出血性膀胱炎 Hemorrhagic cystitis

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なすび医学ノート

○出血を伴って発症する膀胱の炎症で,ウイルス・細菌・薬剤・放射線などが原因となる.
○薬剤性の多くは抗癌薬や免疫抑制薬などでみられるが,抗アレルギー薬・抗生物質や漢方薬などでも起こることがある.

病態

ウイルス

○アデノウイルスは小児で多いとされる.
○アデノウイルスは移植患者等における免疫抑制状態で発症が懸念される.
・一般に難治性であり,症状も激しく出血は遷延することが多い.

細菌

○健康女性がかかりやすい細菌性のものでもみられることがある.

放射性

○放射線治療の晩期後遺症で問題となることがある.
○リニアックが導入されてからは重篤化するものは少ない.
→要観察期間は 2~3 年とされる

薬剤性

○多くの薬品が原因としてあげられ,抗癌薬(シクロホスファミド・イホスファミド),免疫抑制薬,抗アレルギー薬が以前から知られている.
 抗生物質,漢方薬(小柴胡湯など)などでも報告がある.

○原因薬剤及びその代謝産物は腎から尿中に排泄されるため,尿中に濃縮されたこれらの物質と膀胱上皮は直接に長時間接することになり,それらの毒性を受けやすいとされる

○原因薬剤としては化学療法薬のアルキル化剤ナイトロジェンマスタード類,ペニシリン系抗生物質,抗アレルギー薬のトラニラスト,漢方薬(柴苓湯・小柴胡湯・柴朴湯など)が報告されているが,特にアルキル化剤ナイトロジェンマスタード類のシクロホスファミド・イホスファミド・ブスルファンによるものが高頻度で重篤なものが多い.

○シクロホスファミドやイホスファミドによる膀胱粘膜の組織学的変化としては浮腫と充血が投与後4時間以内にみられ,36時間まで進行し,平滑筋も萎縮および浮腫状になる.
 さらに高用量で繰り返し薬物に暴露されると,膀胱壁はうっ血・浮腫・白血球の浸潤などの炎症,肉芽形成,そして線維化が進行し最終的には不可逆性になり萎縮膀胱となる.

○アルキル化剤ナイトロジェンマスタード類のシクロホスファミドやイホスファミドは,肝で代謝されその活性代謝産物であるアクロレインが腎から尿中に排泄され,それが直接的に尿路上皮細胞を障害する.
 尿中に排泄されたアクロレインは尿路上皮細胞に取り込まれ,細胞質内で活性酸素物質を誘導し核内に取り込まれ,それがDNAを損傷して尿路上皮細胞を障害するとされている.
 イホスファミドはシクロホスファミドよりも出血性膀胱炎の頻度が高いとされ,それはイホスファミドの代謝物クロロアセトアルデヒドも尿路上皮細胞を障害するためと考えられている.
 クロロアセトアルデヒドは急性・慢性に腎毒性があり,糸球体や尿細管にも障害を及ぼす.

○ペニシリン系抗生物質による出血性膀胱炎では,膀胱組織にIgG・IgM・C3など沈着が確認されており,何らかの免疫反応によるものとされている.
 非常に稀であるが,広域性ペニシリン系薬剤は嚢胞性線維症の広域性ペニシリン系抗生物質で治療した既往のある患者で出血性膀胱炎を引き起こすと報告されている.

○漢方薬による出血性膀胱炎では,膀胱組織に好酸球の浸潤が確認されており,これも何らかの免疫反応によるものとされている.

症候

○主な症状としては,頻尿・排尿時痛・残尿感・尿意切迫感などの膀胱刺激症状.
・男性では膀胱の痙攣的収縮により亀頭部に放散痛を感じることもある.

○ 軽症では肉眼ではわからない程度の顕微鏡的だが,中等症では肉眼的血尿時と時に排尿時に凝血塊の排出が見られる.
 重症では膀胱内の凝血塊により膀胱タンポナーデ・尿閉の状態となり,膀胱痛を生じ,時に腎後性腎不全の状態となる.

○発熱は膀胱の炎症のみではあまり見られない.

尿検査

○尿沈渣では薬剤による化学的作用による尿路上皮細胞の変性を認めることがある.

○尿細胞診では細胞径の増大,球形~紡錘形細胞または変形細胞(bizarre configuration),細胞核の増大,クロマチンの濃縮や構造の不整・核崩壊・細胞質内の空胞変性など多彩な像を呈する.
→悪性腫瘍の鑑別のために必須

○尿培養
・薬剤性の場合,尿細菌培養は陰性.

画像検査

○尿貯留下での超音波検査

○腎尿管膀胱単純エックス線撮影(KUB)

○CT

治療

○発症した場合は基本的に泌尿器科医などの専門医に相談することが必要.

原因の除去

○ペニシリン系抗生物質,漢方薬,トラニラストによる出血性膀胱炎は,原因薬剤の中止によって治癒するとされている.

膀胱持続灌流

○膀胱内の凝血塊を洗浄し除去する.
○多孔式の尿道カテーテルを留置し,生理食塩水で持続灌流をする.
○出血が持続する場合は,麻酔下に膀胱鏡を挿入して,直視下に凝血塊を取り除きつつ,出血点を止血するよう努める.
○できるだけ,膀胱粘膜面から凝血塊を取り除くようにする.

ミョウバン

○ミョウバンは簡単かつ安全に無麻酔で膀胱粘膜の焼灼が可能とされる.
○方法は,1%のミョウバン水で膀胱持続灌流をする,あるいは400 gのカリウムミョウバンを4 Lの滅菌水に溶解し,この溶液300 mLに3 Lの0.9 %生理食塩水を加え灌流液とする.
○ミョウバンは膀胱刺激症状が少なく,膀胱粘膜には吸収されず,膀胱粘膜上皮に障害を与えない.
○急性のアルミニウム中毒症状が起きることがあるとも報告されており注意が必要.

硝酸銀 Silver nitrate

○硝酸銀は0.5 %~1 %の溶解液で膀胱内に注入する.
○ミョウバンと違い持続灌流はせず,10~20分間注入しておく.
・多数回の注入が必要なこともありうる.

○放射線あるいはシクロホスファミドによる出血性膀胱炎に対して硝酸銀を投与した小児例ではアミノカプロン酸より有効であったが効果は短かったと報告されている.

○硝酸銀が腎杯まで逆流し,尿路閉塞を来たし腎不全になった症例も報告されているため注意を要する.

動脈塞栓術 Arterial Embolization

○前立腺や膀胱から出血している際は動脈塞栓術が有効.
○内腸骨動脈の分枝を選択的に塞栓することで止血される。

外科治療

○最終手段として外科的な処置が必要になることがあり,出血により生命に危機が及んでいる際の最終手段.
○回腸膀胱形成術,膀胱全摘出術および尿路変更術,あるいは尿路変更術単独(回腸導管・両側腎瘻造設・尿管皮膚瘻術など),内腸骨動脈の結紮などから選択する.

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