糖尿病合併脂質異常症

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
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糖尿病患者では,非糖尿病者と比較して動脈硬化性疾患の発症率が2~3倍高いことが報告されている.
2型糖尿病患者における冠動脈疾患発症に最も関与するものが脂質異常症であることも報告されている.

糖尿病患者におけるCVD発症の危険因子

Japan Diabetes Complications Study(JDCS)
1 位 LDLコレステロール(LDL-C)
2 位 年齢
3 位 トリグリセロール(TG)

United Kingdom Prospective Diabetes Study(UKPDS)
1 位 LDL-C
2 位 HDL コレステロール(HDL-C)
3 位 HbA1c

病態

糖尿病患者における脂質異常症は,インスリン抵抗性,インスリン作用低下を基盤として,以下のものなどがみられる.
①カイロミクロン,VLDL,レムナントなどのTG-richリポ蛋白の増加
②高LDL血症,small dense LDL,糖化LDLの増加
③低HDL血症

脂肪細胞のインスリン感受性低下や内臓脂肪量の増加

内臓脂肪組織からの脂肪分解の亢進
→増加した脂肪酸が門脈を通して肝臓へ流入しTG合成を促進
→肝臓からのVLDLの合成・分泌が促進(高VLDL血症)
→低HDL-C血症,small dense LDLが出現

1)VLDLは,コレステロールエステル転送蛋白(cholesterol ester transfer protein;CETP)の働きを介して,HDLにTGを渡すとともにHDLからコレステロールを受け取るという交換反応を行う(VLDLの量に依存)
2)CETPはVLDLとLDL間の交換反応も促進するため,LDL粒子のコレステロールエステル含量が低下しsmall dense LDLが出現する.

リポ蛋白リパーゼ(lipoprotein lipase;LPL)の低下

LPLは脂肪組織などで合成・分泌され,毛細血管の血管内皮細胞表面(脂肪細胞外)に存在する.

細胞外で血液中の中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解し,細胞内(脂肪細胞内など)に遊離脂肪酸を取り込ませ,アシルCoAを経て,中性脂肪に再合成され,貯蔵される.
→脂肪細胞の中性脂肪貯蔵を促進する.

インスリンの作用不足
→LPL活性の低下(LPLはインスリン依存性)
→カイロミクロンやVLDLの代謝を遷延(中性脂肪が増加,食後高脂血症)
→IDLなどのTGリッチなレムナントリポ蛋白が増加

ホルモン感受性リパーゼ(hormone-sensitive lipase;HSL)の活性低下

脂肪細胞内に存在して,中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールとに分解し,遊離脂肪酸を血液中に放出させる.
→脂肪細胞の中性脂肪分解を促進する.

インスリンの作用不足
→HSL活性の低下(HSLはインスリン依存性)
→脂肪細胞内の中性脂肪の分解を抑制
→脂肪細胞の中性脂肪貯蔵量を増加させる(肥満を促進する).

小腸からの脂肪吸収亢進

コレステロール吸収に際して機能が発揮されるコレステロールトランスポーター(NPC1L1:Niemann-Pick C1 Like 1)蛋白の発現は糖尿病で亢進していることが報告されている.
→高血糖状態ではカイロミクロン生成が亢進し,高トリグリセライド血症やレムナントの増加に関連する.

2型糖尿病では腸管におけるMTP(microsomal triglyceride transfer protein)mRNAの発現が亢進していることが報告されている.
→mRNA発現はスタチン投与によって低下するものの,2型糖尿病では非糖尿病までの低下はみられず,なお増強しているという.

糖尿病脂血症 diabetic lipemia

急性発症やインスリン中断によってケトアシドーシスを発症した1型糖尿病患者の中に著明な高TG血症(Ⅴ型)を発症する例がある.

1)インスリン欠乏によって脂肪細胞のlipolysis(脂肪分解)が亢進し,血中に遊離脂肪酸が大量に放出
2)遊離脂肪酸は肝臓で再エステル化を受けて,TGとなり,VLDLとして分泌される.
3)LPL活性も低下

高血糖

糖化LDLが産生
→変性LDLとして,動脈硬化巣におけるマクロファージの泡沫化に寄与

治療

脂質管理目標値

欧米では糖尿病は,冠動脈疾患をすでに有するものと同等の冠動脈疾患発症リスクがあるとし,それを裏付けるエビデンスがある.
→ADAでは目標LDL-C<100mg/dLと設定している.

日本にはそれを支持するエビデンスはなく,J-LITの結果から糖尿病は高血圧や喫煙とほぼ同等のリスクであり,久山町研究によると糖尿病ではLDL-C 120mg/dL以上で動脈硬化疾患の発症リスクが有意に高くなることから,目標LDL-C<120mg/dL未満としている.

LDL-Cをどこまで下げるかについては結論はでていないが,ハイリスク患者に対してはLDL-C 70mg/dL未満という選択肢も提示される.
海外ではlower-the-betterの考えに基づき,LDL-Cの大きな低下率が得られる治療が求められているが,動脈硬化疾患の予防効果は30~40%であり,限界を知っておく必要がある.

食事療法

糖尿病に合併する脂質異常治療の基本は食事療法であり,まず過剰な脂質の摂取制限をおこない,食物繊維やn-3 脂肪酸の摂取が有効.
・炭水化物の中で果糖の摂取を減らすことも効果的.

中性脂肪が著しく高い場合

・脂質の摂取率を20%以下に制限する.
・魚の脂は中性脂肪を低下させる.

LDL-Cが高い場合

・飽和脂肪酸を多く含む動物性の脂肪を制限する.
・鶏卵などコレステロールが多く含まれる食品は,LDL-Cを上昇させると推測されるが,個人差が大きく極端に制限する必要はないとされる.
・食物繊維が多く含まれる食材には,コレステロールの吸収を抑える作用がある.

運動療法

有酸素運動を主体とし,レジスタンス運動を織り交ぜる.

中性脂肪を低下させ,HDL-Cを増加させるが,LDL-Cに対する効果はバラバラ.
・sd-LDL→LDLに変化するとLDL-Cが上がってしまうことがあるが,それは質的な改善を意味する.
→運動療法の効果はLDL-Cで即座に評価しない.

薬物療法(高LDL-C血症)

スタチンを用いたコレステロール低下療法が強く推奨され,冠動脈疾患の既往があればLDL-C 100 mg/dL 以下,ない場合も糖尿病合併で120mg/dL 以下が治療目標となる.

スタチンの増量でこの目標が達成できない場合にはスタチン増量あるいはエゼチミブの追加が有効.

HMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタチン)

糖尿病合併におけるエビデンスも多く,第一選択.

日常臨床において筋肉痛などによりスタチンが使用困難な症例を経験する.このようなスタチン不耐性患者に対するスタチン以外の脂質異常症治療薬のエビンス構築が望まれる.Proprotein Convertase Subtilisin/Kexin Type 9(PCSK9)阻害剤は耐糖能への影響が少なく,CVDイベント抑制効果も報告されており,今後2 型糖尿病患者における有用性の検証が待たれる.

2 型糖尿病患者を対象としたCARDS 試験において,アトロバスタチン投与群ではプラセボ群より約70 mg/dL のLDL-C 値減少を認め,主要冠動脈のイベント発生率が37 %,全死亡は27 %,脳卒中は47 %それぞれ低下した.

我が国のMEGA study のサブ解析においても糖尿病を含んだ空腹時血糖高値群にプラバスタチンを投与することにより主要心血管イベント発症率が32 %低下している.

TNT 試験では二次予防の2 型糖尿病患者に高用量のスタチン(アトロバスタチン80 mg)投与により低用量(アトロバスタチン10 mg)投与群に比して,致死性および非致死性血管イベントが25 %減少した.
高用量スタチン群では低用量に比し筋障害,肝機能障害が有意に増加した.

(スタチン+フィブラート)

2 型糖尿病患者におけるスタチンとフィブラートの併用療法の有用性を検証したACCORD 試験のサブ解析において高TG 血症(≧204mg/dL)かつ低HDL-C 血症(≦34 mg/dL)という糖尿病に特徴的な脂質異常症群でフィブラート併用群はスタチン単独群に比べて31 %の主要大血管リスク低下が示されたが,全体解析ではフィブラート併用の有用性は証明されていない.

エゼチミブ

コレステロールトランスポーター(Niemann-Pick C1 Like 1;NPC1L1)蛋白の発現が亢進しているため,より効果が期待できると思われるが,単剤のおける治療効果についてはほとんど検討されていない.

IMPROVE-IT 研究においてエゼチミブとシンバスタチンとの併用はLDL-C 値の低下(70 mg/dL 前後)と心血管イベントの有意な低下が見られたが,糖尿病合併症例において有効であり非合併例での有効性は見られなかった.

薬物療法(高TG血症,食後高脂血症)

EPA,フィブラート,エゼチミブが心血管イベント抑制の観点から有効.

フィブラート

糖尿病患者ではCHD発症抑制,冠動脈病変の進展抑制効果が確認されている.
糖尿病性網膜症,糖尿病性腎症といった細小血管合併症の進展を抑制することも確認されている.
→高トリグリセリド血症では第一選択

脂肪酸の合成低下・酸化促進,LPL の発現増加やapoC-Ⅲの発現抑制により空腹時TG 値および食後のレムナントの上昇を抑制する.

糖尿病症例にフェノフィブラートを用いたFIELD 試験やACCORD Lipid 試験では心血管イベントは抑制されなかったが,後者のサブ解析でTG≧204 mg/dL とHDL-C<34 mg/dL の脂質異常を合併する症例ではイベントは有意に抑制され脂質異常合併糖尿病患者におけるフィブラートの有効性が示唆された.

見た目のLDL-Cが正常でも,糖尿病ではsd LDLが上昇している場合があり,non HDLが高ければスタチンがよいかも・・・

EPA

JELIS 研究のサブ解析において高TG/低HDL-C血症において心血管イベント一次予防効果が見られており,EPA のレムナント抑制効果が示唆される.

血糖の是正

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