肝血管腫 hepatic hemangioma

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なすび医学ノート

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肝血管腫は中胚葉起源の腫瘍であり、海綿状血管腫と血管内皮腫に大別される.
前者がほとんどで血管内皮腫は稀で,臨床的に問題となるのは海綿状血管腫.

疫学

海綿状血管腫は最も頻度の高い肝良性腫瘍.
・剖検例or腹部超音波スクリーニングにおける頻度は0.4~-10%.

一般に女性に多いといわれているが,性差なしとの報告もみられる.

病態

海綿状血管腫は血管の腫瘍性増殖ではなく,血洞拡大を伴う血管奇形といわれている.

病因についてはいまだ十分に解明されていないが,その発生には先天性の要因が強く,悪性転化はないとされている.

通常は単発で,剖検例における多発病変は約10%といわれている.

発生部位として左右差はなく,多くは5cm以下.

肉眼的には,紅紫色の境界明瞭な軟らかい結節性腫瘤で,しばしば薄い線維性被膜を持ち,血管内皮で構成される拡張した血洞がスポンジ様構造を形成している.
時に新鮮あるいは器質化血栓や硝子様変性,繊維化,石灰化を伴う.

組織学的には,嚢状に拡張した血管が多数集簇して形成されている.

肝血管腫の自然歴は十分に把握されていないが,その多くはほとんど大きさに変化がない.
・平均32ヶ月の経過観察で約10%の症例に増大を認めたとの報告もある.
・肝血管腫の破裂例はおそらく1%以下.

稀ではあるが,特に幼小児で巨大血管種内に広範囲の血栓が生じ,血小板減少と凝固因子の急激な低下のために出血傾向(DIC)をきたす病態がある(Kasabach-Merritt症候群).

症候

腹部画像診断で偶然に発見されることが最も多く,剖検時あるいは開腹時に偶然見つかる場合もある.

ほとんどは無症状であるが,大きな血管腫は周囲臓器への圧迫症状として腹部膨満感・不快感・嘔気.嘔吐・腹部腫瘤として発見されることが多い.
・大きさが10cmを超えると約90%に圧迫症状などが出現する.
・大きな肝血管腫であってもその症状の原因として特定できない場合も約半数.
・血栓形成とともに急速に増大する血管腫では,肝被膜の伸展に起因する疼痛を伴う場合がある.

血管腫内に新鮮血栓が形成されると発熱や肝機能異常をきたすとの報告もある.

血液検査

合併症がない場合には肝機能は正常であり,肝血管腫に特異的なものはない.

Kasabach-Merritt症候群ではDICの状態であり,血小板低下に加えて,フィブリノーゲンの減少,FDPの増加がみられる.

腹部エコー

1.5cm以下の小さな血管腫では,境界明瞭で内部エコー均一な高エコーを呈する.
全体としてはほぼ球形を呈するが,境界線は細かい凸凹がある.
・高分化で脂肪成分を有する小肝細胞癌や限局性脂肪浸潤との鑑別は困難な場合がある.

大きな血管腫では辺縁に高エコー帯(marginal strong echo)を伴い,中心部は不均一な低エコーを呈する.

全体としていびつな形状を呈し,周囲には被膜や被圧排組織に由来する低エコー部分はみられない.

CT

単純CTで辺縁が比較的明瞭な低吸収域として描出され,約10%に石灰化が見られる.

造影CTでは,比較的早期の腫瘍周辺の濃染と,経時的な辺縁から次第に中心部に向かう濃染の拡がりが特徴的で,濃染が長時間持続する.
・小さいものでは造影早期に腫瘍全体が濃染したり,濃染域が中心部に出現することがあり,肝細胞癌との鑑別に難渋することがある.

MRI

通常,T1強調画像で境界明瞭,均一な低信号,T2強調画像で境界明瞭,均一な強い高信号を呈し,診断上最も有用とされている.

造影MRIでは,造影CTと同様の濃染パターンを呈する.

治療

治療方針を決定する上で,自覚症状の有無,血管腫の増大傾向の有無,血管腫に起因する合併症(Kasabach-Merritt症候群・破裂など)の有無などが重要.

経過観察

通常,ほとんどの血管腫が治療の対象とならない.
5cm以下,無症状の場合→経過観察.年1回程度のエコーを行うのが望ましい.
8 or 10cm以上+無症状の場合→経過観察可能.

手術

手術療法の中心は肝切除術であるが,欧米では巨大肝血管腫で切除不能例に対する肝移植の報告もみられる.

血管腫の破裂は極めて稀であるが,致死的合併症であり死亡率は60%を超える.
→肝動脈塞栓術を先行して循環動態の安定化をはかり,待機手術で肝切除を行うことが勧められる.

肝海綿状血管腫の手術適応
・Kasabach-Merritt 症候群
・破裂例(肝動脈塞栓術を先行する場合あり)
・血管腫の急速増大
・血管腫の増大とともに症状が悪化する
・血管腫に起因する中等度以上の症状を有する

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