痛風腎 gouty kidney

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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病態

○高尿酸血症による腎障害の機序は2つある.

急性尿酸性腎症 uric acid nephropathy

○急激な尿酸の産生増加により腎からの尿酸排泄量が増加し,尿細管腔の尿酸による閉塞を起こし,時に急性腎不全に陥ることもある.
・腎障害の主な原因は尿細管腔内での尿中尿酸の析出で、その結果尿細管閉塞、尿流停滞、間質への尿酸塩沈着を生じ、腎髄質障害が進行する.
・初期には尿濃縮能の低下がみられ、進行とともに次第に血清Crが上昇する.

高尿酸性腎症 urate nephropathy

○高尿酸血症が長期間持続して尿酸塩が尿細管および間質へ沈着することにより起こる.
・尿酸は血中濃度6.8mg/dlを超えると尿酸塩結晶となって沈着するとされる.
・尿での溶解度はpH5では15mg/dL、pH7では200mg/dLで酸性尿で尿酸結晶を形成しやすい.
→痛風発作の原因となる関節内の沈着や耳介や足の痛風結節と同様に尿酸塩結晶は腎髄質にも析出する.

○歴史的には1956年にLichtensteinが提唱しているように,腎実質内に尿酸塩の沈着を認めるもののみを狭義の意味での痛風腎gouty kidneyとする

○痛風患者の腎組織所見で尿酸塩の沈着を発見する頻度は低く,また腎への尿酸塩沈着は腎不全例の腎にも認められることがあるように,必ずしも痛風に特異的なものではない.

○痛風に高率に合併する高血圧,糖・脂質代謝異常などによる細動脈硬化などの血管障害の要素も加わっていることが多く,痛風の腎障害は多彩な組織像を呈する.
→痛風患者に合併する腎障害を尿酸塩沈着による障害に限らず,臨床的に痛風患者に認められる腎障害を広義の痛風腎として解釈される傾向にある.

○最近,内皮機能障害を介した腎臓の血管収縮,レニン・アンジオテンシン系の活性化,糸球体前の血管障害,腎尿細管細胞の上皮間葉転換などの様々なメカニズムで腎障害を引き起こすことが注目されている.

○尿酸は細胞外では強力な抗酸化物質である一方で,細胞内ではNADPH oxidasesを刺激することで酸化促進性である.
・高尿酸血症によって引き起こされた酸化ストレスはeNOの活性を減少させ,細胞内ATPの減少とともにミトコンドリアの機能障害を引き起こす.
→これらの内皮機能障害から,高血圧・腎臓の低酸素・糸球体硬化へと至る.
・動物モデルで,高尿酸血症は糸球体前の血管障害を引き起こし,輸入細動脈の自己調節反応が障害され,糸球体高血圧に至ることが示された.
→腎臓の低灌流
→低酸素,糸球体硬化,尿細管間質線維化・炎症

○尿酸は腎尿細管細胞の上皮間葉転換を誘導し,尿細管間質の線維化に至る.

臨床所見

○痛風腎では糸球体機能障害よりもまず髄質機能障害が生じることが多いと報告されている.
→痛風の腎障害では蛋白尿を呈する頻度は低く(18-40%),クレアチニンクリアランスも腎障害が進行してからでないと低下しない.
→尿濃縮能の低下が早期より認められることから,Fishberg尿濃縮能試験による最高尿浸透圧値または尿比重の測定は有用である.

○画像診断的にも尿酸はX線透過性であるため,単純X線写真やX線CTでは尿酸塩の沈着や結石を直接描出することは困難である.

○腹部超音波断層検査にて皮髄境界部から髄質にかけてechogenicityの高い部分が巣状に認められた場合,尿酸塩の沈着が強く疑われる.

腎病理

腎生検は他の腎疾患を鑑別するために行う意味合いが強い.

■尿酸塩の沈着
○腎髄質を中心として,巣状に認められ,実際には腎生検で証明するこが難しい.
○De Galantha染色や偏光顕微鏡でとらえることが可能.

■尿細管・間質障害
○非特異的であることが多い.

治療

高尿酸血症のコントロール

○痛風の腎障害の予防,治療には血清尿酸のコントロールが重要.
・尿酸排泄促進薬は腎臓からの尿酸排泄量を著しく増加させ,痛風腎,尿路結石を発症,増悪させる可能性があり,腎障害合併例では尿酸生成抑制薬が使用されることが多い.

○急性尿酸性腎症では,速やかに尿酸生成抑制薬による血清尿酸のコントロールと尿路管理を行わないと急性腎不全に陥る.
・急性腎不全に陥っても,治療が早期かつ適切であれば,腎不全から回復することも多い.

尿路管理

○溶質である尿中尿酸を低下させること,溶媒である尿量を増加させる.
・尿酸は難溶性物質であり,腎への尿酸沈着や尿路結石の形成は,尿中尿酸が過飽和に達し,析出するためと考えられている.
・溶媒である尿量の増加は1日尿量を約2,000ml以上に保つように指導する.

酸性尿の是正

○尿中尿酸溶解度を上昇させるように酸性尿の是正を行う.
・尿酸は溶媒が酸性になると溶解度が低下する.
・痛風患者の尿は酸性に傾いていることが多い.

○酸性尿の是正には尿をアルカリ化する食品である野菜や海藻などを多く摂取するように指導する.
○不十分な場合,重曹やクエン酸製剤などを投与する.
・尿をアルカリ化しすぎると,カルシウム塩などの溶解度を逆に低下させるため,尿pH6.0~6.5が至適尿pHと考えられている.
・高血圧,心不全,腎不全などを合併している症例に対して,重曹やクエン酸製剤の大量使用はNa・K負荷となるため注意を要する.

合併症に対する管理

○痛風,高尿酸血症は肥満,高血圧,高脂血症,耐糖能異常が高率に合併するため,血管障害などを介してさらに腎障害を悪化させる.
→合併症に対する管理,治療も痛風の腎障害の治療上重要となる.

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