なすび専用のまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
ちゃんとした正書や情報提供サイトを強く推奨します.
当ブログは一切の責任を負いません.
疫学
最近のがん統計では,罹患者数は大腸癌についで2位,死亡者数は肺癌・大腸癌についで3位.
2013年にH.pylori感染胃炎が保険適応となり,年間約150万人が除菌治療を受けているとされる.
→現感染胃癌は減少し,除菌後胃癌の割合が徐々に増加している.
胃癌全体の3/4をアジアの国々が占めており,うち8割が日本を含む東アジアからの発症.
過去30年間,発症者が年間約5万人であったが,最近は急に減少傾向であり,現在では約44,000人となっている.
→除菌治療の普及と,保険診療で必須の除菌治療時の内視鏡検査による早期胃癌の発見と内視鏡治療の進歩によるところが大きい.
原因
胃炎
【胃癌リスクとなる胃炎】 いずれもH.pylori感染によって引き起こされる
1)胃体部萎縮性胃炎
2)化生性胃炎
3)鳥肌胃炎
4)皺壁肥大型胃炎
H.pylori感染胃癌
H.pylori除菌と除菌後胃癌発症に関するメタアナリシスでは,除菌群のオッズ比は0.46
→除菌により胃癌リスクは半分程度に減少する.
H.pylori未感染胃癌
1)未分化型腺癌(主に印環細胞癌)
2)分化型腺癌(胃底腺型胃癌と胃型分化型腺癌)
3)遺伝的背景に伴う胃癌
4)自己免疫性胃炎に伴う胃癌
5)EBV関連胃癌
1%未満と非常に稀.
定義としては,複数のH.pylori検査が陰性である,内視鏡的萎縮がない,組織学的萎縮がないの3つの条件としていることが多い.
きれいな背景粘膜から発生しており,腫瘍の発見も困難であることが多い.
胃癌検診
地域の胃癌検診は,40歳以上を対象とし,胃透視検査が行われてきたが,受診率はそれほど高くないため,血清ペプシノーゲンを利用して胃粘膜萎縮を拾い上げるペプシノーゲン法が提唱されている.
ペプシノーゲン法による胃粘膜萎縮判定と血清H. pylori抗体によるH. pylori判定を組み合わせたABC胃癌リスク検診であれば,血液検査だけで結果が出るため,受診率の増加を期待できる.
・実際にペプシノーゲン法で胃粘膜萎縮がなく,ピロリ抗体陰性のA群とそれ以外のB群,C群では,胃癌発生率に大きな差があり,胃癌リスク検診が可能とされている.
・B群,C群は胃癌発生率が高いため,内視鏡検査を勧め,H. pylori胃炎が確定すれば除菌へと進んでもらう.
ペプシノーゲン法は,プロトンポンプ阻害薬(PPI)服用者・腎機能障害・胃切除歴・除菌歴のある人では,正確な値が出ないことが問題とされている.
・特にPPIは頻用されている薬剤であるため,PPIを中止せずにペプシノーゲン法を受けている人が少なからずいる.
除菌歴のある人,他疾患で抗菌薬を内服して自然除菌された人ではH. pylori抗体が低下することが問題とされている.
→除菌歴のある人はE群として,ABC胃癌リスク検診は受けないように注意喚起がなされている.
進行胃癌
特徴的な病態として腹膜播種がある.
高度腹膜播種では,腹水貯留・腸閉塞・腹部膨満・経口摂取不良などの全身状態の悪い病状になりやすくなる.
→遠隔臓器転移主体のタイプと区別される.
抗がん剤,分子標的治療薬
一次化学療法(HER2陰性胃癌)
2007年以降,S-1+CDDP(SP)療法が長きにわたり標準治療.
2015年,オキサリプラチン(OX)が承認
→SOX,CapeOX,FOLFOX療法も治療選択肢に.
2021年1月~
化学療法+ICI(Nivo)が推奨 ATTRACTION-4試験,Checkmate-649試験
*治療前に可能な限りPD-L1検査を実施することが望ましい.
一次化学療法(HER2陽性胃癌)
(カペシタビン or 5-FU)+CDDP+トラスツズマブが標準的治療であったが,
2018年~CDDPがOXに変更
2021年~経口摂取不良例向けに,FOLFOX+トラスツズマブ療法も推奨レジメンに.
二次化学療法
パクリタキセル(weekly paclitaxel;wPTX)単独
DTX単独
イリノテカン(IRI)単独
RAM単独(REGARD試験)
wPTX+RAMが最も推奨されるレジメン(RAINBOW試験)
三次化学療法
トリフルリジン+チピラシル塩酸塩(FTD/TPI) TAGS試験
HER2陽性胃癌では,T-DXd(トラスツズマブ,デルクステカン) DESTINY-GASTRICO1試験