eosinophilic gastrointestinal disorders;EGIDs
消化器症状と消化管に有意な好酸球浸潤を伴う慢性アレルギー疾患
好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis;EoE)と他の消化管に病変が認められる好酸球性胃腸炎(eosinophilic gastroenteritis;EGE)に大別される.
好酸球性食道炎 eosinophilic esophagitis;EoE
疫学
健診での発見率0.06~0.47%と報告されている.
健診症例の多くは無症状.
病態
遺伝的素因として,TSLP,CCL26,FLGなどの遺伝子多型と関連がある.
アレルゲンとして,食事抗原や吸入抗原が重要.
デスモグレインやフィラグリン発現低下を介した上皮バリア機能の低下が示唆されており,アレルゲンを樹状細胞が認識するとTh2免役応答が誘導される.
IL-33や2型自然リンパ球を介した経路も存在する.
eotaxin-3,IL-5,IL-3などが産生され,CD4+T細胞の他,肥満細胞や好塩基球が関与し,好酸球浸潤が誘導される.
慢性期になると線維化が主体となり,TGF-β1,periostinなどが関与する.
診断基準
①食道機能障害に起因する症状
②食道上皮内に好酸球が高視野に15個以上存在する
③二次性の除外
嚥下困難や食物つまり感といった典型的症状53%
胸やけ・胸痛・腹痛などの上部消化管症状40%
無症状19%
→典型的症状がなくても,特徴的な内視鏡像(浮腫・リング・白斑・縦走溝・狭窄)や標準治療に抵抗する機能性消化管疾患では積極的な生検が必要
治療
プロトンポンプ阻害薬(PPI)
メタアナリシスによれば,有効性は組織学的改善50.5%,症状改善60.8%と報告されている.
P-CABでも同様.
→軽症の多い本邦では第一選択
改善した場合,休薬,間欠療法,オンデマンド療法,維持療法を選択する.
有効な機序として,酸逆流による上皮間タイトジャンクション蛋白の破壊によりバリア機能が低下し,抗原が侵入しやすくなることを抑制する可能性や,PPI自体がSTAT-6シグナルを介したIL-13刺激によるeotaxin-3産生を抑制する機序,上皮に存在するnon-gastric K+-H+-ATPaseを介したIL-4刺激によるeotaxin-3産生を抑制する機序が想定されている.
局所ステロイド(ステロイド嚥下療法)
PPI無効症例の第一選択.
通常,フルチカゾン400~800μg/日やブデソニド1~2mg/日が用いられる.
吸入時よりも多い用量だが,短期治療における副腎抑制などの可能性は極めて低い.
8週投与での有効性は90%以上だが,半年~1年以内に再発する症例も多い.
線維化改善や予防のために少量のステロイド嚥下療法も有効とされている.
内視鏡拡張術
狭窄例で有効.
ステロイド全身投与
症状が強い症例.
好酸球性胃腸炎 eosinophilic gastroenteritis;EGE
罹患部位が胃~直腸まで広範囲に及び,好酸球浸潤部位から粘膜優位型,筋層優位型,漿膜下優位型,全層型に分けられる.
疫学
欧米での有病率は10万人あたり18人(0.018%)と報告されているが,本邦では不明.
病態
EoEと同様の機序が想定されている.
検査
末梢血好酸球増多
腹部CTで,消化管壁肥厚や腹水を認めることがある.
診断基準
①症状(腹痛・下痢・嘔吐など)の存在
②胃・小腸・大腸の生検で粘膜性に好酸球が高視野に20個以上存在する
③他疾患の除外
④腹水・腹水中に多数の好酸球が存在すること
他疾患→寄生虫疾患,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症,感染症,GVHD,炎症性腸疾患など
EOEのように特徴的な内視鏡所見はないため,疑ったら積極的な生検が必要
治療
EoEに比較して難治例や重症例が多い.
ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカスト)
軽症例では有効な場合があり,ガイドラインでも推奨されている.
ステロイド全身投与
重症例の急性期や難治例の寛解導入には推奨.
プレドニン0.5~1.0mg/kgが用いられる.有効率は約90%.
ステロイド抵抗例や再発寛解を繰り返すステロイド依存例もみられる.