GLP-1受容体作動薬 GLP-1 receptor agonist;GLP-1RA

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なすび医学ノート

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インクレチン INtestine secretion INsulin;INCRETIN
経口摂取したさまざまな栄養素に応答して,消化管内分泌細胞から分泌され,血糖依存的にインスリン分泌を促進するホル...

〇直接GLP-1受容体と結合して,作用を発現し,その血中濃度はDPP-4阻害薬投与時のGLP-1濃度よりも高値となるため,DPP-4阻害薬のようなインスリン分泌作用促進作用やグルカゴン分泌抑制作用以外に,中枢における食欲抑制作用や胃の食物排泄遅延作用などを発現し,体重を減少させる.

膵作用

〇GLP-1受容体作動薬は,GLP-1と類似で,DPP-4により切断されない構造を持つ,遺伝子工学的方法で合成されたペプチド.
←GLP-1はDPP-4によりN末端の2つのアミノ酸が切断され,短時間のうちに不活化(半減期は2分程度)治療薬としては利用できない.
〇膵β細胞上のGLP-1受容体に結合し,血糖依存的にインスリン分泌促進作用を発揮するため,単独投与では低血糖発現リスクはきわめて低い.
〇GLP-1受容体作動薬によって得られる血中GLP-1濃度は非生理的なレベル(約80~100pmol/L増加)であるのに対し,DPP-4阻害薬によって得られる血中GLP-1濃度(約30~40pmol/L増加)は生理的範囲内にある.

〇空腹時血糖,食後血糖の両方を低下させる.
〇非肥満,肥満症例にかかわらず,体重を増やさずに血糖コントロール改善効果が得られる.

〇高血糖毒性があると,GLP-1受容体発現が低下しており,GLP-1に対する反応性が低下している.導入するなら,高血糖毒性を解除してからが望ましい.

膵外作用

〇GLP-1受容体は膵島以外にもさまざまな臓器に発現していることが確認されており,心血管,神経,腎においても膵外作用を有する.

○200例以上の糖尿病患者を対象にGLP-1受容体作動薬とプラセボまたは血糖降下薬による全死亡や心血管死,心筋梗塞(MI),脳卒中,心不全,糖尿病網膜症および糖尿病腎症の転帰を比較検討したランダム化比較試験(RCT)を抽出し,基準を満たした77件のRCT(計6万434例が参加)をメタ解析した結果,対照群と比べてGLP-1受容体作動薬群では全死亡リスク(相対リスク=0.888、95%CI 0.804~0.979、P=0.018)および心血管死リスク(同0.858、0.757~0.973、P=0.017)が有意に減少したが,MI,脳卒中,心不全,糖尿病網膜症および糖尿病腎症それぞれのリスクには影響しなかったことが報告されている.
J Bone Miner Res 2017; 32(12): 2339-2346

腎臓

〇GLP-1受容体は,糸球体毛細血管壁や血管壁全体に発現し,抗炎症・抗酸化作用を介して腎保護作用を有することが知られている.
〇GLP-1はアンジオテンシン2の作用を直接抑制すると報告されている.

〇2型糖尿病患者で腎症2期の30症例を対象に,エキセナチド治療群とSU薬治療群の2群に分け,尿中パラメーターの変化率を主要評価項目として検討した結果が報告された.
・治療期間4ヵ月後において,エキセナチド治療群ではSU薬治療群と同程度の血糖低下がみられたにもかかわらず,アルブミン排泄量が有意に低下していた.
・糖尿病性腎症症例にみられる細胞外基質の産生に重要なTGF-βの尿中への排泄が有意に抑制され,細胞外基質の主成分である4型コラーゲンの排泄も低下していたため,腎症の組織学的にも改善している可能性がある.
・この報告は症例数が少なく,サロゲートマーカーによる評価であり,実際の腎組織所見の確認ができていないため,さらなる検討が必要である.

中枢神経

〇GLP-1受容体は脳,脊髄,末梢神経の神経細胞体に発現していることが知られており,GLP-1あるいはGLP-1受容体アナログは血液脳関門を通過し,脳細胞の神経栄養性因子として働くことが示唆されている.
〇中枢神経系のGLP-1シグナルは視床下部より上位の大脳皮質や大脳辺縁系などの食欲・察食行動に関わる情報経路を含めた情報伝達,すなわち,認知調節系(cognitive control system)にも関わっている可能性も明らかにされている.

心臓

〇GLP-1RAは動物の心筋梗塞モデルの梗塞巣の縮小と反応性の心肥大を抑制することが示された.
・最近の研究ではGLP-1受容体は心室筋には存在せず,血管拡張など血流を介した間接的な作用であると考えられている.
・GLP-1受容体は洞結節に分布していて心拍数増加に作用する.
・GLP-1およびGLP-1RAには血管保護作用があり,マウスの動脈硬化を抑制することが示されている.
→機序として,血管内皮細胞で一酸化窒素(NO)合成酵素が活性化され,NOが産生されること,血管平滑筋の増殖,遊走が抑制される,マクロファージの酸化LDLによる泡沫化が抑制されることなどが示されている.

〇LEADER試験とSUSTAIN6試験では優越性が示された.

血圧

〇GLP-1が心房に局在するGLP-1受容体に作用し,心房の心筋細胞のcAMPを増加させ,Epac2の形質膜移行を促進し,心房性ナトリウム利尿ペプチドの分泌を促すというメカニズムが関与していることが種々のノックアウトマウスなどを用いて明らかになっている.

分類

〇GLP-1受容体への作用時間の差から,薬力学的な作用に違いがある.

短時間型 Short Acting

・半減期が2~5時間
・食前投与での血中の急激な上昇に伴い,食後の胃排泄遅延作用とグルカゴン分泌抑制作用により食後血糖降下作用に優れる.
・食後高血糖抑制は,胃内容排出遅延による作用が半分,肝糖新生抑制による作用が半分.
・1日の中でGLP-1濃度が大きく変動し,血中濃度が低下する時間帯があるため,胃内容排出作用が急性の脱感作(タキフィラキシー)によって消失する可能性はない.

長時間型 Long Acting

・半減期が12時間以上~数日.
・主として空腹時のインスリン分泌促進・グルカコン分泌抑制作用により空腹時血糖を低下させる.
・食後血糖も改善するが,それはShort Actingと違い,胃内容排出作用ではなく,インスリン分泌の改善による影響(追加分泌が弱ければ,食後血糖は改善しない).インスリン分泌不全の症例ではBasalを組み合わせるといい.
・体重抑制効果については,視床下部に働きかけ,食欲低下させることによるものが大きい?
・持続的にGLP-1濃度が高くなるため,胃内容排出遅延作用が急速に減弱(tachyphylaxis)する可能性が報告されている.
・反復投与により胃排出能低下作用が減弱するため,消化器症状も出現しにくくなる.
・食事時間に拘束されない注射時間や,継続により悪心・嘔吐といった強い消化器症状が軽減すること,週1回製剤も登場し,患者負担軽減の利点を持つ.

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副作用

消化器症状

〇代表的な副作用として悪心・嘔吐が挙げられ,悪心に閲してはGLP-1受容体作動薬を使用している患者の25~60%に生じ,嘔吐に関しては5~ 15%の患者に生じるといわれている.これらは用量依存的に増加し,発現率は投与開始の数週間に多く,投与継続により低下することがわかっている.また長時間作動型製剤のほうが,これらの副作用が減弱していくまでの期聞が比較的短いとの報告もある.
〇GLP-1は消化管L細胞より分泌され,その受容体は膵β細胞のみならず胃,十二指腸にも発現し,GLP-1による胃排出遅延・胃酸分秘抑制作用には求心性迷走神経が関与することがわかっている.

【対策】
〇胃腸障害発現のリスクを回避するため,低用量より開始し,用量の漸増を行う.
〇「悪心の多くは一過性で軽度である」ことを事前に説明しておく.
〇exendin系のバイエッタ®,リキスミア®に特徴的で多い.
〇自律神経障害による消化器症状が強い症例では避ける.

急性膵炎

〇元来2型糖尿病患者において急性勝炎のリスクは非糖尿病患者に比較して約3倍高いことがいわれている.
・Butlerらの米国FDA(Food and Drug Administration)をもとにしたメタ解析からインクレチン関連薬を用いなかった対照群(非投与群)と比べエキセナチド投与群では膵炎の発生頻度が10倍以上,膵癌は2.95倍と報告し,インクレチン関連薬による急性膵炎の発症懸念が大きく広がった.
・多くの反論があり,Gargらは,決して膵炎の発生頻度が非投与群と比べて高いわけでないとしている.
・別の米国の保険支払請求データベースを元にした解析においても,GLP-1受容体作動薬による膵炎発症率は他の血糖降下薬と比較してリスク上昇を認めなかったと示した.
→これらは報告された症例数をインクレチン関連薬の投与群と非投与群にて比較したものであるため,今後の前向き研究での評価が必要である.
→GLP-1受容体作動薬と膵炎の関連性は明らかになっていないが,2型糖尿病自体が急性膵炎の発症リスクを増大させる可能性があること,発症し重篤化した場合は致命的経過をとることもあり,インクレチン関連薬投与後に発症した持続する上腹部痛,悪心・幅吐に対して,急性膵炎を念頭に入れて対処する必要がある.

膵癌

〇膵癌に関してもFDAのデータベース解析より,急性膵炎同様のオッズ比上昇を認めた.
・GierらはマウスにGLP-1受容体作動薬を長期投与し,体外分泌組織が増生すること,PanIN (pancreatic intraepithelial neoplasia)様病変が形成されることを明らかにし,長期使用における慢性膵炎様病変形成の可能性を報告した.
・PanINはいわゆる前癌病変,上皮異形成のことであるが,このPanINの初期段階が異常に増えると報告している.
・PanINは可逆性の段階であり,必ずしも癌になるとはいえない.

○慢性膵炎や膵癌の間質に豊富に存在する活性化膵星細胞に対してもGLP-1受容体作動薬に増殖作用が存在することもいわれている.
○ヒト糖尿病でのインクレチン治療者の剖検膵を検索し,膵重量の増大,α細胞の異常増殖,内分泌腫瘍を検出したとしている.
・長期使用例における膵病変形成機序は明らかになっていないが,慢性膵炎は膵癌のリスクを上昇させるため,GLP-1受容体作動薬の長期使用による膵癌発症の増加が懸念されている.

○インクレチン関連薬の発癌作用,膵炎作用の報告のほとんどは単一の研究機関からであり,その結果に疑問を呈する反論も多くでている.
・日本人2型糖尿病でインクレチン投与を受けた剖検膵を集積した八木橋らの予備的検討では,明らかな膵重量の増大やα細胞の増加は認められておらず,ヒトへの使用において現時点で明らかな膵癌の増加を示すデータは報告されていない.

○米国糖尿病学会(ADA)のコンセンサスでは,糖尿病と膵癌の疫学的関連性が検証され,治療とは関係なく糖尿病によって悪性腫瘍のリスクが85%上昇するとされている.
・日本でも糖尿病は男性で1.14 (95 %信頼区間1.06-1.23),女性で1.18 (95 %信頼区間1.08-1.28)の癌リスク上昇と関連していたとされ,さらに糖尿病自体が膵臓癌(相対リスク1.82, 95 %信頼区間1.66-1.89)のリスクとなっているメタ解析の結果が報告された.
→糖尿病自体の影響を考慮する必要があるため,インクレチン関連薬による膵癌リスクをさらに高めているかどうかの結論を得ることは困難だが,長期使用における慎重な経過観察が必要と考える.

(甲状腺髄様癌)

〇GLP-1受容体作動薬は,げっ歯類において甲状腺傍濾胞細胞(C細胞)の増殖作用および血清カルシトニン濃度を上昇させるといわれているが,サルやヒトではカルシトニン上昇を認めない.
・C細胞由来である甲状腺髄様癌は,血清カルシトニンがその腫瘍マーカーのため,GLP-1受容体作動薬投与による甲状腺髄様癌の増加が危倶された.
・甲状腺癌のなかでも約3%と頻度の低い疾患でもあり,現時点で明らかな増加を示す研究報告はない.

○2010年にFDAが出した見解は,GLP-1受容体作動薬のげっ歯類で認められた甲状腺癌の増加リスクがヒトに与える影響は低く,さらに甲状腺髄様癌はきわめてまれな癌のため生存率に影響は与えないとしたうえで,GLP-1受容体作動薬使用による甲状腺髄様癌の増加については2025年まで観察研究していくとされている.

使用方法

Basal-supported Prandial GLP-1RA Therapy;BPT

〇短時間作用型GLP-1RAと基礎インスリンの併用であるBasal-supported Prandial GLP-1RA Therapy(BPT)は,食後血糖値と空腹時血糖値の両者を相補的に管理することができ,糖尿病治療を段階的に強化していく場合や,Basal-supported Oral Therapy(BOT)後の治療の選択肢として有用であると考えられる.
〇強化インスリン療法に比較し,低血糖を抑えつつ優れた血糖管理が期待でき,体重増加もない.

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