地中海熱 familial Mediterranean fever;FMF

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

高熱とそれに伴う漿膜炎,関節炎などを反復する自己炎症性疾患.

疫学

地中海沿岸諸国に罹患患者が多い.
本邦では,500人前後いると推定される.

発症年齢は,地中海沿岸諸国では10歳以下の小児期が多いが,本邦では18.2±14.3歳と海外症例に比べ高く,成人発症例が多い傾向になる.

原因

原因遺伝子として,MEFVが同定され,その遺伝子産物をpyrinと命名された.

本邦の典型例では,MEFVのexon10(M6941など)の変異が多く,非典型例ではMEFVのexon10の変異は少なく,exon1(E84K),exon2(L110P-E148Q),exon3(P369S-R408Q)ならびにexon5(S503C)の変異が多い.

pyrinは,ASC(apoptosis-associated speck-like protein containing a caspase recruitment domain)やcaspase-1と会合してインフラマソームを形成するが,その形成は細菌毒素によるRho GTPaseの不活化により誘導され,IL(interleukin)-1βやIL-18の産生に至ることが知られている.

FMF典型例に認められる変異を有するpyrinに対しては,PKNによるリン酸化が阻害され,抑制分子14-3-3蛋白の結合が低下してpyrinインフラマソームの活性化が亢進すると考えられている.

pyrinは,好中球や単球,樹状細胞,線維芽細胞などに発現しているが,全長蛋白は,主として細胞質内に微小管として局在しており,これがコルヒチンの有用性と関連していると考えられている.

病態

アミロイドーシス

無治療で炎症が反復するとアミロイドーシスを合併することがある(特に典型例).
本邦における合併頻度は5%前後と高くないが,定期的なスクリーニングが必要.

症候

臨床像の違いから,典型例と非典型例に分類される.

主な症状は,発熱97.5%,腹膜炎症状(腹痛)65.8%,胸膜炎症状(胸痛)37.8%,皮疹7.6%,頭痛18.4%.
・海外に比べ,腹膜炎・アミロイドーシスの合併が少ない.

典型例

発熱は月1回の頻度,持続時間は72時間以内で,発熱に伴い激しい腹痛や胸背部痛を認める.

・突然高熱を認め,半日から3日間持続する.
・発熱間隔は,4週間毎が多い.
・随伴症状として漿膜炎による激しい腹痛や胸背部痛を訴える.1~3日程度持続し,自然に軽快する.
・胸痛によって呼吸が浅くなる.
・関節炎や関節痛の合併は,海外では高頻度であるが,本邦では比較的少ない.
・漿膜の炎症として,心膜炎や精巣漿膜炎が認められることがある.
・丹毒様皮疹を伴うことがある.

非典型例

発熱はさまざまで,稀に無熱であることもある.

発熱期間が1~2週間のことが多く,上肢の関節症状などを伴いやすい.

検査所見

発作時にCRP,血清アミロイドAの著明高値を認め,間歇期にこれらは劇的に陰性化する.

診断

発症から診断まで平均8.8年.

臨床所見

臨床所見で必須項目と,補助項目のいずれか1項目以上を認める場合に,臨床的にFMF典型例と診断する.

必須項目
・12時間から72時間続く38度以上の発熱を3回以上繰り返す.
・発熱時には,CRPや血清アミロイドA(SAA)などの炎症検査所見の著明な上昇を認める.
・発作間歇期にはこれらが消失する.

補助項目
1)発熱時の随伴症状として、以下のいずれかを認める。
 a.非限局性の腹膜炎による腹痛
 b.胸膜炎による胸背部痛
 c.関節炎
 d.心膜炎
 e.精巣漿膜炎
 f.髄膜炎による頭痛
2)コルヒチンの予防内服によって発作が消失あるいは軽減する.

MEFV遺伝子解析

繰り返す発熱のみ,あるいは補助項目のどれか1項目以上を有するなど,非典型的症状を示す症例については,MEFV遺伝子の解析を行い,以下の場合にFMFあるいはFMF非典型例と診断する.

1)Exon10の変異(M694I,M680I,M694V,V726A)(ヘテロの変異を含む)を認めた場合には,FMFと診断する.

2)Exon10以外の変異(E84K,E148Q,L110P-E148Q,P369S-R408Q,R202Q,G304R,S503C)(ヘテロの変異を含む)を認め,コルヒチンの診断的投与で反応があった場合には,FMF非典型例とする.

3)変異がないが,コルヒチンの診断的投与で反応があった場合には,FMF非典型例とする。

治療

根治療法はなく,副腎皮質ステロイド薬は無効であり,発作の抑制にはコルヒチンが約90%以上の症例で奏効する.

コルヒチン

成人で1日0.5~1.5mgを1~2回に分けて,経口内服し,小児では1日0.01~0.03mg/kgを1~2回に分けて経口内服する.

投与初期に胃腸症状をはじめとした副作用が出現しやすいため,少量から開始し,副作用に注意しながら,発作が抑制できる量まで増量する.

発作時のみの使用では効果が少なく,連日の投与が必要.

生物学的製剤

コルヒチン無効(コルヒチンを最大用量 0.04mg/kg/日,上限2.0mg/日)まで増量しても発熱発作を年4回以上認める)の場合は,抗IL-1療法(カナキヌマブ)やTNFα阻害剤(インフリキシマブ・エタネルセプト),サリドマイドなどが有効であると報告されている.

タイトルとURLをコピーしました