frailty
加齢に伴うさまざまな臓器機能変化や予備能力低下によって外的なストレスに対する脆弱さが亢進した状態.
ストレスに対して十分な回復力を有する健常な状態と自立した生活が困難である要介護状態の中間的な状態.
フレイルを構成する要素としては,身体的要素(骨粗鬆症・サルコペニア),精神的要素(認知機能低下・抑鬱),社会的要素(経済的困窮・独居)などがある.
フレイルに陥った高齢者を早期に発見し,適切な介入をすることにより,状態を改善させることで生活機能の維持・向上を図ることが期待される.
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原因
身体的な要因だけでなく,精神・心理的な要因,社会的な要因があり,それぞれが負のスパイラルを形成し,自立性への喪失へとつながっていく.
心血管疾患,生活習慣病,慢性炎症,口腔機能の低下などが複合的に関与する.
栄養の重要性も指摘されており,タンパク質・ビタミンDの摂取不足なども関連する.
運動習慣やポリファーマシーの関与もある.
原因特定のホルモン欠乏が原因ではなく,より一般的な内分泌機能障害の結果としてフレイルを生じる可能性が示唆されている.
グルココルチコイド(GC)
加齢に伴いGCの分泌量が全体的に増加するかは不明だが,概日リズムの鈍化,コルチゾールの分泌抑制の低下,ストレスからの回復力の低下などが認められている.
虚弱体質でコルチゾールの慢性的に上昇するのは,抑制機能の低下によるホメオスタシス制御の失敗に起因すると考えられる.
フレイルは日中の慢性的なコルチゾールレベルの上昇と関連していることが報告されている.
→骨格筋の異化が進むことでサルコペニアと関連していると考えられる.
インスリン様成長因子(IGF-1)と成長ホルモン(GH)
GHの分泌は,中年期以降,10年毎に14%の割合で減少し,「ソマトポーズ」と呼ばれる過程を経る.
GHが減ると,脂肪量が増加し,除脂肪量が減少する.
加齢に伴うIGF-1分泌の低下は,フレイルの中心的な要素である神経細胞の老化やサルコペニアの発症に重要と考えられている.
アンドロゲン
テストステロン濃度は加齢とともに低下し,通常年間約2%低下する.
テストステロンは筋肉のアンドロゲン受容体を通じて,筋肉内のIGF-1システムに作用することで,筋タンパク合成を増加させる.
フレイルに対するテストステロン補充療法についてはまだ有効性や長期的な安全性の結果が出ていない.
ビタミンD
血清ビタミンD濃度が低いと,フレイルを発症する確率が高くなることが示されている.
ビタミンD補充効果については,筋力を軽度増強すること,転倒リスクを少し減らすことが報告されている.
ビタミンD欠乏に対してビタミンDを補給することが推奨されているが,加齢に伴う体組成・筋骨格・代謝の改善を目的としたこれまでの試験では効果は限定的.
インスリン抵抗性(IR)
IRと関連するメタボリック症候群(特に中心性肥満)はフレイルリスクと関連.
IRとフレイルの間に正の相関があることも報告されている.
IRがフレイル発症を誘導するメカニズムは,内臓脂肪と筋肉内脂質の増加により炎症を起こし,インスリン抵抗性の異化作用を持つサルコペニア肥満の概念が重要であると考えられている.
病態
ADL障害,施設入所,転倒・骨折,入院,認知症などの健康障害を起こしやすく,要介護・死亡リスクも高くなる.
評価法
Cardiovascular Health Study;CHS index
1)体重減少
2)主観的活力低下
3)握力の低下
4)歩行速度の低下
5)活動度の低下
→5項目のうち,3項目以上あてはまればフレイル
将来の転倒,身体機能障害,骨折,生命予後と関連することが証明されている.
J-CHS基準(改訂日本版CHS基準)
3つ以上該当→フレイル
1~2つ該当→プレフレイル
①体重減少:6カ月で,2kg以上の体重減少
②筋力低下:握力 男性<28kg,女性<18kg
③疲労感:(ここ2週間)訳もなく疲れたような感じがする
④歩行速度:通常歩行速度<1.0m/秒
⑤身体活動:以下の2つの質問にいずれも「週1回もしていない」と回答
1)軽い運動・体操をしていますか?
2)定期的な運動・スポーツをしていますか?
フレイル指数 frailty index;FI
Rockwoodらが提唱する「フレイルはさまざまな疾患や生活動作障害などの積み重ねにより生じる」という考え(障害蓄積モデル)に基づき,高齢者総合的機能評価(CGA)の考え方に基づいて包括的に評価する.
→Friedのモデルの身体的定義を超えて,認知機能の低下,慢性疾患,環境的危険因子,心理社会的危険因子,老年症候群(転倒・せん妄・尿失禁など),加齢に伴う障害など70項目を評価し,障害の数を合計してFIを算出する.
死亡やADL障害の予測に優れた指標であるが,項目数が多く複雑であるため,臨床場面や大規模な疫学研究では難しい.