肝性脳症 hepatic encephalopathy

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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肝障害や門脈-大循環シャントが原因で起こる精神神経症状で,昏睡度により顕性脳症と不顕性脳症に分類される.

原因

誘因には蛋白質の過剰摂取,便秘,消化管出血,感染症,脱水などがある.

治療

不顕性脳症については,診断法自体がまだ統一されていない.

誘因の除去

誘因を特定し,誘因の除去を治療の基本とする.

アミノ酸製剤

羽ばたき振戦や意識障害を伴う顕性脳症に対しては,肝不全用アミノ酸製剤注射液を点滴静注する.

ラクツロース

ラグノスゼリー®

難吸収性抗菌薬

リフキシマ®

腸管内のアンモニア産生菌(Clostridium, Bacteroides など)に作用することで血中アンモニアを低下させる.

その他

亜鉛欠乏症やカルニチン欠乏症を有する際には,これらの補充が推奨される.

血液透析の場合

HD後に起こる肝性脳症の病態生理は,透析での除水などにより下大静脈などの大循環が門脈に対して相対的に陰圧となり,門脈血流が肝臓を通過せず門脈-大循環シャントを介して,直接大循環に流入するためとされる.
→門脈-大循環シャントを有する場合は,肝を通過していない門脈血が大循環に流れ込むことで肝性脳症を発症する.
・非肝硬変の健常者ではHD前後で肝血流は明らかな変化を認めないが,肝硬変を合併し門脈-大循環シャントのある HD患者はHD中にドップラー超音波で測定された門脈血流が低下する例が報告されている.

肝性脳症の最大の惹起物質は腸で主に産生されるアンモニアとされ,その管理も肝性脳症の発症予防に重要.
1)カナマイシンなどの難吸収性抗菌薬やラクツロースの投与は,腸でのアンモニアの産生や吸収を抑制することができる.
2)窒素源となる蛋白の過剰摂取や消化管出血は避け,透析患者の52%にみられる便秘も腸からの中毒物質の吸収を促進するため避ける必要がある.
3)ヘリコバクターピロリはウレアーゼ活性を持ちアンモニアを産生するため肝性脳症の原因となりえるため,感染を認めた場合は除菌も有用となる可能性がある.
4)アンモニアの代謝については代謝経路である尿素サイクルに必要な亜鉛やカルニチンが不足しないようにする.
5)骨格筋などでのアンモニア代謝経路であるグルタミン合成系に必要なBCAAも,透析患者では有意に低下するとされるアミノ酸であるため欠乏しないように留意する必要がある.
6)アンモニアの排泄については,高アンモニア血症時には30%以上のアンモニアが尿から排泄されるが,慢性腎不全では腎のアンモニア排泄能は低下する.

非透析患者の肝性脳症をHDFで改善できた報告は多いが,その有用性は肝性昏睡惹起物質である分子量が5,000程度の中分子を除去できた点にあるとされる.
HDF の利点はほかにも等張性置換液を補充することで血漿浸透圧を維持することができ,より血行動態を安定できる点がある.
→大循環の門脈に対する相対的陰圧を低減でき門脈血流をより保てる.

血中のアンモニアはアンモニウムイオンからアンモニアに変換されることで脳内移行し肝性脳症を惹起するとされる.
1)アルカレミアではアンモニウムイオンからアンモニアへの変換が促進されるため,透析液や補充液からの重炭酸イオンの負荷には注意する必要がある.
2)HD後の低カリウム血症も,細胞内からのカリウムの流出と細胞内への水素イオンの流入を起こすことでアンモニウムイオンが水素イオンとアンモニアにわかれるためアンモニア濃度の上昇をきたすとされ,避ける必要がある.

製剤のpHが5.5~6.5であるアミノレバン®をHD開始2時間後から透析回路より投与する.
透析液からの重炭酸イオンの負荷を避けるため,透析液の重炭酸イオン濃度を25mEq/Lに低減する.

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