高Ca血症,高カルシウム血症 Hypercalcemia

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

血清Ca濃度が10.5mg以上(1mEq=40mg)
・10.5~12.0mg/dLは軽度
・12~14mg/dLは中等度(入院の適応)
・14mg/dL以上は高度で生命の危険あり(緊急!)

血中Ca濃度は,PTHと1,25(OH)2Dの両者の作用により,骨石灰化に有利な高いレベルに維持されている.
→PTHと1,25(OH)2Dの作用の病的過剰が高Ca血症の主要な原因となる.
・それ以外の原因の場合,生理的なフィードバック機構により,PTHと1,25(OH)2Dは抑制される.

カルシウム・リン代謝
カルシウム(Ca)代謝はリン(P)代謝と密接な関係にあり,脊椎動物では骨の石灰化のために高い血中Ca・P積を維...

原因

副甲状腺・骨・腸管・腎臓の4ヶ所.
主要なもの(90%以上)は副甲状腺機能亢進症(最も高頻度)と悪性腫瘍(入院患者に多い)
Vit.Dの過剰投与や炭酸Caによるものも近年増加中.

骨代謝異常

線維性骨炎(二次性副甲状腺機能亢進症)
無形成骨
アルミニウム骨症
長期臥床(不動性骨委縮)
骨折後

骨吸収の増加

腸管からのCa吸収増加

Ca摂取の増加
ビタミンDの過剰投与(医原性)
ビタミンD中毒

1)腸管ではカルシウム・リンの吸収を増大する方向へ
2)腎臓では遠位尿細管でカルシウムの再吸収を増加→尿中カルシウム排泄を下げる
・腎機能障害が存在するとCaの排泄が低下するため、容易に生じる.
3)骨では骨芽細胞に働き,骨形成・骨吸収を調節する.

エルデカルシトール(エディロール®)は,通常の活性型ビタミンD製剤よりも強力であるため,要注意!

長期臥床

1)長期臥床,特にリスクのある患者の長期床上絶対安静が,骨吸収の急な加速による高カルシウム血症をもたらすことがある.
2)高カルシウム血症は床上安静開始後数日から数週間で発症する.
3)体重負荷がかかる状態に戻れば高カルシウム血症は迅速に回復する.
4)特に骨Paget病病患者は床上安静時に高カルシウム血症を起こしやすい.

薬剤性

カルシウム製剤(リン吸着剤として)
ビタミンD過剰症
ビタミンA過剰症(機序は不明だが,骨吸収亢進を伴うとされる)
サイアザイド系利尿薬(尿中Ca排泄を低下)
テオフィリン(PTH作用増強)
リチウム(副甲状腺機能亢進症をもたらすことがある)
抗エストロゲン製剤
PTH(骨粗鬆症治療薬として)

1)過剰なCa摂取のみでは通常高Ca血症にならない(初期のCa濃度増加によりPTH分泌と活性型Vit.D産生が抑制されるため).
2)まれに炭酸Ca摂取により起こる(慢性腎不全がある場合やミルク・アルカリ症候群)
3)サイアザイド系利尿薬は尿中Ca排泄を低下させるがまれ

ミルク・アルカリ症候群

胃潰瘍の治療として大量のミルクと制酸剤を服用していた時代には,ミルク中のCa による高カルシウム血症が原因の腎不全とアルカリによる代謝性アルカローシスを呈するミルク・アルカリ症候群を発症していた.
→現在は稀

原発性副甲状腺機能亢進症

PTH過剰による破骨細胞活性の増加(多くは副甲状腺腫),腎でのCa再吸収亢進

原発性副甲状腺機能亢進症 primary hyperparathyroidism;PHPT
副甲状腺の腫瘍化または過形成により,副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)が自律的...

悪性腫瘍に伴うもの malignancy-associated hypercalcemia;MAH

破骨細胞刺激因子(osteoclast-activating factor;OAF)によるlacal osteolytic hypercalcemia(LOH)

1)多発性骨髄腫・乳癌・前立腺癌などで認められる.
2)腫瘍から産生されるIL-6(interleukin-6)やTNF-α(tumor necrosis factor-α),MIP-1(macrophage inflammatory protein-1)などのサイトカインによる破骨細胞の活性化

PTHrPなどの液性破骨細胞活性化因子(hymoral hypercalcemia of malignancy;HHM)

1)7~8割.
2)肺・皮膚・頭頸部などの扁平上皮癌や成人T細胞リンパ腫,白血病など
3)本来はPTHとその受容体PTHR1を共有する局所性因子である副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTH-related peptide;PTHrP)が腫瘍により病的に過剰産生されると,そのPTH様作用に基づき高Ca血症がもたらされる.
3)骨吸収を亢進.PTHと違い,1α水酸化酵素の活性化は行わないため,血中1,25(OH)2D3は増加しない.
4)骨吸収が著明に亢進するにも関わらず,骨形成が抑制される.
5)透析患者ではPTHrPは骨芽細胞の表面に破骨細胞分化因子であるreceptor activator of NF-κB ligand(RANKL)を誘導することで,破骨細胞の活性化による骨吸収を促進し,高Ca血症をもたらす.

腎尿細管Ca再吸収の亢進

家族性低Ca尿性高Ca血症 familial hypocalciuric hypercalcemia;FHH

1)尿中Ca排泄の低下に伴い,軽度の高Ca血症をきたす遺伝性疾患.
・常染色体優性遺伝形式の家系内発症を証明することが重要
2)大部分がCaSRのヘテロ不活性化変異による.
3)PTH分泌の軽度上昇がみられることからPHPTとの鑑別が問題となる.

その他

慢性肉芽腫性疾患(サルコイドーシス),結核,悪性リンパ腫などの肉芽腫性疾患

CYP27B1を発現
→肉芽腫内のマクロファージで1α水酸化酵素が産生
→カルシトリオール[1,25-dihydroxycholecalciferol,1,25(OH)2D3]産生増加
→腸管でのCa吸収が亢進

甲状腺機能亢進症

慢性的な甲状腺ホルモン過剰では,骨代謝回転が亢進する.

副腎機能低下症

原因は不明だが,骨吸収亢進が主な機序と考えられている.

症候

1)無症状が多い.
・症状や所見がなく,検査のみの高Ca血症は化学的高Ca血症とよばれる.
2)症状には血清Ca濃度上昇によるものと基礎疾患によるものがある.
・便秘・疲労感・食欲不振・うつなど非特異的なものが多い.
・症状の出現と程度は高Ca血症の程度と進行速度による(慢性の12mg/dlでも無症状のときがある).

眼→赤目,角膜石灰化

中枢神経系→不隠,うつ,認知障害

口渇・多飲(脱水のよる)

心臓→不整脈,QTc短縮(心筋活動電位時間を短縮する),石灰化(弁膜・冠動脈・心筋繊維)

消化器(平滑筋緊張の低下,自律神経異常,ガストリン分泌亢進)→嘔気,嘔吐,便秘,食欲不振,腹痛,消化性潰瘍

肝・膵→石灰化,膵炎

腎臓→結石,多尿,遠位尿細管性アシドーシス,急性・慢性腎不全(脱水・腎へのCa負荷),腎石灰化

筋肉→筋力低下,長期では筋萎縮

骨→原因によっては線維性骨炎(骨痛・骨膜下吸収像)

代謝性アルカローシス:高Ca血症→腎臓でのH+再吸収低下

高Ca血症とAKI

尿濃縮能障害,糸球体濾過率低下,急性尿細管変性・壊死,慢性尿細管間質性腎炎,腎実質の石灰化など.

■尿濃縮能障害
・ヘンレ係蹄におけるNa輸送障害や集合管での水透過性の低下で説明されてきたが,最近腎臓にも存在するCaSRの関与が指摘されている.

■糸球体濾過率低下
・尿濃縮能障害による脱水のほか,高Ca血症による輸入細動脈の収縮により糸球体への血流量が低下する機序が考えられている.
・高Ca血症が発症して,早期よりヘンレ係蹄上行脚,遠位尿細管,集合管を中心に尿細管変性・壊死が認められる.この変化の機序はまだ明らかではないが,高Caの細胞毒性や虚血の関与が報告されている.
・高Ca血症が慢性的に持続した場合,尿細管への細胞浸潤,間質線維化など慢性尿細管間質性腎炎をきたす.また腎実質の石灰化を起こすこともある.

診断

1)頻度からまず原発性副甲状腺機能亢進症を疑う.
2)原発性副甲状腺機能亢進症では正常上限や軽度上昇であることが多い.
3)13mg/dl以上の場合は悪性腫瘍やその他の原因を考える.
・PTHが高値であれば副甲状腺.
・PTHが正常~低値
→尿中Ca排泄量が少ない→腎臓
→尿中Ca排泄量が多い→血中VitDが高値であれば腸管,低値であれば骨.

問診

・癌と腎障害の有無,内服歴(Vit.D製剤・Ca製剤),家族歴,尿路結石の既往

尿中Ca排泄量の測定

尿中Ca濃度の基準値は約200mg/day以下あるいは4mg/kg体重/dayとされる.

尿Ca値は酸性度の影響を受けやすいので(アルカリ性で沈殿してしまう),蓄尿の場合は酸性蓄尿(6N塩酸を約15ml添加)が必要であり,実際にはスポット尿を用いる場合が多い.

FECa:fractional excretion of calcium

腎尿細管のCa再吸収の指標.
FECa=[U-Ca(mg/dl)×S-Cr(mg/dl)]/[U-Cr(mg/dl)×補正S-Ca(mg/dl)]

1)正常値は1~2%程度
2)1%未満の場合は,FHHの可能性を考慮する.

尿中Ca排泄が多い

腸管Ca吸収の亢進→血中活性型Vit.D:1α,25(OH)2Dを測定
骨吸収の亢進→intactPTHとPTHrP測定,副甲状腺や癌の異常

尿中Ca排泄が少ない

腎不全,サイアザイド系利尿薬使用,家族性

血清P濃度,intactPTH,PTHrP,活性型Vit.Dを測定

intactPTH,PTHrP,活性型Vit.Dが低値の場合はその他の原因を考える.

*PTHrP:141個のアミノ酸からなり,PTHと受容体PTH/PTHrP receptorを共有する.骨形成に比較した骨吸収作用がPTHよりも強い.IRMA法により測定する.

骨代謝マーカー

1)骨吸収亢進を診断するには,TRACP-5bなどを測定.
2)骨転移癌には,MMP(matrix metalloproteinase)依存性の特殊な骨吸収マーカーである1CTP(type 1 collagen C-terminal telopeptide)が用いられる.

その他

電気泳動:多発性骨髄腫のr/oのため
胸部レントゲン:悪性腫瘍やサルコイドーシス検索

治療

急性期

腎からの排泄を上げる

経口水分摂取,高塩分食,生食水負荷

1)体液量がUPすることでNa再吸収量が減少し,Ca排泄が増加する.
2)糸球体で濾過されたCaの多くは近位尿細管とHenleループの上行脚でのNa再吸収により受動的に再吸収される.
3)多くの症例では嘔気・嘔吐・尿中塩類喪失増加により体液量が減少しているため,まず体液量の回復を図る必要がある.
4)生食水負荷は初期には200~300mL/hrで行い,尿量が100~150mL/hr確保できるように調節する.2~3L/dayが目安.
→近位尿細管でのCa再吸収を抑制
5)慢性心不全,高齢者など体液量が過剰になりやすい患者では,初期投与量を少なめにする.

必要時にはループ利尿薬を併用する.
1)HenleループでのCa再吸収を抑制し,Ca排泄を増加できる.
2)大量の輸液と利尿薬の組み合わせは電解質異常(低K血症・低Mg血症・体液量減少など)をきたしやすいので注意.
3)カルシトニンやビスホスフォスネートといった安全で有効な薬物の併用がループ利尿薬より推奨されている.
4)数時間の経過で十分な利尿が得られない場合には,血液透析を考慮する.

骨吸収の抑制

カルシトニンやビスホスフォスネート→破骨細胞機能を抑制

■カルシトニンの静注
elcatonin エルシトニン®:1日2回40単位(筋注or生食100mlに溶かして1時間div),3~7日間

1)破骨細胞を抑制することにより,骨Ca溶解を抑制
2)安全で毒性が少ないが,作用が弱い.作用は早く,投与後4~6時間よりあるが,消失も早い.
3)血中Ca濃度の最大低下量は1~2mg/dL.
4)頻回投与によるtachyphylaxisにより効果が減弱してしまうことと,3~4割の患者には無効が問題点.
5)投与期間は2週間までとする.

■ビスホスフォスネート
ゾレドロン酸(ゾメタ®):2~4mgを15分以上かけて(可能な限り緩徐),単回静脈投与.投与間隔は1週間以上あける.
・悪性腫瘍による高Ca血症に適応
・高Ca血症の治療目的では腎機能障害に応じて,必ずしも投与量を減量する必要はない.しかし,Cr 4.5mg/dL以上では安全性が確立しておらず,使用は緊急性があるときに限られる.

1)無機ピロリン酸のアナログで,骨ヒドロキシアパタイトの表面に吸収され,破骨細胞の代謝活性に干渉し,Ca放出を抑制する.
2)経口では高Ca血症改善効果は期待できない.
3)カルシトニンや生食より強力で,中等度や高度の高Ca血症に使われる.
4)1回の投与で約1~2週間のCaのコントロールが可能だが,最大効果は2~4日以降なので,緊急時は生食やカルシトニンと併用する.

■抗RANKL抗体
デスノマブ
・明らかな癌骨転移がある場合に使用可能

血液透析

1)高度の悪性腫瘍随伴高Ca血症で腎不全や心不全がある場合は血液透析(Caなしか低Ca濃度の透析液)を検討する.
2)特に神経学的症状があり,循環動態が安定している場合に適応.腎機能正常の場合は低P血症に注意!

~12mg/dL

経口・経静脈Ca/Vit.D摂取制限
生理食塩水投与(尿量確保)
フロセミド投与検討

12~16mg/dL

無症候性→生理食塩水+フロセミド(尿量>3~4L/日)

症候性→生理食塩水+フロセミド+カルシトニン+ビスホスホネート
・腎不全+心不全があり,進行性・症候性の場合は透析を考慮

16mg/dL~

上記に加え,透析(低Ca透析液)

原疾患に対する治療

骨吸収の増加

原疾患の治療→原発性副甲状腺機能亢進症(副甲状腺摘出術),二次性副甲状腺機能亢進症,悪性腫瘍,甲状腺機能亢進症,Paget病,Vit.A中毒

異常の場が骨である悪性腫瘍や長期臥床などのとき,ビスホスフォネート(骨吸収をおさえるため)が使用される.

腸管からのCa吸収増加

Ca製剤やVit.D製剤の中止
食事のCa制限
・売薬やサプリメントのビタミン剤やCa製剤は見逃しやすいので注意が必要.輸液(ラクテックなど)やIVH製剤にもCaが入っているものが多いので,これらは避けるべき.

原疾患の治療
 Ca摂取の増加(腎不全,ミルク・アルカリ症候群)
 Vit.D中毒(Vit.D製剤,肉芽腫性疾患,悪性リンパ腫,先端巨大症)
 慢性リチウム中毒,サイアザイド系利尿薬,テオフィリン中毒→中止
 褐色細胞腫,副腎不全→原疾患の治療
 中心静脈栄養
 家族性低Ca尿性高Ca血症→経過観察

経口P製剤はCaの腸管吸収を抑制するので効果的であり,特に低P血症は積極的に治療する.

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