熱中症 Heat illness

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

図は以下の文献より引用
日内会誌2013;102:168~173(pdf)

 人は暑熱環境など外的な要素にさらされた場合や運動によって熱産生が増加する場合でも体温上昇を防ぐように恒常性が保たれている.
 しかし,長時間この様な環境や状況が続き,身体の反応が低下すると,平熱体温に維持するための生理的機能(末梢血管拡張と発汗による気化熱放散)が破綻して恒常性維持の限界を超える.
 この経過中に様々な症状・兆候をきたし終末像として体温が上昇して高体温に至る病態を熱中症と呼ぶ.

分類

I度(熱痙攣:heat cramp)

 体温調節機構として皮膚の末梢血管拡張と発汗を生じる.
→相対的な循環血液量低下が生じることで脱水状態になり,時に一過性中枢神経循環不全のため,めまいや意識消失を生じることがある.
→多量の発汗は水分と電解質の喪失を生じるが,この状態で「真水を飲む,お茶を飲む」ことで水分のみの補給をすると,希釈性の低Na血症を生じる.
 これによって筋痙攣を生じることがある.

Ⅱ度(熱疲労:heat exhaustion)

 更に発汗が続くことで高度の脱水になり循環不全,ショックに陥り,頭痛,嘔吐,思考異常など様々な中枢神経症状や全身症状をきたす.
 体温も上昇し始める.

Ⅲ度(熱射病:heat stroke)

 発汗する水分が枯渇し,皮膚は却って乾燥している.
 発汗機能が失われる程に自己の体温調節機能が破綻するため,深部体温39℃以上の高体温をきたす.
 意識障害など様々な中枢神経障害,呼吸・循環不全,肝・腎障害,DICなど多臓器機能障害に陥り生命の危険性が高い.

治療

 重症の場合,生命の危険があるので直ちにA(気道)B(呼吸)C(循環)の確保を行う.

I度

■安静,経口的に水分とNa補給
・失われた水分の補給を行うが,水分のみの補給は希釈性低Na血症を生じるので,必ずNa(塩分)の補充を一緒に行う.
・経口補充が可能であり通常入院治療は不要.

Ⅱ度

■体温管理,安静と水分・Na補給(点滴)
・上昇した体温を冷却する必要がある.
・水分と塩分の補給が必要だが,I度に比べて患者の状態が悪く,点滴(細胞外液や生理食塩水)による補給が適切なことが多い.
・通常入院治療が必要になる.
 早期に治療を開始しないとⅢ度へ進展するので注意が必要.

Ⅲ度

■積極的な体温管理と集中治療
・呼吸・循環障害,肝・腎不全,電解質異常,低血糖など代謝異常・DICなど多臓器機能障害を生じるので,人工呼吸,透析療法や補充療法など様々な集中治療が必要になることがある.

体温管理(冷却法)

 体温調節機能が破綻し,高体温になっている熱中症患者に対しては,積極的な冷却が必要.

1)常温の水(決して冷水ではない)を体表にスプレーし扇風機など風を当てる.
 体表に散布した水が蒸散する際の気化熱として体温を奪うことで冷却する.
 高体温患者の場合直ぐに水が蒸発するので,繰り返し実施する.
*冷たいものを体表に当てると血管が収縮して体温放散が妨げられ,時に震えが生じかえって熱産生を増やす結果になるので注意が必要.
*アルコール蒸散による気化熱冷却を用いる案が示されることがあるが,アルコールを受け付けない体質の患者が含まれている可能性があり安易に実施することは不適切.

2)冷たい水で濡らしたタオルなどで体表を冷却する時には震えが来ないようにマッサージをしながら行う.

3)重症例では胃,膀胱内に冷水を注入して体内から冷却する方法も考慮しても良いが,明確な効果は証明されていない.

解熱剤は意味がないので注意!
(体温中枢の設定温を下げても効果はない)

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