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血清Na濃度が150mEq/L 以上の状態
○高Na血症は高浸透圧血症を意味する.
・健常人ではNa濃度の上昇により,最初にADH分泌が促進され,腎での水の再吸収が促進される.
さらにNa濃度が上昇すると,口渇が生じ,飲水行動が促進される.
→このような正常反応が障害されることで生じる.
○脱水を意味していることが多いことと,細胞外浸透圧が高いため細胞傷害(細胞内脱水)が起こることの2つが問題.
疫学
○通常,飲水不可能な環境でしか認められず,日常臨床上遭遇することは少ない.
・入院時の高Na血症は,主に高齢者に特徴的で,入院中に生じた高Na血症は医原性であると考えられる.
○成人において最も多い原因は,高齢者で水を摂取できない状況下(寝たきり・認知障害など)での脱水.
感染症が誘因となることが多い.
病態
○水欠乏および Na 過剰による場合がある.
水分欠乏
・通常,血清浸透圧の上昇に対して口渇中枢の刺激があり,飲水が惹起され,高Na血症は補正されることが多いため,意識障害時や麻酔下での水分補給不足の場合に問題となる.
・最も頻度が高いのは腎性水分喪失であり,中枢性尿崩症,浸透圧利尿によるものが多い.
水分摂取の減少
視床下部(口渇中枢)の障害(腫瘍),高齢者・小児,意識障害,上肢の抑制帯
水分喪失の増加
■腎性
利尿薬使用
ADH分泌低下(中枢性尿崩症)
ADH作用不全(腎性尿崩症)
浸透圧利尿(尿糖,マンニトール,高カロリー輸液)


■腎外性
発熱,発汗,熱傷,消化管から喪失(下痢,嘔吐),呼吸性喪失
水の細胞内への移動
激しい運動時や電気ショック後のけいれん時など
Na過剰
○より稀な病態であり,ミネラルコルチコイド(鉱質コルチコイド)の過剰状態以外は,人為的な Na の過剰投与に起因することが多い.
Na 過剰負荷
不適切な輸液(特にNaHCO3投与時),重曹,乳児への虐待,透析液異常など
ミネラルコルチコイド過剰
原発性アルドステロン症,Cushing(クッシング)症候群
症候
症状
○中枢神経細胞の細胞内脱水による中枢神経症状が主で頭痛,悪心・嘔吐,無気力,眠気,易刺激性,いらいら感,けいれん,昏睡など.
○158mEq/L以上に急に上昇すると,脳細胞の体積減少により,脳静脈破裂による脳内出血やくも膜下出血を生じうる.
・180mEq/Lを超えると致死率が高い.
診断
検査
○血液(Alb,BUN,Cr,Na,K,Cl,Ca,血糖,浸透圧,ADH)
血清浸透圧=2×Na+Glu/18+BUN/2.8
○随時尿/蓄尿(糖,Na,K,Cr,浸透圧)
尿浸透圧の測定が特に重要
尿浸透圧
○AVPの作用により,健常者では尿浸透圧は最大で1000~1200mOsm/kg・H2Oまで上昇するが,高齢者では腎臓でのAVPの反応が減弱しているため,尿浸透圧が500mOsm/kg・H2O以上であれば,AVPの分泌および腎臓での作用は比較的保たれているとみなされる.
尿浸透圧が高い場合(600mOsm/kg・H2O以上)
○腎以外からの水分の消失(例えば,下痢・嘔吐等の消化管からの消失や渇中枢の障害)
○浸透圧性利尿
○稀に塩分の過剰摂取
尿浸透圧が中間の場合(300~600mOsm/kg・H2O)
○浸透圧利尿
○部分的尿崩症(AVPの分泌および作用が比較的保たれている)
■1日の尿中溶質排泄量(尿浸透圧×1日尿量)
鑑別に参考となる.
・通常の食事では,600~900mOsmであるとされ,1000mOsmを超える場合は少なくとも浸透圧性利尿の関与が考えられる.
尿浸透圧が低い場合(300mOsm/kg・H2O未満)
○中枢性・腎性尿崩症を考える
体液量の評価
○体重の変化
○1日の尿回数,尿量
○口渇の有無
○体液の喪失:嘔吐,下痢,火傷,発汗など
○皮膚・粘膜の乾燥,皮膚ツルゴール(turgor)の低下
○利尿薬の有無
細胞外液量が増加
Naの過剰摂取・投与を疑う.
細胞外液量が正常
痙攣,横紋筋融解症を疑う.
細胞外液量が減少
○体重の急な減少,尿中Na≦10mEq,BUN/Cr≧20,PR≧100,血圧低下,意識障害,尿量減少
・尿中Na+K濃度>血清Na濃度→腎以外(皮膚・腸管など)からの水喪失
・尿中Na+K濃度<血清Na濃度→腎からの水喪失
治療
○血中/尿中Na,K,Cr,尿量をfollow upする.
○急速補正した場合は,慢性低Na血症を急速補正した場合と同様に,浸透圧性脱髄症候群をきたすこともある.
急性発症
○急速な補正が必要な場合は,5%ブドウ糖液で1~2mEq/L/hrの速さで,24時間以内に正常範囲内の血清Na濃度に戻す.
→できるだけ10~12mEq/L/day以内の補正を行う.
慢性発症 or 経過不明
○無症候性なら原因疾患の改善,飲水の励行
○症候性なら1~2mEq/L/hrの速度で8mEq/L/日内の補正を行う.
○高Na血症が緩徐に生じた場合,当初,脳の体積が減少するが,脳の細胞は細胞内の浸透圧物質を増やし,これにより,水は細胞外から細胞内に移動し,細胞の体積は元に戻る.
この際に,細胞は浸透圧物質として,当初はNaやKイオンを細胞外から取り込み,その後,ミオイノシトールやタウリンを取り込み,またグルタミン・グルタミン酸の量を増加させる.
→慢性の場合は,神経症状を生じることが少ない.
→自由水を投与して急激に高Na血症を補正すると,脳浮腫(特に小児)のリスクが高いため,緩徐に補正を行う.
体液量の評価がとても大事!
体液減少
○生理食塩水を投与して,体液を十分に補う.
○高Na血症のとき,脳細胞は細胞内のアミノ酸を上昇させたり,浸透圧を高める物質を作り,細胞内の浸透圧を高め,細胞内脱水を防いでいる.
この状態で低張液を急速に大量に輸液すると脳細胞の中に入り,細胞内浮腫になる.
→低張液(1号液や3号液やブドウ糖液など)を急速に大量輸液するのは危険.
体液を十分に補正してから低張液を!
体液正常
低張液
・治療は5%ブドウ糖を用い,輸液速度は低Na血症の時の予測式を使用する.
・血糖が上昇したら輸液速度を減少,またはインスリンを併用する.

体液過剰
利尿薬
・尿中Na+K濃度が低いため治療しづらい場合は,フロセミドを併用すると半生理食塩水程度の尿Na+K濃度が期待できる.