慢性心不全 治療

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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アルゴリズム

 心不全の経過は多くの場合,慢性・進行性.

 大多数の心不全は急性心不全として発症するが,代償化され慢性心不全(ステージC 心不全ステージ)に移行し,その後は慢性に進行し,さまざまな経過を経て,ステージD(治療抵抗性心不全ステージ)に移行する.
・急性増悪により非代償性急性心不全を反復しやすい.
・急性増悪を反復することにより徐々に重症化していく.
・経過中に突然死をきたすこともある.

 心不全患者の多くはステージCであり,症候が改善してもステージCにとどまるため,急性期から慢性期治療への移行が重要.

 ステージCにおける治療はLVEFの低下した心不全(HFrEF)とLVEFの保たれた心不全(HFpEF)に応じて選択する.
・LVEFが軽度低下した心不全(HFmrEF)の治療については研究が不十分であり,現時点では個々の病態に応じて判断する.

 ステージCにおける治療を十分に行っても安静時に高度な症状を認め,増悪による入院を反復する状況になるとステージDとしての治療を選択する.

LVEFの低下した心不全(HFrEF)

 非虚血性の拡張型心筋症といわゆる虚血性心筋症に大別されるが,これらにおいては交感神経系,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系が賦活化され,進行性の左室拡大と収縮性の低下,すなわちリモデリングが生じ,死亡,心不全の悪化などのイベントにつながると考えられている.
→神経内分泌系を阻害することにより左室リモデリングを抑制し,心不全の予後を改善する.

薬剤各論

ACE阻害薬

すべての症例に推奨クラスⅠ(禁忌のぞく)

エナラプリル 2.5mg/日より開始,維持量5~10mg/日 1日1回
リシノプリル 5mg/日より開始,維持量5~10mg/日 1日1回

・左心機能不全に基づく心不全患者の生命予後,および種々の心血管イベントに対する効果はCONSENSUS,SOLVDなどの大規模臨床試験により確立されている.
・無症候の左室収縮機能不全についても,心不全の入院を抑制し,生命予後を改善することがその後の長期経過観察で明らかになっているので,すべての左室収縮機能低下患者に用いられるべき.
・高用量と低用量を比較した場合,死亡率には差がないものの,死亡または入院に関しては高用量でより効果が得られるとの ATLAS試験の結果もあることから,薬剤の忍容性があるかぎり(咳嗽の有無,血圧,血清クレアチニン値,血清カリウム値のチェック),増量を試みる.

アンジオテンシンII 受容体拮抗薬(ARB)

ACE阻害薬に忍容性のない患者に推奨クラスⅠ

カンデサルタン 4mg/日より開始(重症例,腎障害では2mg/日),維持量4~8mg/日(最大量12mg/日) 1日1回

・大規模臨床試験の結果より,ARBは左室収縮機能低下に基づく慢性心不全患者においてACE阻害薬と同等の心血管イベント抑制効果を有する.
→ACE阻害薬が忍容性などの点で投与できない場合にはARBを用いるべき.
・ACE阻害薬とARBの併用について付加的な有効性は確認されていない.

β遮断薬

有症状の患者に対する予後の改善を期待した投与は推奨クラスⅠ
無症状のHRrEFに対する投与は推奨クラスⅡa

カルベジロール 2.5mg/日より開始,維持量25~50mg/日,1日1回
ビソプロロール 0.625mg/日より開始,維持量1.25~5mg/日,1日1回

ビソプロロール,metoprolol succinate,α1受容体遮断作用を併せもつカルベジロールの生命予後改善効果が明らかにされた.
・COMET試験ではカルベジロールとメトプロロール酒石酸塩の効果が比較され,カルベジロール群で死亡率が有意に低かった.

心不全症状のない左室機能不全患者に対するβ遮断薬のエビデンスも得られている.
→有症状の心不全患者のみならず,無症状の左室収縮機能低下患者においてもβ遮断薬導入を試みることがすすめられる.
・本邦のの観察研究では心臓死はカルベジロール高用量投与群に少なかったと報告されている.

β遮断薬の投与に際しては,NYHA心機能分類III度以上の心不全患者は原則として入院とし,体液貯留の兆候がなく,患者の状態が安定していることを確認したうえで,ごく少量より時間をかけて数日~2週間ごとに段階的に増量していくことが望ましい.
・血漿BNP濃度はその忍容性や有効性の指標となる.

増量に際しては心不全の増悪,過度の低血圧や徐脈の出現に注意する.

カルベジロールを用いる場合は,初期用量を2.5 mg/日(分2)とし,重症例では1.25 mg/日とする.以後,3.75 または5 mg/日→7.5 mg/日→10 mg/日→15 mg/日→20 mg/日と増量する(目安).

ビソプロロールの場合は,初期用量を0.625 mg/日とし,1.25 mg/日→2.5 mg/日→(3.75 mg/日)→5 mg/日と増量する(目安).

ループ利尿薬,サイアザイド系利尿薬

うっ血に基づく症状を有する患者に対する投与は推奨クラスⅠ

フロセミド 40~80mg/日,1日1回
アゾセミド 60mg/日,1日1回
トラセミド 4~8mg/日,1日1回

トリクロルメチアジド 2~8mg/日,1日1回

・心不全患者のうっ血に基づく労作時呼吸困難,浮腫などの症状を軽減するためにもっとも有効.
・ループ利尿薬を基本に,ループ利尿薬単独で十分な利尿が得られない場合にはサイアザイド系利尿薬との併用を検討する.
・低K血症,低Mg血症をきたしやすく,ジギタリス中毒を誘発しやすいばかりでなく,重症心室不整脈を誘発することもあり,注意が必要.
・長時間作用型ループ利尿薬であるアゾセミドは循環動態変動作用が緩徐で,神経体液性因子などへの影響が少ないと考えられる.
・本邦でのフロセミドとの比較試験では,一次エンドポイントである心血管死あるいは心不全増悪による入院件数はアゾセミド投与群のほうが少なかった.

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)

ループ利尿薬,ACE阻害薬がすでに投与されているNYHA心機能分類Ⅲ度以上,LVEF<35%の患者に対する投与は推奨クラスⅠ

スピロノラクトン 12.5~25mg/日より開始,維持量25~50mg/日,1日1回
エプレレノン 25mg/日より開始,維持量50mg/日,1日1回

・収縮不全を対象とした2つの大規模臨床試験および本邦の臨床試験により,スピロノラクトンおよびエプレレノンの有用性が確認された.
→LVEF 35%未満の有症状例には,禁忌がないかぎり全例にMRAの投与が推奨される.
*ACE阻害薬あるいはARBとスピロノラクトンの積極的併用により血清カリウムの上
昇に伴う死亡,入院などが増加するとの報告があり,併用は避ける.

バソプレシンV2受容体拮抗薬

ループ利尿薬などの利尿薬で不十分な場合に,心不全における体液貯留に基づく症状改善の目的で入院中に投与した場合に推奨クラスⅡa

トルバプタン 7.5~15mg/日,1日1回

・急性増悪期心不全例を対象としたプラセボとのランダム化比較試験(EVEREST)では,バソプレシンV2受容体拮抗薬はうっ血症状を改善するが,長期予後は改善しないとの結果であった.
・入院中早期のバソプレシンV2受容体拮抗薬導入は腎機能悪化を予防するが,それが長期予後改善につながるかについてはいまだ明確ではない.

Ifチャネル阻害薬

イバブラジン

洞房結節の自動能に携わるIf電流は,過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)チャネルにより形成され,このHCNを選択的に遮断する.
・減心拍は,洞調律でのみ得られる.
・陰性変力や血圧低下といった悪影響が乏しい.

減心拍をすることで,左室収縮末期容量係数と左室駆出率が改善(左室逆リモデリング)し,心ポンプ異常に伴うイベント回避を狙う.

本邦での適応は,「洞調律かつ安静時心拍数が75/min以上の慢性心不全で,β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者」.
・臨床試験ではHFrEFでのみ有効.
・β遮断薬の推奨量を堅持することがまず重要

J-SHIFT試験(国内第Ⅲ相臨床試験)
・心不全に対して有効性を発揮したが,全死亡・全心血管死亡ではなかった.

angiotension receptor neprilysin inhibitor;ARNI

「ARBであるバルサルタン」と「ANP/BNP/CNPなどのナトリウム利尿ペプチドを分解するネプリライシン(中性エンドペプチダーゼ,neutral endopeptidase;NEP)を阻害するNEP阻害薬サクビトリル」の合剤.

欧米のガイドラインでは,すでにACE阻害薬などの標準治療下にも関わらず,心不全症状を有する心機能の低下した心不全患者に対して,ACE阻害薬からARNIへの切り替えがクラスⅠ,エビデンスレベルBとして位置づけられている.
・HFeEFでは有効であった(PARADIGM-HF試験)が,HEpEFでは有意差なし.本邦でもまだエビデンスは出ていない.

NEP阻害薬は,NP濃度を上昇させるため,血管拡張作用や利尿作用がある一方で,アンジオテンシンⅡも分解する作用があるため,単剤ではRAS系が亢進する.
→ARBを併用することでカバー

NEP阻害薬は,ブラジキニンの分解を阻害しないため,血管浮腫の副作用出現に注意が必要.
*NEP阻害薬とACE阻害薬の併用は禁忌.切り替えるときはACE阻害薬を中止して36時間以上あける.

SGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬 SGLT2 Inhibitors;SGLT2i
○腎皮質の近位尿細管に存在するSGLT2のグルコース再吸収を選択的に阻害することにより,RTGを低下させ,過剰...

心不全治療薬としての期待が,DAPA-HF試験をきっかけとして大きくなっている.

DAPA-HF試験
年齢平均約66歳.
糖尿病の有無に関係なく,NYHAⅡ~Ⅳ度,EF40%未満で標準的心不全治療が行われているHFeEF患者に上乗せでダパグリフロジンを上乗せしたところ,プラセボに比較して,心不全悪化と心血管死亡のリスクを26%,心血管死亡だけでも18%低下させた.
・サブ解析ではいずれの年代でもリスク軽減効果があり,75歳以上の高齢者において最もリスク低減効果が認められている.

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