肝腎症候群 hepatorenal syndrome;HRS

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なすび医学ノート

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肝硬変や劇症肝炎による慢性・急性肝不全において,急性腎障害がしばしば発症する.

・肝硬変末期において肝不全が不可逆的に進行した時期に発症する.

・本体は腎皮質血管攣縮による腎内血行動態の不安定状態と,腎内血流分布異常で,著しい腎血流障害と糸球体濾過値の減少とは対照的に尿細管機能が保たれている点で急性尿細管壊死と異なる.

・本症候群は可逆的な機能性の病態で,肝移植が成功すると腎不全は速やかに回復する.

疫学

肝移植未実施での6カ月後の生存率はⅠ型で10%,Ⅱ型で40%程度と, HRS未発症の肝硬変の生存率80%に比較して予後が悪い.

病型

HRSは臨床経過から,発症が急速(2週以内に血清Cr値の2倍化)なⅠ型と,やや緩徐なⅡ型に分類される.

・臨床経過により2型に分類されている.

Ⅰ型

急速な経過をとるもので発症後2週間以内に血清クレアチニンが病初期の2倍となり,2.5mg/dLを超えるもの.

特発性細菌性腹膜炎(SBP)を合併する症例はこの型をとる.

尿細管障害は顕著でなく,浸透圧尿/血漿比>1,Cr尿/血漿比>30であることが鑑別の参考となる.

Ⅱ型

緩徐な経過をとるもので,難治性腹水を伴い,BUN≦50mg/dl,Cr≦2mg/dl以下が通常である.

病態

一酸化窒素(NO)などの血管拡張因子の作用増加で,皮膚や消化管を中心とする内臓の血管拡張による血液貯留(血流分布異常)による有効血流量の減少と,門脈圧充進による求心性肝臓神経,遠心性腎交感神経の活性化から成る肝腎反射(hepato-renal reflex;HRR)に基づく腎血管収縮に起因する腎皮質血流量低下と考えられる.

代償期には,遠心性腎交感神経活性化によるレニン放出増加・レニン-アンジオテンシン系(RAS)の活性化を介したNa-水の体内貯留によって腎血流が保たれるが,さらに有効血築量,腎血流量が低下するとAKIが発症する.

症候

腎前性腎不全であり,乏尿となる.腎組織には器質的・病理学的な変化は認めない.

腎臓の血管を拡張させる物質(カリクレイン-キニン系やプロスタグランディンなど)が減少し,逆に腎臓の血管を収縮させる物質(トロンボキサン,ロイコトルエンなど)が増加.

超音波ドプラー

腎血管抵抗インデックス(resistive index;RI)は腎機能の低下が明らかになる前から腎血行動態の鋭敏な指標になり,発症予知に有用.

血管作動性物質の代謝障害による不均衡によって生じる腎血管抵抗の増大や腎の糸球体血流量の低下(腎皮質の虚血)に起因する.
→細胞外液量は増加しているにも関わらず,腎臓にはNa貯留をするようにといった誤った,強力なシグナルが送られている.

診断

肝不全患者のAKIの早期診断には血清シスタチンC値が有効とされる.

診断基準 (International Club of Ascites 2015)

新たな診断基準では,利尿薬を2日間を中止して,アルブミン輸液(1g/kg体重,最高100g)により循環血液量を増加させても,血清クレアチニンが1.5mg/dL以下に低下しないに変更されている.
*保険適応外

・糸球体濾過率の低下(血清Cr>1.5mg/dLまたは24時間CCr<40mL/min)

・ショック,細菌感染,体液喪失,腎毒性薬剤の投与がない.

・利尿薬を2日間を中止して,アルブミン輸液(1g/kg体重,最高100g)により循環血液量を増加させても,血清クレアチニンが1.5mg/dL以下に低下しない

・蛋白尿が<500mg/dayで,エコー上閉塞性の尿路病変や実質性腎疾患がない.

鑑別

・出血,感染,腹水穿刺,利尿薬投与,手術などを契機に腎不全が発症する場合は,腎前腎不全との鑑別が問題になる.
*新しい診断基準では利尿薬を2日間中止し,アルブミン輸液(1g/kg体重,最高100g/day)により循環血漿量を増加させても血清Crが1.5mg/dL以下に低下しないときは肝腎症候群と診断する.

治療

予防

大量の腹水が存在し体液貯留が顕著である非代償期の肝硬変では,利尿薬や腹水穿刺による腹水除去とアルブミン製剤使用による有効血流量改善は有効.

循環血液量確保

まず,循環血液量確保のためにアルブミンを補充し,血管収縮薬を投与する

内臓および末梢血管の収縮作用をもっパソプレシンV1作動薬(terlipressin),α-アドレナリン作動薬(norepinephrine,ミドドリン),ソマトスタチン作動薬(オクトレオチド)などの薬剤と,血漿容量確保のためのアルブミン製剤静脈内投与との併用が腎機能を改善させること(HRSからの脱却)が報告されている.
・ 特にバゾプレッシン合成アナログterlipressinの臨床効果は注目され,2~12mg/dLの用量でアルブミン静注(第1日1g/kg体重以後20-40g/day)と併用することにより,65%の1型肝腎症候群で腎機能の回復が報告され,肝腎症候群からの回復は生存率の改善につながるとされている.
・アルブミン併用条件下ではノルアドレナリンの1型・2型肝腎症候群に対する効果はterlipressinと同等であったとの最近の成績もある.
→本邦ではterlipressinの認可がなかなか進まないため,当面はノルアドレナリン投与などを試みるよりほかはないと思われる.

輸液により回復することがなく,腹水が増えるだけ.

血流動態の改善のための管血管拡張作用をもつ薬剤であるドパミン製剤, RAS抑制薬,プロスタグランジン製剤,エンドセリン括抗薬などの有効性は証明されていない.

門脈圧減少

trans-jugularintrahepatic portosystemic shunt;TIPS

腎機能の改善と腹水軽減が得られる.
1型肝腎症候群では予後の改善にもつながりえる.
→適応症例を選べば有効な治療法

肝移植

長期的な腎・生命予後改善の唯一の方法は肝移植とされるが,腎機能低下度と肝移植後生存率が逆相関するので,腎機能低下例の適応には留意が必要.

△血液浄化療法

肝硬変患者に発症したAKIに対する血液浄化療法は,肝移植を前提とする場合以外は意義が少ないとされ,予後はATNもHRSで相違はないとされる.

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