バスキュラーアクセス(血液透析)

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なすび医学ノート

透析患者において,穿刺が容易で血流量を確保でき,長期の使用に耐えうるバスキュラーアクセス(vascular access;VA)の作成が重要になる.

種類

自己血管内シャント arteriovenous fistula;AVF

男性で91.5%,女性で84.6%.

人工血管内シャント arteriovenous graft;AVG

男性で5.5%,女性で10.6%.

上腕動脈表在化・大腿動脈表在化

カフ型カテーテル

AVF・AVG造設不能,高度の心機能低下,四肢拘縮・認知症などによる穿刺困難や血液透析中に抜針リスクが高い症例,小児の血液透析などに推奨されている.

カテーテル閉塞や感染などの合併症が多く,現状では長期に安全に使用するのが難しい.

内頸静脈から挿入した場合は右房上部,大腿静脈から挿入した場合は下大静脈の中枢側に近い部位に留置するのがよい.

ボタンホール穿刺法 saphenous vein buttonhole puncture;SVBP

大伏在静脈を用いる.
*心臓血管バイパス手術のグラフトとして使用されるため,作成前に冠動脈疾患の評価が必要.

低心機能合併例

EF 30~40%以下の場合,動静脈短絡のあるVA作成は心負荷に耐えられない可能性がある.
・シャント血流量が最大心拍出量に占める割合が大きい場合,心拍出量の増加が困難となり循環障害型の心不全(高心拍出量性心不全)を呈しうる.

非シャントのVAを検討する
短絡量を増やさないVAとして,上腕動脈表在化・大腿動脈表在化,カフ型留置カテーテル,大腿静脈穿刺などの選択肢がある.

シャントエコー

形態評価

エコーでの狭窄評価で必要なことは、長・短軸での狭窄径の測定とその前後の正常部血管径の測定.

1)径は2.0mm以上あることが望ましいとされ,50%以上の狭窄は早く詰まりやすく,10~25%ぐらいの狭窄であれば細い血管でも大きな問題はない場合が多い.
2)狭窄の長さがどれぐらいあるかも測っておく.
3)高度狭窄や閉塞時には、エコーで血管壁をしっかり追えるかどうかも確認しておく.

血流機能評価

内シャントに発生する狭窄や閉塞病変を検出する能力が高く,定量評価が可能.

測定部位である上腕動脈から狭窄などの責任病変までの血管ルートが一本道で,その経路に血流の逃げ道がないのが前提.

FV≦500mL/min,RI≧0.6(PI 1.0~1.6以上)で異常であり,特にFV≦350mL/minになるとQB 200mL/minを確保するのが難しくなる.

設定しているQBでシャント修復の適応が違う.
QB 200mL/min→FV≦350mL/min,RI≧0.68が目安
QB 280mL/min→FV≦512mL.min,RI≧0.61が目安

シャント血流量 Flow Volume;FV

AVFにおいて,650mL/min未満 or ベースの血流量より20%以上減少している場合は狭窄病変が発現している可能性がある.

1)最も測定誤差が少ないとされる上腕動脈で測ることがスタンダードとされている.
・多くの場合蛇行しているため,蛇行の底辺と頂点を見つける.
・血流測定に適した部位は蛇行の少し左と頂上の少し左(上流側)になることが多い.
・パルスドプラの入射方向は異なる.

2)FVの基準値はだいたい350~500mL/min以上となる.
・350mL/min以下であると,透析中の脱血が困難である場合が多くなる→修復の適応
・1500~2000mL/min以上になると過剰血流となり、血行動態や心機能に影響を与え、スティール症候群を引き起こす可能性がある.

3)基準値は計算式で求めることが可能.

4)FVはシャントの脱血不良に対して,感度と特異度が高い検査の指標.

血管抵抗指数  Resistance Index;RI

拡張期の血流速度が、収縮期に対して何パーセント落ちたのかを評価する指標.

1)上腕動脈で測定.
2)カットオフ値として0.6が基準→収縮期の60%以下に血流速度が落ちていれば、高度狭窄や閉塞の指標となる.感度100%,特異度69.4%.

日常管理

血流不全

吻合部方向に向かって穿刺し,脱血が180mL/min以下の状況が複数回生じれば,血流不全を疑う.

エコー

定期的にVAの血流量を測定し,FV<650mL/min or ベースの血流量より20%以上の減少は狭窄病変が出現している可能性がある.

穿刺

エコー下穿刺

一人短軸法(Sweep走査法) 標準

一人短軸法(Swing走査法)

二人長軸法

vascular access intervention thrapy;VAIVT

経皮的シャント形成術 percutaneous transluminal angioplasty;PTA

保険適応

2020年4月の診療報酬改訂で,シャント血流量(FV)≦400mL/min or 血管抵抗指数(RI)≧0.6の場合,3ヵ月以内の診療報酬算定が可能となった.

シャント閉塞

血栓溶解療法

デバイス:ミスティーク®

AVFの場合
・拮抗薬がないため,緊急手術になった場合困ることあり.
→ウロキナーゼは投与しないほうがいいかも?

AVGの場合
・ウロキナーゼ6万単位を整理食塩水6mLに溶解し,3mLずつ閉塞グラフトの動静脈側に注入し,1~2時間後にIVT.

血栓吸引療法

スチール症候群 steal syndrome

動静脈瘻作成後,アクセス静脈への血流量が増加する(盗血される)ことにより本来末梢に流れるべき血液が低下することにより発症する末梢循環障害・虚血症状(蒼白・疼痛・しびれ感・冷感・潰瘍形成など).

発症頻度は1~9%.
・前腕部アクセス0.35~1.8%に対し,上腕動脈アクセスでは4~9%と,高位アクセス作製例で発症頻度が高く,症状が重篤な場合が多い.

高齢者や糖尿病合併症例で動脈硬化(動脈石灰化)を合併している患者では,もともと動脈血流量が少ない上に末梢循環抵抗が高いため,AVF作製後抵抗の少ないアクセス静脈に血流が流れやすくなり,さらに末梢循環が低下する恐れがある.

末梢循環抵抗が高くない症例においても大口径のシャントを作製するとアクセス静脈への過剰血流を生じ,末梢循環が低下する恐れがある.

自覚症状はPADに対するFontaine分類に即してStageⅠ~Ⅳに分類される.

過剰血流がなく,症状が軽微なStageⅡまでは経過観察or薬物療法(プロスタグランジン製剤)で対応可能な場合も多い.

StageⅢ・Ⅳは血流抑制術,バイパス術,アクセス閉鎖術など何らかの治療を必要とすることが多い.
・責任病変(狭窄病変)が中枢動脈の場合は,責任病変に対するPTAが有用.
・責任病変が末梢動脈の場合は,過剰血流(ラージシャント)の存在の有無を検討し,過剰血流が明らかな場合は動静脈吻合部近傍にて流出路静脈の外科的ハンティング手術やアクセス閉鎖術が検討される.

術後24時間以内に発症する運動感覚神経障害(ischemic monomelic neuropathy;IMN)は症状が不可逆性となる可能性があるため,緊急アクセス閉鎖術の適応となる.

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