帯状疱疹 herpes zoster,水痘 varicella

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus;VZV)の初感染が水痘で,血行性感染で皮膚水疱病変が起こる.

再発が帯状疱疹で,知覚神経節で再活性化し軸索やSchwann細胞などを介して同様の皮膚病変を起こす.

疫学

50歳以上の高齢者に多い.高齢者ほど,PHNに移行しやすく,帯状疱疹が重症化しやすい.

誘因として,過労や老化のほか,外傷,悪性腫瘍,自己免疫疾患,重症感染症,免疫抑制薬や抗腫瘍薬による治療,放射線療法などがある.

2014年水痘ワクチンが定期接種化
→水痘を発症する小児が激減したため,ブースター効果(免疫増強効果)が得られにくくなった.
→20~40歳代での発症が増加.

病態

VZV は,ヘルペスウイルス群に属する DNAウイルスで,水痘治癒後も三叉神経節や脊髄の後根神経節(胸髄,腰髄)に不活化の状態で潜伏感染している.
→免疫機能に異常が生じると,VZV が再活性化し,増殖しながら神経を伝わって,神経支配領域の皮膚に水疱を生じる.

水痘治癒後ウイルスは脊髄後根神経節や三叉神経節にゲノムの状態で一生涯潜伏感染するが,ときどき免疫が低下したときにウイルス粒子を産生(再活性化)し神経支配領域に帯状疱疹を発症させる.

眼科系合併症

三叉神経第 1 枝領域の帯状疱疹では,眼瞼結膜炎,角膜炎,虹彩毛様体炎,ぶどう膜炎,網膜炎などの眼合併症を半数以上に認める.
・視力低下などに注意が必要.

三叉神経第一枝領域の帯状庖疹で,鼻尖部,鼻背部にも皮疹が認められる場合,高率に眼科系合併症をきたすことが知られている(Hutchinsonの法則).

Ramsay Hunt症候群

顔面神経の膝神経節が侵され,耳介の帯状疱疹,顔面神経麻庫,耳鼻科的症状(耳鳴,目眩,難聴)が3主徴であるが,すべてがそろわなかったり,時期がずれて出現することも多い.

耳介周囲のわずかな発赤や腫脹(左右差を注意深く観察する),耳痛や後頭部痛,味覚障害や舌の薄れ等の観察が診断に有用.

帯状疱疹後神経痛 post-herpetic neuralgia;PHN

神経変性によるもの.

皮疹や急性期痛など急性期の症状が重症であるとPHN発症のリスクも高まる.

皮疹重症例では発症に留意する必要があり,皮膚症状が治癒した後も痛みが残存し,患者のQOLを著しく低下させてしまう.

PHNへの移行を防ぐことは難しく,また確実に治療する手段も確立していない.

臨床経過

皮疹

典型例では,片側の支配神経領域に一致した,疼痛を伴う皮疹(紅斑,丘疹,水庖)が見られる.
・通常,左右のどちらか一方で,浮腫性の紅斑 → 小丘疹 → 小水疱へと変化する.
・皮疹の新生は約5日間ほど続き,痂皮化する.

疼痛

皮疹出現数日前から痛み(前駆痛)が出現する例もある.

皮疹治癒後に残る帯状疱疹後神経痛は,耐えがたい痛みのことが多い.

運動麻痺

稀に認められる.

三叉神経第 1 枝領域の帯状疱疹では,外眼筋麻痺,耳介や外耳道では顔面神経麻痺が合併しやすい.四肢では三角筋麻痺や大腿四頭筋麻痺,体幹では肋間筋麻痺や腹直筋麻痺がみられる.

検査所見

血清学的検査

ELISA による IgG抗体と IgM抗体の測定を行う.IgM抗体は帯状疱疹の発症時にも陽性になる.

ウイルス学的検査

水疱内容液や口腔ぬぐい液を,ニワトリ胎児細胞や Vero(ベロ)細胞などに接種し,VZV を培養する.
→ウイルスが陽性であれば細胞変性が起こる.

同定は,抗VZVモノクローナル抗体を用いた免疫蛍光法で行う.

組織中より VZV の DNA を増幅し,PCR検査する方法もある.

デルマクイック®

組織学的検査

水疱内容液を塗抹し,細胞内に特有の封入体を認める.

確定診断には,抗VZVモノクローナル抗体を用いた免疫染色を行う.

特異性が高く迅速.

治療

重症度判定

患者の年齢,発症部位,発病(出現日)からの経過,皮疹,疼痛の重症度,合併症の有無をチェック

皮膚病変が支配神経領域内に占める割合で軽症(30%未満),中等症(30~70%未満),重症(70%以上)を判定することが多い.

免疫抑制患者の帯状庖疹では,水疱の新生が続いたり,大きい個疹が見られたりする.
さらに皮疹の治癒が遷延化すると広範囲で,深い潰蕩形成をきたす.
汎発疹や複発性帯状疱疹を見た場合も,患者の免疫抑制状態を疑う.

皮疹部の炎症が強い場合は,局所の強い腫脹や血疱を伴うことがある.
→急性期痛が強く,PHN発症に留意しながら治療を進めていく.

抗ヘルペスウイルス薬

治療の基本は,抗ヘルベスウイルス薬の全身投与.
皮疹出現からできれば48時間以内に開始する→初診時の診断が重要

帯状抱疹の早期治療には,皮疹の拡大を阻止して重症化を防ぐ,急性期痛を軽減させる,知覚神経損傷を軽減させてPHNの発症をある程度抑止するなどの意義がある.

病初期から十分な期間投薬を行う
必要に応じて減量する(腎機能低下,高齢者)
疼痛の有無,その重症度と性質(アロディニアなど)を少なくとも2~3週間は観察する.

抗ウイルス薬の投与量は薬剤のバイオアベイラピリテイ(生物学的利用能),大規模臨床試験によって決められており,臨床的に軽症だからといって安易に減量すべきではない.

抗ウイルス薬は腎排泄性であり,過量投与で腎障害や精神神経系の障害(脳症,構語障害,幻覚,譜妄など)を引き起こす可能性があるため,腎機能に応じた減量投与を行う.
・高齢者に対しては,場合により減量を考慮する.
・一般に高齢者は水分摂取量が低下しているため,抗ウイルス薬内服中は飲水を促す.

一般的に軽症~中等症の帯状宿疹については内服薬で十分治療可能.

発症部位によって,特別な合併症出現のリスクがあるので必要に応じて予防(内服ステロイドの併用),専門医受診を考える.

重症例,免疫低下を伴う症例では入院のうえ,点滴による加療を考慮する.
・免疫低下を伴うような基礎疾患を伴う症例(汎発疹を伴う症例,複発性帯状疱疹など)
・皮疹重症例や,高度の疼痛を有するなどPHN発症リスクの高い症例
・三叉神経第一枝領域の帯状疱疹
・運動神経麻痺を伴う症例(Ramsay Hunt症候群,S3-4領域の帯状庖疹による尿閉)
・発熱,頭痛,悪心,幅吐など中枢神経合併症を疑う症例

アシクロビル,バラシクロビル

アシクロビル:ゾピラックス®400mg 10錠 分5 5~7日間
 重症例:ゾビラックス®250mg 1回5mg/kg 1日3回 点滴静注 7日間

バラシクロビル:バルトレックス®500mg 6錠 分3 5~7日間
→アシクロビルのプロドラッグ(プロドラッグのため高い血中濃度が得られる)
ジェネリックあり

グアニン誘導体→ウイルス性のTKで活性化されて効果を示す.

ファムシクロビル

ファムビル®
ジェネリックあり

ベンシクロビルのプロドラッグ
→プロドラッグのため高い血中濃度が得られ,抗ウイルス作用を発揮するうえで効果的

グアニン誘導体→ウイルス性のTKで活性化されて効果を示す.
単純疱疹,帯状疱疹の皮膚病変に対する効果はほぼ同じ.

アメナメビル

アメナリーフ®
1日1回投与.

腎機能低下例での投与量の減量が必要ない.
・糞便から70%が排泄される.
・今まで入院治療を選択していた患者の一部で,外来の内服治療ができるように.

ヘリカーゼ・プライマーゼ活性を直接阻害することで、二本鎖DNAの開裂及びRNAプライマーの合成を抑制し、ヘルペスウイルスの増殖を初期段階で阻害.
in vitroでVZVとともにHSVの増殖も抑制する.
・皮疹発現後早期の患者,軽度の免疫抑制状態の患者に核酸系より有効?

外用剤

帯状抱疹の急性期におけるNSAIDs外用剤や抗ウイルス外用剤の有効性をプラセボと比較した試験では,いずれも有意差が認められておらず,これらの外用剤を使用する明確なエピデンスは今のところ存在しない.

皮疹治療の促進を目的とした各種創傷治療用外用剤や被覆剤は痔痛軽減効果もあり,特にびらん,潰瘍がある場合には使用する.

アズノール軟膏 1日1~2回

急性期疼痛管理

NSAIDsは帯状抱疹急性期に使用されることの多い抗炎症薬であるが,胃粘膜障害や腎血流量低下の副作用がある.

高齢者に帯状疱疹の発症が多いことも考えると,急性期の疼痛管理にはアセトアミノフェン(カロナール®)の使用が推奨される.

疼痛が強い場合は,ステロイド.
プレドニン錠5mg 6~12錠 分1~3 漸減し7~14日で中止

帯状疱疹後神経痛にはメチコバール.

帯状疱疹治癒後も PHN が数か月~数年にわたり持続することがあり,痛みの強い場合には交感神経節ブロックなどが必要になる.

予防

岡株水痘ワクチン(弱毒性水痘ウイルス)

野生型である岡原株から弱毒化された生ワクチン.
発症リスクを下げることができ,発症したとしても重症化を防げる.
・約3年間の追跡で,帯状疱疹の発症を51.1%に減らし,PHNへの移行を66.5%に減らした.

ワクチン接種後,そのウイルスが生体内で増殖することになり,それによって持続性のある液性免疫に加えて細胞性免疫も誘導できる.

安全性でも優れている(30年以上使用されている).
生ワクチンであるため,妊婦には禁忌.

任意接種ワクチンであり,接種率は徐々に向上はしているものの,50%程度にとどまっている(流行抑制には90%必要).
定期接種化には2回接種法の導入が望ましい.

抗体陽転率が良好で安全性が高いワクチンであるが,20~30%の接種者に接種後罹患が認められる

緊急接種(水痘患者との接触後72時間以内),免疫抑制児,免疫能が低下した高齢者(50歳以降はワクチン接種が望ましい).

シングリックス

2018年承認

VZVの糖蛋白に免疫を増強するアジュバントを添加したサブユニットワクチン.

筋肉注射の2回接種.

50歳以上の健常者で帯状疱疹の発症を97.2%減らし,PHNへの移行を91%減らした. N Engl J Med 2015;372:2087-2096

第Ⅲ相臨床試験では,局所性・全身性の副反応が60~80%に発現し,副反応が比較的多いことが指摘されている(プラセボと同等).

免疫不全者に投与できる.

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