劇症1型糖尿病 fulminant type 1 diabetes mellitus;FT1DM

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なすび医学ノート

高血糖症状の発現から糖尿病診断までの期間がきわめて短く,発症時には著明な高血糖とケトーシスあるいはケトアシドーシスを呈するにもかかわらず,HbAlcは正常~軽度高値であることを特徴とし,成人に好発する.

疫学

・日本では5000~7000人の患者が存在する.
・男女比は1:1.発症年齢は平均39歳(男性43歳,女性35歳).
・地域差,季節差は認めない.

1 型糖尿病の一亜型である劇症1 型糖尿病の発症率は人種間で差があり,白人では少なくアジア人に多い.
・日本人では,劇症1 型糖尿病は1 型糖尿病の約20 %を占める.
・白人ではほぼ全例が急性発症1 型糖尿病であり劇症1 型糖尿病はほとんどない.

原因

・全容は未だ明らかとなっていないが,遺伝素因やウイルス感染と抗ウイルスが惹起した免疫反応により非特異的に膵β細胞が破壊されると考えられている.
・膵β細胞が主として傷害される自己免疫性1型糖尿病と異なり,劇症1型糖尿病の膵組織では膵β細胞のみならず膵α細胞や膵外分泌組織にも炎症の波及が認められる.

HLA遺伝子

人種間で発症率が異なる原因の一つにはHLA遺伝子が関わっていると考えられている.

白人では1 型糖尿病患者の多くはハプロタイプDR4-DQ3(DRB104:01-DQB103:02)あるいはDR3-DQ2(DRB103:01-DQB102:01)を有し,日本人ではDR4-DQ4(DRB104:05-DQB104:01)DR9-DQ3(DRB109:01-DQB103:03)が代表的な感受性HLA ハプロタイプであり,ハプロタイプDRB108:02-DQB103:02 とハプロタイプDRB109:01- DQB103:03 は急性発症1 型糖尿病と関連がある.

劇症1 型糖尿病患者に限れば,抗GAD抗体陰性の患者にハプロタイプDR4-DQ4 が多く,抗GAD抗体陽性の患者ではハプロタイプDR9-DQ3がホモ接合体でもヘテロ接合体でもコントロールと比較して高頻度に出現すると報告されている.

病態

ウイルス感染などを契機に,わずか数日間で膵β細胞のほぼすべてが一挙に破壊され,ケトーシスやケトアシドーシスにまで急速に進行する.
・症状は「日」単位で悪化し,高血糖に伴う症状が出現してから数日(平均約4日)のうちにインスリン治療を開始しなければ生命に関わる.
・前駆症状として感冒様症状,腹部症状がそれぞれ70%以上の患者でみられる.
・膵島関連自己抗体は陰性であることがほとんど.

検査

膵島関連自己抗体

抗GAD抗体陽性は急性発症1 型糖尿病に多くみられるが,劇症1 型糖尿病患者においても4~12%程度で陽性を呈する.

診断

スクリーニング基準

下記の基準を満たす場合は入院し,精査を行う

・糖尿病症状発現後1週間以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る.
・初診時の(随時)血糖値が288mg/dL以上である.

診断基準

下記をすべて満たすものを診断

・糖尿病症状発現後1週間以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る.
 (初診時尿ケトン体陽性,血中ケトン体上昇のいずれかを認める)
・初診時の(随時)血糖値≧288mg/dL,かつHbA1c<8.7%
・発症時の尿中Cペプチド<10μg/日,または空腹時血中Cペプチド<0.3ng/mL,かつグルカゴン負荷後(または食後2時間)血中Cペプチド<0.5ng/mL

参考所見

・原則としてGAD抗体などの膵島関連自己抗体は陰性である.
・ケ卜ーシスと診断されるまでは原則として1週間以内であるが,1~2週間の症例も存在する.
・約98%の症例で発症時になんらかの血中膵外分泌酵素(アミラーゼ,リバーゼ,エラスターゼ1など)が上昇している.
・約70%の症例で前駆症状として上気道炎症状(発熱,咽頭痛など),消化器症状(上腹部痛,悪心・嘔吐など)を認める.
・妊娠に関連して発症することがある.
・HLA DRB”04:05-DQB1”0401との関連が明らかにされている.

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