喀痰 expectoration

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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当ブログは一切の責任を負いません.

下気道から気道外に喀出された気道分泌物の総称.

「気道分泌物」とは,気道の分泌細胞(粘膜下腺の粘液細胞と漿液細胞)からの分泌物,気道上皮の杯細胞からの分泌物,気道粘膜の微小血管から漏出・滲出した血漿成分,気道上皮細胞から分泌される水分などが主な構成成分.

メカニズム

生理的な気道分泌物は,下気道において1日約100mL産生されるが,気道壁からの再吸収や呼吸に伴う蒸発などにより大部分は排除され,声門に到達する量は1日約10mL程度であり,無意識のうちに嚥下されるため喀痰は生じない.

喀痰の存在は異常であり,気道炎症などの気道分泌を亢進させる病態が存在していることを意味する.

気道分泌の異常な増加が線毛輸送の処理能力を上回り,気道内に貯留した分泌物が咳嗽により気道外に排除される「咳クリアランス」という生体防御反応の結果として喀痰が生じる.

分類

喀痰は,主に下気道由来の気道内分泌物である液性成分と,吸入された異物や細菌,剥離した細胞などからなる非液性成分によって構成される.
・生化学的には,水分(84~94%),灰分(0.7~1.1%),蛋白質(1~5%),炭水化物(0.9~1.1%),脂質(0.8~3.1%)からなり,蛋白質は粘液糖蛋白,免疫グロブリン,種々の酵素を含む.

粘液性

原因疾患として気管支炎,COPD,気管支喘息などが多い.

無色透明 or 白色

漿液性

肺うっ血,急性呼吸窮迫症候群,細気管支炎,肺胞上皮癌など.

無色透明 or 白色

膿性

細菌感染を示唆するため,抗菌薬投与の判断の根拠になる.

気管支喘息発作時の好酸球を多く含んだ喀痰やウイルス感染時の喀痰などでも膿性を呈することがあるため,注意.

淡黄色が多いが,膿の量が増えると濃い黄色から緑色となる.

Miller&Jones分類(肉眼的分類)

M1:唾液,完全な粘性痰
M2:粘性痰だが少量の膿性痰が含まれる
P1:膿性痰が1/3以下
P2:膿性痰が1/3~2/3
P3:膿性痰が2/3以上

品質順に,P3→P2→P1→M2→M1.
*微生物検査に適したものは,P2・P3.それ以外は低品質になり,信頼性が低くなる.

Geckler分類(顕微鏡的分類)

単位は,細胞数/視野(100倍)

G1:扁平上皮細胞>25,好中球<10→判定-
G2:扁平上皮細胞>25,好中球 10-25→判定-
G3:扁平上皮細胞>25,好中球>25→判定-
G4:扁平上皮細胞10-25,好中球>25→判定+
G5:扁平上皮細胞<10,好中球>25→判定++
G6:扁平上皮細胞<25,好中球<10→判定-~++

微生物検査に適したものは,G5・G6.それ以外は低品質になり,信頼性が低くなる.
*G1~3は唾液が多く不適切.
*G6は経皮的気管内吸引法,白血球減少時の検体であれば適切.

診断

咳嗽を主訴として受診した場合に,問診で喀痰の存在を確認する.

慢性呼吸疾患などの基礎疾患や鼻副鼻腔炎などの合併症の病歴を確認する.

喀痰について,出現時期,色調,臭い,性状,量,喀出困難度,経時的な変化について問診する.

喀痰を採取し,肉眼・嗅覚的・物理学的特性(レオロジー)の観察を経て,喀痰検査を実施する.

なすび院長
なすび院長

喀痰は,非侵襲的に採取できる極めて有用な検体であり,肺や気道の状態をよく反映する.

細菌学的検査

気道感染症の診断,原因微生物の同定,感染の程度(特に抗酸菌塗抹検査),薬剤感受性の評価などを行う.

高齢者や免疫機能低下症例における肺炎の場合には,肺結核の可能性も考慮し,一般細菌検査に加えて,抗酸菌検査も追加する.

主に中高年の女性のおいて,中葉舌区を中心として気管支拡張像と共に粒状影を認める場合も,非結核性抗酸菌症を疑い,抗酸菌検査を行う.

細胞診

肺癌などの悪性疾患の診断

気管支喘息やCOPDなどにおいて,炎症性細胞(特に好酸球や好中球)を同定し,気道炎症の病態を明らかにすることで,フェノタイプ分類に基づく治療戦略が可能になる.

治療

喀痰調整薬の使用に際しては,病態に応じた薬剤選択が重要であるが,喀痰の性状と病態を踏まえて,まずは1剤から投与を開始して,症状の改善があれば継続し,改善が乏しい場合は他の作用機序を持つ薬剤へと変更する.
*喀痰症状が著明な場合は,作用機序が異なる薬剤を併用することで症状のコントロールが得られることもある.

喀痰溶解薬

ムチンを溶解して,粘調度を下げる.
→分泌物排除促進(粘液性喀痰・漿液性喀痰に有効)

ブロムヘキシン塩酸塩(ビソルボン®)
N-アセチルシステイン(ムコフィリン®)
エチルシステイン塩酸塩(チスタニン®)

ブロムヘキシン塩酸塩には,漿液性分泌増加作用,肺サーファクタントの分泌促進作用と線毛運動亢進作用がある.

ブロムヘキシン塩酸塩には,非ステロイド性消炎鎮痛薬であるエトドラクが含まれているためアスピリン喘息には禁忌.

喀痰修復薬

気道分泌状態を修復して,気道粘液構成成分を正常化させる.
→分泌物排除促進(粘液性喀痰・漿液性喀痰に有効)

カルボシステイン(ムコダイン®)

カルボシステインは,杯細胞過形成抑制作用,気道炎症抑制作用,粘膜正常化作用(線毛修復作用)を有する.COPDの急性増悪の頻度を減少させたとのこ報告がある.

粘膜潤滑薬

肺サーファクタントの分泌増加により,気道粘液と気道上皮の粘着性を低下させ,粘液クリアランスを高める.
→分泌物排除促進(粘液性喀痰・漿液性喀痰に有効)

アンブロキソール塩酸塩(ムコソルバン®,ムコソルバンL®,ムコサール®)

アンブロキソール塩酸塩には,線毛運動亢進作用などがある.COPDの急性増悪の頻度を減少させたとのこ報告がある.

気道分泌細胞正常化薬

杯細胞の過形成を抑制して,気道粘液産生を制御する.
→喀痰の産生・分泌の抑制(粘液性喀痰に有効)

フドステイン(クリアナール®,スペリア®)

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