ダンピング症候群 dumping syndrome

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なすび医学ノート

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胃切除手術を受けた人の15~30%にみられる胃切除後症候群で,炭水化物が急速に小腸に流入するために起こるもの.

最近は,肥満手術が普及し,その後のダンピング症候群の発症も多数報告されている.

病態

胃の機能:近位部はリザーバー,遠位部はグラインダー.
・健康な状態では,食物は2mm大になってから胃から排泄される.健康人では固形物の排泄は3-4時間.

食事中や食後の直後に症状が現れる早期ダンピング症候群と,食後2~3時間たってから 現れる後期ダンピング症候群に分けられる.
・ダンピング症候群は,食物の小腸への急速な流入に加えて,リンパ節の喪失による 腹水の循環不全,吻合による蠕動運動の乱れなどがあると,食後の苦しみは増大される.

精神的な誘因も重要で「食べると苦しくなる」と身構えてしまい,それがストレスとなって,悪循環を起こすケースも多い.

早期ダンピング症候群

胃を切除してしまうと,胃液の分泌量が低下し,貯留機能の失われるために,浸透圧の高い食べ物が 胃の中に入ると,その一部はそのままあふれるように腸内に急速に排出されてしまう.

早期ダンピング症候群は,胃の排出調節機構が破綻していることが原因で起こる.

主症状は,冷や汗,動悸,めまい,顔面紅潮,全身倦怠感,全身脱力感,全身熱感など.
・腹痛,下痢,悪心,嘔吐などの腹部症状を訴える場合もある.
・横になるとたいていは症状が治まる.

後期ダンピング症候群

胃切除患者において,食後1~3時間で,めまい,倦怠感,冷汗,脱力などの低血糖症状が出現する.

胃切除後患者の5~16%にみられる.

Roux-en-Y胃バイパス中の術後合併症として一般的であるが,幽門形成を伴う迷走神経切離術,スリーブ状胃切除術,食道切除術などの術後にもみられることがある.

食物の上部小腸への急速な流入による糖吸収のために生じた急激な血糖上昇と,インスリンの過剰 and 遅延分泌による反応性低血糖が引き起こされる.

もともと初期分泌能が落ちている人で,胃切除の急峻な血糖上昇にインスリン分泌が追いつかない人に起きやすい.
・リスク因子として体重減少があり,インスリン感受性の亢進により低血糖が生じやすいとされる.

消化管への急速な糖の流入が,Glucagon-like peptide-1(GLP-1)などのインクレチンの分泌亢進を起こし,インスリンの過剰分泌が引き起こされ,同時にグルカゴンが抑制されるため,低血糖が発生すると考えられている.
・Roux-en-Y胃バイパス術後では,食後のGLP-1分泌が対照の数倍に増加していることが示されている.

食後2~3時間たって頭痛や倦怠感,発汗,めまい,呼吸の乱れなどが現れるもので, 多くは早期ダンピング症候群に引き続いて起こる.

75gOGTTでは,血糖値が負荷後30分で頂値となるが,IRIは血糖値から遅れて60分後に頂値を示す.
その後,血糖値が徐々に低下し,120~180分後で低血糖を示す.

低血糖が大きな原因で起こることから, 後発性低血糖症候群ともよばれる.

治療

食事療法

最初に試されるべき治療.
急峻な高血糖を来さない食事療法の徹底が大切.

早期ダンピング症候群

低糖質,高蛋白,適度な脂肪の食事で,なるべく水分を少なくする.
食事のとり方は,1日5~6回に分ける少量頻回食が理想とされる.冷たい物は避けて,食後は20~30分ほど横になることも必要.

後期ダンピング症候群

①1回の食事量を少なくし,ゆっくりと時間をかけてとるようにする.
②炭水化物過量摂取を避ける.
③分食.

症状が現れたときには,飴など少量の糖分を摂取すると治まることが多い.

薬物療法

食事療法では改善されない場合,薬物療法が行われるが,ダンピング症候群の特効薬はない.

α -GI

小腸絨毛上皮細胞の刷子縁上に存在する二糖類分解酵素を阻害することにより炭水化物からグルコースへの分解・吸収を遅延させ,食後の血糖上昇を抑制する.
→後期ダンピング症候群の反応性低血糖を防止する目的でも有用

ミグリトールは食後のGLP-1分泌抑制作用があり,それにより血糖変動幅が小さくなり,低血糖が回避できる機序も示唆されている.

その他

ジアゾキシド
膵β細胞の細胞膜ATP 感受性Kチャネルを開口させることによりインスリン分泌を抑制する.
・25 mg から開始し,血糖の推移をみながら50mgに漸増.
・頻度の多い副作用として浮腫や体重増加があり,日本人で多いとされている.
・海外では早くから小児だけでなく,成人のインスリノーマや肥満手術後のダンピング症候群にも使用されていた.

オクトレオチド
インスリン分泌抑制作用を期待して用いられるが,保険適応はなく高価であるため継続は困難.

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