.
腎からの排泄が減る病態
GFRの低下
腎機能が正常な場合,1日あたりのP濾過量は4~8g/日になる.通常は,この濾過されたPのうち,4~20%のみが排泄され,ほとんどは近位尿細管で再吸収される.
→GFRが低下すると,Pの濾過が減る→血清P濃度の上昇を介して,FGF23とPTHが上昇して代償→GFR<20~25mL/minを超えると,代償できなくなりP↑
腎近位尿細管におけるP排泄閾値の上昇(再吸収亢進)
Pの再吸収を担うNaPi-2a,-2cの発現・活性をコントロールするPTH・FGF23・副腎皮質ステロイドの低下(いずれも発現を抑制する)
■PTH作用不足
・副甲状腺機能低下症
・偽性副甲状腺機能低下症


■FGF23作用不足
・家族性腫瘍状石灰化症 familial tumoral calcinosis
・自己免疫性高P血症性腫瘍状石灰化症 autoimmune hyperphosphatemic tumoral calcinosis
■GH・IGF-1高値
・先端巨大症
■副腎皮質ステロイド作用不足
・副腎不全
・薬剤性(etidronate)
細胞外液へのPのフローが増える病態
急激なP負荷や細胞内から細胞外へのPのシフトなど,低Ca血症をきたす急性の高P血症については治療が必要.
→腎機能が正常であれば,生食負荷でPの尿排泄が増える(6~12時間で高P血症は軽快)が,低Ca血症を助長するに注意が必要
→腎機能が悪い場合は,血液透析が推奨される.
急激なP負荷(急性高P血症)
■内因性の負荷
・腫瘍崩壊症候群 tumor lysis syndrome
・横紋筋融解症
・溶血や輸血
■外因性の負荷
・抗てんかん薬(fosphenytoin)
・ナトリウム・リン酸緩下剤
細胞内Pの細胞外への急激なシフト
代謝性アシドーシスでは,細胞内から細胞外へのPのシフトに加え,細胞内ATP高値により解糖系が抑制されるため,細胞内のP利用が減る.
・乳酸アシドーシス
・糖尿病ケトアシドーシス
腎からの排泄低下と細胞外液へのフロー増加の合併
■ビタミンD作用過剰
・活性型ビタミンD製剤の過剰内服
・サルコイドーシス
・悪性リンパ腫など
■PTH非依存性の骨吸収亢進
・甲状腺中毒症
・副腎不全
・不動
■ACTH単独欠損症
偽性高P血症
免疫グロブリン高値,脂質高値,溶血,ビリルビン高値
→測定系での干渉