肝硬変 Hepatic Cirrhosis

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なすび医学ノート

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肝臓全体に再生結節が形成され,再生結節を線維性隔壁が取り囲む病変.肝疾患の終末像.

肝実質細胞の減少,線維化と構造改築による血流障害,門脈-大循環シャント形成など

門脈圧亢進,腹水,肝性脳症,肺障害,心障害,腎障害,血清Na↓などを引き起こす.

腸内細菌叢のdysbiosisや腸管透過性の亢進が生じ,肝性脳症や易感染性などと関連している.

肝癌のリスクが極めて高く,注意が必要.

原因

C型肝炎の比率が減少し,アルコール性や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の比率が増加している.

病態

肝機能が良く保たれ臨床症状がほとんどない代償性肝硬変と,肝性脳症,黄疸,腹水,浮腫,出血傾向など肝不全に起因する症状が出現する非代償性肝硬変に分類される.

代償性肝硬変

非代償性肝硬変

acute-on-chronic liver failure;ACLF

Child-Pugh(CP)スコア 9点以下の肝硬変患者における肝機能の急性増悪であり,何らかの誘因により発症・増悪し,28日以内に急激に肝不全に至る病態.

多臓器にわたる集学的治療を必要とし,致死率が高い.

病態はまだ十分に解明されておらず,実態も不明な点が多い.

診断基準案

Child-Pughスコアが5~9点の代償性or非代償性肝硬変に,アルコール多飲,感染症,消化管出血,原疾患増悪などの増悪要因が加わって,28日以内に高度の肝機能異常に基づいて,PT-INR≧1.5 or プロトロンビン活性≦40%で,血清総ビリルビン値≧5.0mg/dLを示す肝障害をACLFと診断する.

重症度分類

肝,腎,中枢神経,血液凝固,循環器,呼吸器の臓器機能障害の程度に応じて4段階に分類する.

肝臓:血清総ビリルビン値≧12mg/dL
腎臓:血清クレアチニン値≧2mg/dL or 血液透析の実施
中枢神経:昏睡Ⅲ度以上の肝性脳症(犬山分類)
血液凝固:PT-INR>2.5 or 末梢血血小板数≦20,000/μL
循環器:ドパミン or ドブタミンの投与
呼吸器:PaO2/FiO2≦200 or SpO2/FiO2≦200

Grade 0
1)臓器機能不全なし
2)腎臓以外の単一臓器機能不全で,血清クレアチニン値<1.5mg/dL and 肝性脳症なし
3)中枢神経の単一臓器機能不全で,血清クレアチニン値<1.5 mg/dL

Grade 1
1)腎臓機能不全のみ
2)肝臓,血液凝固,循環器 or 呼吸器いずれか単一臓器機能不全で,血清クレアチニン値 1.5~2mg/dL or 昏睡Ⅰ・Ⅱ度の肝性脳症
3)中枢神経の単一臓器機能不全で, 血清クレアチニン値 1.5~2mg/dL

Grade 2
2臓器以上の機能不全

Grade 3
3臓器以上の機能不全

合併症

腹水

単純性腹水
感染や肝腎症候群を伴っていない腹水
 Grade1:少量の腹水で,画像診断でしか診断できないもの
 Grade2:中等量の腹水で,理学的に貯留が明らかなもの
 Grade3:大量の腹水で,腹部が膨満しているもの.

複雑性腹水
①難治性腹水
 利尿薬抵抗性腹水:食事の塩分を制限し,利尿薬やアルブミン製剤を使用しても減少しないもの
 利尿薬不耐性腹水:利尿薬の増量により,腎機能低下や肝性脳症が発生するもの
②特発性細菌性腹膜炎

*難治性腹水=医学的治療により減量困難な腹水 or 早期再発がみられる腹水
・少なくとも1週間の集中的な利尿薬治療と塩分制限を受けてなければならない.
・早期再発とは,医学的治療により,初回の腹水減少が得られたあと,4週間以内にGrade 2 or 3の腹水が再発した場合とされる.

肝性脳症

肝腎症候群 hepatorenal syndrome;HRS

サルコペニア

肝疾患では,PEMなどに起因する二次性サルコペニアを来たしうることから年齢を除外し,測定の困難さから歩行速度の測定を除外し,握力と筋肉量のみを用いる.

治療は,栄養・運動療法が基本となる.

薬物療法については,BCAA製剤やL-カルニチンが有効であるという報告があるが,大規模な臨床研究がなくエビデンスの高い結果が得られていない.

肝肺症候群

門脈圧亢進症を伴う肺動脈性肺高血圧症 portopulmonary hypertension;PoPH

門脈圧亢進症に伴い肺血管抵抗を上昇し,肺高血圧に至る.

治療は肺動静脈性肺高血圧症に準じて行われるが,適切に診断・治療しなければ予後は不良.

診断

gold standardは肝生検による病理組織学的診断であるが,侵襲的な検査であり,sampling errorと評価者間の組織診断の不一致という限界がある.

非侵襲的な方法として,血清線維化マーカー,複数の血液生化学的検査所見を組み合わせたスコアリングシステム,超音波エラストグラフィやMRエラストグラフィなどの画像診断により総合して診断する.

リスク群の抽出

本人:B型肝炎,C型肝炎,飲酒,輸血,肥満,糖尿病,肝機能異常など

家族:肝疾患家族歴,吐血歴など

身体所見で疑う

酒皶(しゅさ),手掌紅斑,クモ状血管腫,女性化乳房,黄疸,脾腫大,腹水,肝左葉腫大,腹壁静脈怒張,下腿浮腫,掻痒感など

生化学的検査

ヒアルロン酸,Ⅳ型コラーゲン・7S,P-Ⅲ-P,M2BPGi,オートタキシン

スコアリング

FIB-4,APRI,Hapascore,C型肝硬変の判別式など

画像検査

腹部超音波,腹部CT,腹部MRI

上部消化管内視鏡検査(食道胃静脈瘤)

超音波elastography

MR elastographyは保険適応外

肝生検

治療

栄養療法

肝臓は,栄養・エネルギー代謝制御において中心的な役割を果たす臓器であるため,肝予備能が低下した肝硬変患者では,さまざまな栄養障害を合併する.

特に蛋白・エネルギー低栄養(protein-energy malnutrition;PEM)の悪化に関与しているため,適切な栄養評価と栄養療法を行うことが重要.

エネルギー摂取量
耐糖能異常がない場合,25~35kcal/標準体重kg/日

蛋白質必要量
蛋白不耐症がない場合は,1.0~1.5g/kg/日

分割食
飢餓状態を短くするために,約200kcal程度の就寝前軽食(late evening snack;LES)を含めた1日4~6日の分割食が推奨されている.

分岐鎖アミノ酸 branched-chain amino acid;BCAA
低アルブミン血症を認め,経口食によって十分な蛋白質摂取ができない場合に検討.
効能効果は,「食事摂取量が十分にも関わらず低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善」.血清アルブミン値≦3.5g/dLが適用対象.

肝不全用経腸栄養剤
効能効果は,「肝性脳症を伴う慢性肝不全患者の栄養状態の改善」

初期評価

①蛋白低栄養(血清アルブミン≦3.5g/dL)
②Child-Pugh B or C
③サルコペニア(JSHの基準を用いて判定)

すべてなし

BMI<18.5
栄養食事療法・指導+一般経腸栄養剤(+BCAA含有食品)

BMI 18.5~25.0
栄養食事療法・指導

BMI>25
栄養食事療法・指導+生活習慣改善

いずれかあり

栄養食事療法・指導(分割食・LESを含めて検討)+肝硬変合併症に対する薬物療法

定期的な栄養状態・食事摂取量の評価
肝予備能,蛋白不耐症,サルコペニアの評価

腹水 or 肝性脳症があれば,肝不全用経腸栄養剤
低アルブミン血症があれば,分岐鎖アミノ酸顆粒

2ヵ月介入して効果判定
*改善がない場合は,他の治療に切り替えるなど適切な処置を行う.

非ウイルス性肝硬変の治療

自己免疫性肝炎→ステロイド治療が推奨される.

アルコール性肝硬変→基本的に断酒

NASH→食事運動療法による減量が中心

合併症の治療

腹水

肝硬変ではレニン・アルドステロン系が活性化されており,抗アルドステロン薬であるスピロノラクトンが第一選択薬となる.

Grade1(少量)
塩分制限(5~7g/日)
場合によっては利尿薬治療

Grade2~3(中等量~大量)
塩分制限(5~7g)+利尿薬治療(スピロノラクトン25~50mg/日±フロセミド20~40mg/日)
*フロセミド80mg,スピロノラクトン100mgまでは増量可能.腎機能の悪化に注意.
*スピロノラクトン・フロセミド治療開始後,4日以上経過しても0.8kg以下の体重減少しか認めないものや,尿中Na排泄量がNa摂取量よりも少ないことなどは,抵抗性と診断する.

治療抵抗例・不耐例
トルバプタン3.75~7.5mg/日内服(入院の上で開始)
*トルバプタン投与後1週間の時点で,1.5kg以上の体重減少が得られ,臨床症状(浮腫・呼吸困難・腹部膨満感)の改善が得られたものを有効する.

トルバプタン抵抗例
アルブミン製剤投与+利尿薬静注治療(カンレノ酸カリウム100~200mg+フロセミド20mg静注)

難治性腹水
腹水穿刺排液(+アルブミン製剤投与)
腹水濾過濃縮再静注法
*大量穿刺排液(5L以上)を行う際には,穿刺後循環不全を予防するためにアルブミン投与を併用する.

上記抵抗例
腹腔-静脈シャント
肝移植
(総頚静脈肝内門脈大循環シャント術 transjugular intrahepatic portosystemic shunt;TIPS) 保険適用外

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