E型肝炎 hepatitis E

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なすび医学ノート

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熱帯や亜熱帯の衛生環境が整っていない発展途上国で繰り返し発生している流行性肝炎であったが,最近10 数年の間に以下の事実が明らかになってきている.

1)E型肝炎が人獣共通感染症というもう1 つの側面を持ち,その原因ウイルスであるE型肝炎ウイルス(hepatitis E virus;HEV)が飼育ブタや野生イノシシ,シカ等の動物にも感染し,我が国でも土着化し,常在している.
2)ブタやイノシシ等の動物の肉や内臓を生あるいは加熱不十分な状態で摂食することによる感染がある.
3)発展途上国では,妊婦でのE型劇症肝炎が知られているが,我が国を含む先進国では,中高年男性のE型肝炎患者が多く,中高年男性での重症化や劇症化が看過できない頻度で認められる.
4)臓器移植患者や血液疾患患者,ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)感染者等の免疫能が低下した患者では,HEV感染が高頻度に慢性化し得る.

疫学

E型肝炎は世界各地で発生しており,WHO(World Health Organization)の推計によると,年間2,000 万人がHEVに感染し,330 万人がE型肝炎を発症している.
→E型肝炎関連死亡者は,2015年には約44,000人が死亡していると推定されている(WHO).

本邦の感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)の改正(2003年11月施行)によって,A型肝炎とともに4 類感染症に分類され,保健所への届出が義務付けられている.
・年間約15万人がHEVに感染していると推定されており,発症率を1%と低く見積もっても,1,500人がE型肝炎を発症していると見込まれ,見逃し例や未届け例が未だ多いと考えられる.

中年男性の発生が多い.

原因

日本では,ブタがHEVの感染源として最も多いと考えられている.
・HEVに汚染された豚舎では,多くのブタが生後まもなく感染するが,一般的な出荷時期である6カ月齢には,血中からは排除されていることが明らかになっている.
・ブタの内臓や肉を加熱不十分で喫食した場合には感染源となりうる.
(2015年から食品衛生法に基づき,ブタの肉・内臓を生で食べることを目的としての販売提供することが禁止された)

HEVは輸血でも感染することも報告されている.

感染源が不明の場合も多い.

病態

HEVは,全長約7,200塩基の1本鎖(プラス鎖)のRNAをゲノムとするRNA(ribonucleic acid)ウイルスでへぺウイルス科(Hepeviridae family:Hepe は肝炎のHepとE型のeに由来)に分類されている.

HEV粒子は直径約30nmであり,ゲノムはエンベロープタンパクをコードしておらず,non-enveloped virusと考えられてきたが,最近になり,血中ではquasi-envelopeと呼ばれる宿主細胞の脂質膜により覆われていることがわかった.

E型肝炎の二面性
HEV感染によって惹起されるE型肝炎は,衛生環境が整備されていないアジアやアフリカ等の発展途上国での流行性肝炎としての側面と,衛生環境によらず,世界各地で認められる人獣共通感染症(動物由来感染症)としての側面があることが明らかになっている.

E型肝炎患者から分離されるHEVは,主に1型から4型までの4種類の遺伝子型に分類されている.
・1型と2型のHEVがヒトのみに感染し,古くからの流行性肝炎の原因となっているのに対し,3型と4 型のHEVはブタ・イノシシ・シカ・ウサギ・ラクダなどの動物を主たるリザーバーとし,ヒトでの散発性E型肝炎の原因となっている.
・遺伝子型の分布には地域特異性があり,1型はアジア・アフリカ諸国のE型肝炎流行地域に分布し,2 型はメキシコ,ナイジェリアならびにナミビア等のアフリカ諸国に分布している.
・3型は世界に広く分布しているのに対し,4型は本邦のほか,中国や台湾,ベトナム,インドネシア等のアジア地域に主として分布している.
・本邦では3型が最多であり,次に4型が多い.
・4型は重症化しやすいことが報告されている.

慢性化

HEV感染は通常一過性であるが,免疫能が低下した状態にある臓器移植患者では,約7割の頻度で慢性化することが報告されている.
→慢性化状態を放置すると,約1 割の患者が肝臓の線維化の急速な進展により肝不全に至り,不幸な転帰をたどることが報告されている.

リバビリン投与で排除できる可能性あり.

症候

感染すると2~9週間(平均6週間)の潜伏期間を経て,A型肝炎と類似した倦怠感や黄疸などの症状で発症する.

無症状の不顕性感染も多いと考えられているが,発症すると10~20%の症例で急性肝不全や黄疸遷延などの重症化を認める.

妊婦に感染すると急性肝不全を発症しやすいことが報告されている.

診断

IgA型HEV抗体

感染早期に上昇するIgA型HEV抗体が感度・特異度に優れていることから,2011年10月に保険収載された.

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