A型肝炎 hepatitis A

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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疫学

A型急性肝炎は世界中でみられ,年間約140万人と考えられている.

WHOは,年間約7000人がA型肝炎で死亡していると推定している.

一般的に上下水道の整備が不十分な発展途上国では感染が広がっているが,先進国での感染は減少している.

本邦でも,A型肝炎が減少するにつれ,HAV抗体保有者は高齢化し,2015年の調査では,50歳未満では2%未満しか抗体陽性はいない.
→2018年の流行では,男性間性交渉者(men who have sex with men;MSM)に多かった.

病態

A型肝炎ウイルス hepatitis A virus;HAV

約7,500塩基長の一本鎖RNAをゲノムとするウイルス.
・ゲノムにはエンベロープをコードする領域が存在せず,直径約27nmのカプシドのみの1重構造と考えられてきた.

最近になり,宿主細胞由来のquasi-envelopeと呼ばれる脂質膜に覆われた状態で肝細胞から放出されていたことが明らかになった.
・この膜はエクソソーム放出機構を利用して形成され,ウイルスを中和抗体から防御していると考えられている.
・糞便中では胆汁等の作用により膜は失われている.
・肝細胞に親和性を有しているが,基本的には直接的な細胞障害は示さず,宿主の免疫応答を介して肝炎を引き起こす.

Ⅰ~Ⅶ型の7つの遺伝子型が報告されている.
・ヒトから検出されるのはⅠ~Ⅲ型.
・Ⅰ型のうちⅠA型は世界中で広く認められ,日本でも土着していると考えられている.
 RIVM-HAV16-090(EuroPride)株はMSM間で流行した.
・日本ではⅢA型やⅠB型も認められる.

感染経路

基本的には,糞口感染により伝播し,感染している人との接触もしくは汚染された食物や水の摂取により汚染される.

免疫

HAVに感染すると中和抗体が産生され,終生免疫が得られると考えられている.

症候

HAVに感染した場合,2~7週間(平均4週間)の潜伏期間を経て発症する.

一般的な症状は,嘔気,食欲不振,発熱,倦怠感,腹痛などで始まり,数日~1週間以内に黄疸や褐色尿を呈することが多い.

A型急性肝炎が疑われる場合は,患者の人権に配慮しつつ,最近の流行を踏まえた感染経路の聴取とHIVなどの性感染症が合併している可能性に注意する.

診断

A型急性肝炎の診断には,感染後早期に上昇するIgM型HAV抗体が用いられる.
・肝炎発症直後では陽性とならない場合がある.

感染症法に規定される4類感染症であり,診断した場合は直ちに最寄りの保健所長を経由して,都道府県知事に届け出る.

治療

通常は一過性の感染であり,対症療法のみで治癒する.

1%未満の頻度の頻度で,昏睡型急性肝不全(劇症肝炎)を発症する場合があり,慎重な経過観察を要する.

予防

ワクチンが有効.

本邦では,発展途上国への渡航者,医療従事者,基礎疾患保有者,MSMなどが接種対象者として考えらえる.

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